僕はプロになるずっと以前から、グローブの素材は天然皮革にこだわって使い続けてきました。合成皮革や人工皮革のものよりも天然皮革は高価なのですが、素材が薄くて柔らかく、何よりもフィット感に優れているからです。けれど、今回初めて「ナノフロント」のグローブを使ってみて驚きました。
天然皮革の高級グローブと同等の薄さと柔らかさを備えていながら、天然皮革よりも滑りづらくてグリップ力が高い! そのうえ耐久性が良くて、雨にも強いなんて……。天然皮革の高級グローブなんて、もう必要ないですね。
関 浩太郎プロ
1974年生まれ。アメリカで最新のスイング、クラブ、トレーニング、メンタル理論を学び、現地のミニツアーを転戦。帰国後はフィッティング理論とクラフト技術を習得。現在は都内で「SEKI GOLF CLUB目黒」を主宰している。
「ナノフロント」のグローブは、耐久性があるのにゴワゴワしていないのが長所です。丈夫さをウリにしている合成皮革のグローブはありますが、そういったモノは、たいてい素材が厚くて着用感が悪くて……。その点、「ナノフロント」は薄くて柔らかいから、フィット感が良くて快適です。手のひら側は、ツルンとした素材感でグリップ力がなさそうに見えるのですが、実際にはまったく滑りません。
そのうえ水に濡れても、グリップ力が落ちないし、むしろ濡れたほうがしっかりとフィットしてグリップ力が強くなります。とても不思議な素材です
野村タケオさん
1966年生まれ。ゴルフ関連のイラストを多く手掛ける、自称「ゴルフBAKA イラストレーター」。いろんな新製品を試してみては、自身のブログ『野村タケオのゴルフバカ日記』でも発信中。
1990年、帝人(株)入社。
樹脂研究所、繊維研究所、繊維技術開発部、ナノファイバー推進チームを経て、現在はソリューション開発部で技術主幹を務める。
工学博士であり、新素材「ナノフロント」の生みの親。
- 関
- ゴルフクラブは、新素材や新たな製造方法によって、ここ数十年で劇的に進化しましたが、グローブはさほど昔から変わっていませんでした。実際に、僕は昔ながらの天然皮革のグローブをずっと使用していましたからね。それが今回、「ナノフロント」という素材によって、グローブにもやっと大きな進化が訪れたと感じました。
- 野村
- 「ナノフロント」のグローブは、素材が薄くて、見た目にはツルンとしているのに、しっかりとクラブを握れるグリップ力があります。今までになかった不思議な素材なのですが、これまでの人工皮革や合成皮革とは、違うモノなんですよね?
- 神山
- 「ナノフロント」は、ナノテクロジーを使ってテイジンが世界で初めて開発した、超極細ポリエステルナノファイバーです。直径が700ナノメートルで、断面積が髪の毛の7500分の1という、とても細い繊維です。
- 関
- とにかく薄くて、柔らかいですよね。僕はこれまで、手とグローブのフィット感を重視して、高価な天然皮革のグローブを好んで使っていましたが、「ナノフロント」は天然皮革と同等のフィット感と、それ以上のグリップ力を備えていて、本当に驚きましたよ。
- 野村
- 天然皮革のグローブは、たしかに性能はイイんですよね。でも、雨に濡れたり、夏場に汗をかくと、次に使うときには革が縮んでカチカチになってしまう。それに耐久性がイマイチで、高級なグローブなほど、すぐに破けてしまってショックを受けるんですよ(笑)。「ナノフロント」は、耐久性もいいんですか?
- 神山
- はい。強度に優れているのも「ナノフロント」の特長のひとつです。だからこそ、強度が必要なゴルフ用のグローブでも薄い生地で作ることができて、柔らかさとフィット感をだすことができるんです。
- 関
- 「ナノフロント」は、肌触りがシームレスなんですよね。この感触も、僕は大好きです。天然皮革しか使わないつもりだったので、そのストックがまだ倉庫にたくさんありますが、次からは「ナノフロント」を僕のエースグローブにしようと思いました。それぐらい僕は気に入りましたよ。
- 野村
- 天然皮革のグローブって、使っているうちに伸びてきて、親指の部分がズレたりするんですよね。「ナノフロント」は生地が強くて、そんなふうに変形する心配がない。それもいいですよね。
「ナノフロント」の生地の表面積は、通常繊維の数10倍。繊維表面のナノサイズの凸凹が大きな摩擦力を発生するので、高いグリップ力が発揮される。
- 野村
- 「ナノフロント」のグローブは、見た目以上にグリップ力が強いですよね。表面がツルンとしているので、知らないゴルファーが見たら滑りそうに思うでしょう。でも、実際には滑らないから不思議なんです。どんなヒミツがあるんですか?
