高級感の出し方も時代によって変わってきている。昨今は、かつての豪華さを前面に
出す手法が影を潜め、シックな落ち着いた雰囲気で非日常を表現する。
このハウスもホテル風なデザインを念頭に全面リニューアルをしている。
バブル景気当時のクラブは、天井を高くし、吹き抜けを多用して、広大な空間を作り出すことで非日常を演出していた。しかし、それは違うという。
「天井が高すぎたり、奥行きがありすぎると、空間的に間延びしてしまいます」と語るのは、今回のリニューアルデザインを担当した㈱flowのデザイナー、土合功祐氏。かつての大空間ではなく、「ある程度、空間を限定することでデザイン、雰囲気作りのバランスがとれる」という考え方だ。
今回のリニューアルは、老朽化もさることながら、経営交代による運営コンセプトの変更によるもの。将来を見越して、現代のホテル風のシンプルなモダンさを追求した。木、石などの素材感を出し、色調もつや消しの黒系を使い、照明は電球色に統一することで、ディープ感を演出した。
また、ある程度共通のコンセプトは持ちつつも、デザインの連続性にこだわることなく、フロント、レストラン、ロッカー、浴室などシーンシーンを大事にしたという。
多くはコースに出ているとはいえ、ゴルフ場の滞在時間としては長いので、落ち着きは大切です。そのためにはダークなトーンを主にすることは必要で、かといって食事をする場と身支度を整える場は違うので、特に連動性は意識しませんでした」(土合氏)
その多くのエリアが現代モダンであるのに対して、外に池などの庭園風のスペースがある男性脱衣室に限っては、〝木〟を多用して、「思い切り和風」(土合氏)にした。
外観は内部とは切り離して、元々あった車寄せの柱をガラスで囲み照明を仕込んでクリア感を出したり、千葉県産の米スギで組木細工の装飾を施したりもしている。
旧ハウスの要素をすべて変更して、現代風の高級感を出したリニュールである。
今回、ご紹介したクラブハウスは…
「クラブハウス探訪」はゴルフ場経営の専門誌「ゴルフ場セミナー」に掲載中。