ゴルファーによって、アイアンに求める性能は異なる。
そこでヤマハが作り出したのが、独自のテクノロジーをいかして開発した3つの新しいリミックスアイアンとウェッジ。
クラブフィッターの鹿又芳典さんが、各モデルを試打してインプレッション。
アイアンの開発担当者である柴 健一郎さんには、それぞれのモデルの特徴を教えてもらった。
- 豊富なギア知識を持ち、初級者からトップアマやプロに至るまで、あらゆるゴルファーから絶大な信頼を寄せられているクラブコーディネーター。多くのメディアでクラブ試打のレビューも展開している。『ゴルフショップ MAGIC』代表。
反発性能の高い極薄フェースが採用されていて、とてもよく飛ぶアイアンです。7番で30度というストロングロフト設定ですが、低重心設計のおかげで球もよく上がります。プラス10ヤードの飛距離がほしいゴルファーには、最適なモデルですね。
他メーカーにも飛ばせるタイプのアイアンはありますが、『RMX 216 アイアン』が優れているのは、あくまでも“アイアンらしさ”を保っているところ。ラクにボールが上がって飛ばせるけれど、その飛び方に違和感がありません。飛び系アイアンのなかには、急に飛びすぎて困るモデルもあるのですが、このアイアンはどんな球が出るのかイメージして、自分で飛距離をコントロールしてグリーンを狙っていくことができます。
オフセンターヒットに強いのも、『RMX 216 アイアン』の長所です。アマチュアゴルファーに多いフェースの下目のヒットでも、前へとボールを弾き飛ばしてくれます。飛ばせるアイアンでありながら、ヘッド形状も極めてアイアンらしくて構えやすいですね。アマチュアゴルファーが求めるものが何かを考えて、それらが見事にひとつのモデルに落とし込まれてあるモデルだと感じました。
『RMX 216 アイアン』は、フェースにボールが当たりさえすれば、性能を発揮してくれるアイアンです。グリーンを狙う楽しさを、誰にでも感じさせてくれるモデルだと思います。
アイアンの3モデルとウェッジを試打して感じたのは、それぞれ性能的には特徴があるのに、どのクラブも打ちやすいことでした。ヤマハさんは、アイアンを作るのが本当に上手だなぁと、改めて感心してしまいました。
ありがとうございます。今回のモデルは、いろんなタイプのゴルファーがどんな性能のアイアンを求めているかを考えて、素材や製法をイチから考え直して開発したモデルです。打ちやすさを褒めていただけると、苦労して作り出した甲斐がありました(笑)
開発を担当された柴さんには、テクノロジー部分のお話を伺いたいと思っています。最初に『RMX 216アイアン』ですが、これは一般的には“飛び系アイアン”に属するモデルですよね。打ってみると、フェースの反発があまりに良くて驚きました。
このアイアンは、「プラス1番手の飛び」をコンセプトに開発したモデルです。ヤマハには、プラス2番手の飛びを実現する『RMX UD+2 アイアン』というモデルがあって好評なのですが、今回の『RMX 216アイアン』はよりアイアンらしさを保ちつつ、いかにフェースの反発を上げて飛ばせるアイアンを作れるかを狙って開発しました。ヘッドのすべてを一体成型したマレージング鋼という高強度素材を使い、ソールのいちばん薄い部分は1mmしかありません。その設計のおかげで0.80という高い反発係数を実現しています。
いつもより1番手も飛ばせるのに、きちんとグリーンで止められる。アイアンの球質が損なわれていないところが、僕はいいなぁと感じました。こういった一体成型のマレージグで作られたアイアンは、今までになかったですよね。
はい。素材と製造の進化があってこそ開発できたアイアンです。高強度素材の採用でトップブレードの厚みを薄くすることを可能にして、その余剰重量の3gをソールの適所に配するなど、かなり凝った作りになっているんですよ。
ヘッド形状の構えやすさ、バックフェースのカッコ良さも魅力ですよね。飛び系アイアンにありがちな、ボッテリとした印象がありません。
ありがとうございます。性能だけでなく、見た目の美しさにもこだわって作り上げたアイアンです。
フェースのヒール側が少し高くて、ヤマハらしいオーソドックスな形状のアイアンです。少し大きめのヘッドはトップブレードにも適度な厚さがあって、中・上級者が構えたときに安心感が得られるでしょう。
打ってみると、『RMX 116 ツアーブレード』よりも5ヤードほど飛ばせます。上級者向けのアイアンを使っていて、「今と同じ番手でもう少し飛べばいいな」と思っているゴルファーには、ちょうどいい飛距離です。それでいて、球筋を作ることができる操作性を備えているのが、このアイアンの長所。飛びと操作性のバランスが絶妙です。クルマに例えると、『RMX 116 ツアーブレード』はマニュアル車、『RMX 116 アイアン』は、飛ばせるセミ・オートマチック車という感じですね。
