幼少よりせっかちであった
一段と、せっかちになってきた。結論をすぐに求めるのです。
人の性分とゆうのは噛み方で判断出来る様に思う。口に入れた食べ物をトットットッと噛み、ゴクンと飲み込む人はせっかちさん。ゆっくりと噛み、ゆっくりと喉に流し入れる人はゆっくりさん。
私はゴックンとゆく。トーナメントの観戦記を書く時、私は朝の食堂から取材を始める。噛みのスピードを然り気なく眺め、それで選手の精神状態と体調を判断してきた。
この判断方法は9割方、当たっている。どんな選手でも日に応じて噛みのスピードは変わる。ニクラスといえど、変わっていた。
同じ生活リズムで過ごせるは理想。超一流の者でも昨日と同じリズムで過ごせはしない。理想は理想、現実は現実と言うべきか。噛みのスピードが違うのです。
リズムは歯と歩幅より生まれるものと考える。私が熊本と札幌のジュニア塾生や長男雅樹の出場する試合について行ったら、朝食時の噛みのスピードを見て、そこで注意する事もあろう。
日頃の噛みのスピードより早かったら、気の入れ過ぎである。遅かったら、弱気になっている証し。コーチする者は選手の朝食時の噛みのスピードを知らねばならぬ。
福岡は博多で賭け将棋の場に出合わせた。アマ高段者の賭けであった。
私は日本将棋連盟3段位を持つが、25年前に得た段位であって、今は朽ちたる実力でしょうな。ま、初段の手合わせレベルと思います。
それでも勝負の流れは見える。これはゴルフで知りたる晴眼と思う。選手20年、観戦記取材10年で得たものでしょう。
博多の賭け将棋、一方の方はガムを噛んでいた。上品な姿勢ではなかった。ガムを噛むとは何事か!と思った。相手に失礼と考えぬのか!
ガム噛む人、長考の局面にくると、実にゆっくりした噛みに入っていた。止めはしない。噛むか、否かの微妙な押し噛みをしている。
ガム噛む人にいい手が出た。一気に噛みのスピードが早まった。勝利である。1万円札が手渡された。
「教えてくれませんか?」と私は問うた。
「止めときましょ。アンタは勝負に辛そうだ」
「棋力は初段程度です。平手で結構です」
「いや、止めとこう」
私はガム噛む人の噛みのスピード変化を見たかった。戦状有利の時か、不調の時かを知りたかった。年期の入った賭け将棋であろう。
「後日、機会あれば一手を!」
「機会あればネ。多分、ないと思うよ」
そして横を向かれた。
彼の噛みの変化を面白いと思った。スッと然り気なく変わっていったのである。
原稿締切りに追われてる時の私の食事の噛みは、ゆっくりとしていると聞く。胃に負担をかけない噛みである。気力を溜めているのか、いずれにしても追われてる時の方がゆっくりと口を動かしている、と言ってくれた人がいる。
ゴルフする日の朝の噛みは早いと自分でも分かる。勇み噛みする私は若いのです。でも、そんな日のゲームは自分で転げ回っている内容が多い。
やはり、朝食はゆっくりと噛み込んでいった方が良さそうですな。
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