田舎に住むの弁
田舎の空気は美味い。特に周防灘CCの空気が美味い。久しぶりに帰ると、空気に親しみを覚える。母の手作り料理のような気になってくる。空気に甘さと、ウェットさを感じる。東京の空気は乾いている。コンクリートにこすられたような、ザラつきを覚える。
故郷とは、空気そのものではあるまいか。原稿を書いている時、緑の臭いが少しでもあると、不思議にペンが進む。タバコの臭いがあると、まったく進まぬ。喉も頭も詰まってくる。
私は臭いに敏感である。特にタバコの臭いに対しては過敏である。このことを人に話すと、私の肉体を見て「へーェッ」という顔になるが、牛の体型にも敏感さは宿っているのである。
私の仕事は東京中心。しかし、東京の街にはなじめぬ臭いが多い。クラクラしてくる。
東京に住まいを持て、と言ってくれる人は多い。しかし、東京には緑がない。すべては慣れではあろうが、東京のコンクリートに慣れたいとも思わぬ。
ゆえに、田舎から通う。疲れるが、それ以上のものが田舎にはある。空気と水。これを大切にしてゆきたい。
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