- 神山
- 「ナノフロント」は繊維の1本1本がとても細くて、それぞれが生地の表面上で接点になります。そのためにグリップ力が強くて、ピタリと吸い付くような感触が得られるようになっています。関プロは、使ってみてどうでしたか?
- 関
- まさに、そのとおりでしたよ。フィット感とグリップ力は、天然皮革の高級グローブにまったく劣っていません。ところで「ナノフロント」は、水に濡れてもグリップ力が落ちないと聞きましたが、それは本当ですか? ちょっと野村さん、水とバケツを用意するので、試してみてください。
- 野村
- 本当だ! 水が滴るほどボトボトになった状態でも、まったく滑りません。こりゃ驚きました。これには、どんなヒミツがあるんですか?
- 神山
- 防水性能を謳っている合皮のグローブもありますが、そういったグローブは表面に撥水性のある樹脂を施すことで水を弾いています。グローブの中には水が染み込まないのですが、グリップとグローブの間に水が入り込むので、どうしても滑ってしまうのです。けれど、「ナノフロント」の場合は、極細の繊維と繊維の間に水が入り込む構造になっているので、グリップとグローブの間には水が入り込みません。だから水に濡れても滑らないんです。
- 関
- なるほど、従来の防水加工のグローブとは、まったく違うんですね。画期的です!
- 野村
- 雨の日用の人工皮革のグローブは、生地が厚くてゴワゴワしているものが多いんですよね。その点、「ナノフロント」は生地が薄いのがいいですよ。夏場でもムレずに快適そうだし、晴れの日も雨の日も、これ1枚で良くなりますよ。
- 関
- ゴルファーのなかには、練習用には人工皮革や合成皮革、ラウンド用には天然皮革と使い分けている人もいますが、「ナノフロント」のグローブなら、そんなことをする必要もなくなります。このグローブは、洗濯もできるんですよね?
- 神山
- はい。「ナノフロント」は縮むことがありませんので、洗濯しても問題ありません。いつもキレイに清潔に使っていただけますよ。
- 関
- キレイ好きの僕には、嬉しい限りですね(笑)
「ナノフロント」は繊維1本1本が超極細であり、面積あたりの接点が多くなるため、手のひらとグリップとの両方に密着。高いフィット感とグリップ力が得られる。また柔軟性に優れているのも特徴。伸縮性にも富んでいて、手のカタチや動きに柔軟にフィットする。
「ナノフロント」は、繊維同士の隙間が小さく、水分拡散力が高い。夏場に汗をかいても湿気を逃してくれるので、ムレずに快適。
- 野村
- フィット感がバツグンで、濡れても滑らないし、耐久性もある。グローブの素材として、「ナノフロント」にはデメリットが見つかりませんよ。そもそも「ナノフロント」は、ゴルフグローブ用に開発された素材なんですか?
- 神山
- 実は、そういうわけではないんです。2000年頃にナノテクノロジーが注目され始めて、テイジンでも極細の繊維を開発しようということになって、生み出されたのが「ナノフロント」です。当初は素材の特性から、汚れを取るためのクロス、遮光性のあるカーテン、医療現場で使われる手術着などの用途を想定していましたが、ゴルフのグローブに最適だとは、開発した私自身は考えていませんでした(笑)
- 関
- ゴルフグローブ以外の商品にも、すでに「ナノフロント」は採用されているんですか?
- 神山
- グリップ力があるので、スポーツ用品ではランニングソックスやインソール、シューレースなどのフットウェアに使われています。その他では、ベッドカバーや汚れ取りのクロス、障子紙、コスメ用品にも使われています。まだまだ、いろんな用途で可能性を秘めている素材なんですよ。
- 野村
- ゴルフ用品でも、グローブ以外に何か使えそうですよね。とりあえず、僕は「ナノフロント」のグローブを使い続けますよ! 今回のバケツ実験で、雨でもへっちゃらだと分かりましたから(笑)
- 関
- 本当に驚きの素材です。グローブに最適な高性能な素材を開発していただいて、神山さんには僕がゴルファーを代表して、御礼を申し上げます(笑)。本日は、どうもありがとうございました。
撮影協力
SEKI GOLF CLUB 目黒
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