ゴルフ場のコンセプトを随所に反映させることは大切だ。
クラブハウスも例外ではないが、具体的に表現するのはなかなか難しい。
しかし、このハウスに限っては、明確で分かりやすく、
それが来場ゴルファーへのアピールにもなっている。
「コンセプトとしては、アメリカナイズされたゴルフ場でしょうか。ただ、アメリカのゴルフ場というと日本では〝カジュアル〟な雰囲気が浮かびますが、それは同時に、肩肘張らない気軽さとともに廉価なイメージがあります。でも、そういう安っぽいイメージではなくて、本当のアメリカンテイストを感じてもらえるモノにしたかったのです。つまり、サービスするゴルフ場側と来場ゴルファーがゴルフを通じて楽しく過ごす。たとえば、娘の誕生パーティをゴルフ場でやり、それをスタッフも一緒に祝福するような、アメリカのメンバーコースの雰囲気。そうしたものを目指したいという思いです」(取締役・新井博氏)
オープンして5年目に完成したクラブハウスは、コストを抑えつつも、来場ゴルファーは中に入れば、すぐにリラックスできる雰囲気が欲しかったという。
ロッカーや浴室など、ゴルフ場のクラブハウスとして必要な施設はもちろん備えなければならないが、それ以外のエリアは、一般のクラブハウスといった感じはしない。レストランへ向かう通路の壁は写真やイラスト、アンティーククラブで埋め尽くされ、ギャラリーラウンジはリビングルームのような感覚だ。もちろん、雰囲気重視とは言え動線はシンプルで、シャワーを重用した浴室や女性浴槽は小ぶりのジャグジーバスが2つと、これまでのゴルフ場浴室にはほとんど見られない形態だ。
「スループレーも多いですし、これまでの利用状況を考慮すると、浴槽を求めるのは60代以降の高齢の方々。それならば、女性は既存のユニットバスでコストを削減し、ジャグジーで目先を変えてみました。また、大きなロビースペースをとれば経費もかかるし、小さいフロントでショップと一体化していた方が他のクラブハウスと差別化ができ、アメリカのゴルフ場っぽさが出るだろうとも思いました」(新井氏)
できるだけアメリカンスタイルを貫くことで特徴を出し、同時に建築コスト削減に繋がったハウスである。
今回、ご紹介したクラブハウスは…
「クラブハウス探訪」はゴルフ場経営の専門誌「ゴルフ場セミナー」に掲載中。