『RMX 116 アイアン』は単一素材の軟鉄鍛造アイアンですが、とても凝った作りになっています。そのおかげで深重心設計になっていて、7番でロフト31度というストロングロフト設定でも、スピンが入り、きちんと球の高さが出て、ノーマルロフトのアイアンと同じような飛び方をしてくれます。だからこそ、少し飛ばそう、少し抑えて打とうといった操作もしやすいです。このアイアンの性能にハマるゴルファーは、とても多いと思いますよ。
個人的には『RMX 116 アイアン』の打球感が、僕はとても気に入りました。軟鉄鍛造の中では、大きめヘッドの部類になりますよね。けれど、大きさはまったく気にならないし、フェースのヒール側の見え方がよくて、球を包み込んで打てるようなフィーリングが得られました。
軟鉄鍛造のフィーリングを残しつつ、可能な限りやさしく打てるモデルとして開発したのが『RMX 116 アイアン』です。キャビティ構造を採用していますが、ソール中間部から8.6グラム分をくり抜いて、その余剰重量をソール後方に配置し、ヘッドを深・低重心化しています。
手に取って見ると、非常に細かい部分ですよね。軟鉄鍛造のヘッドで、こういった形状にすることが可能なんですね。
かなり手間がかかる工程ですが、コンピュータ制御でボールミルドというマシンを斜めに入れて、1つのヘッドを10分ぐらいかけて削っています。このアイアンも、現代の製造技術があるからこそ作り上げられたモデルです。
ストロングロフトでも球が上がってくれるし、プラス5ヤードぐらい飛ばせる。飛距離と操作性のバランスが良くて、本当にいいモデルだと思いました。
契約プロの要望や意見を取り入れられたモデルだけあって、クセのないシャープなヘッド形状です。しかし、手強さは感じさせないので、アマチュアにもすんなりと構えやすいと思います。
実戦でのシチュエーションを想定して、いろんなライから打ってみましたが、弾道のイメージが沸きやすいのが長所です。例えば、つま先上がりなどのライのショットでも、構えたときにとても安心感があります。実際にショットしてみても、ソールの当たり方で球筋をコントロールできるようなフィーリングが得られました。ロフトを立てたり、フェースを少し開いてショットを打ちたいときなどに、そのイメージどおりにストレスなく、自分のフィーリングで球筋を作ることができます。
上級者が求めるアイアンというのは、ただソールの抜けが良いだけじゃダメなものです。『RMX 116 ツアーブレード』が優れているのは、 ゴルファーがヘッドシェイプから感じ取る感性の部分と、ソール形状による相乗効果によって、球筋をコントロールできるところにあります。また、このアイアンには日本刀に用いられている“焼きなまし製法”が取り入れられて、従来のツアーモデルアイアンとは打感が少し変わりました。ゴルフは、五感でするもの。この打感は、コントロール性能に活きてくると思います。
『RMX 116 ツアーブレード』を試打して驚いたのは、打感です。ただ単にマイルドなだけではなく、しっかりとヘッドの芯が感じられるフィーリングでした。プロや上級者は、自分がフェースのどこでどんな風にボールをヒットしているか、きちんとフィードバックが得られるクラブを好みますが、まさにそれを具現化したような打感のアイアンでした。
プロは、とにかく打感にこだわります。クラブから的確なフィードバックが得られないと、球筋をコントロールしづらいからです。『RMX 116 ツアーブレード』は、“焼きなまし”という日本刀に用いられている製法を取り入れて製作されています。一般的に言うと熱処理ということになりますが、この処理によって今までの軟鉄鍛造よりも硬度が12%も軟らかくなっています。
インパクトしたときに、柔らかい感触はあるのですが、ボールのコアをしっかりと感じることができます。こういったフィーリングは初めてなので、衝撃的でした。本当にスコアラインの溝のどこでヒットしているか、手に取るように分かるアイアンです。それに、構えたときに球筋をイメージできる安心感があって、シャープな形状なのに手強さを感じさせません。それもいいですよね。
打ってみて、いちばん驚いたのはソールの抜けの良さです。花道、深いラフ、地面が硬いところや柔らかいところなど、いろんなライから打ってみましたが、どんな状況でもソールの抜けの良さが一定しています。さらに、スイングスピードを抑えて振ったときでも、同じような抜け感を得られます。
トゥ側が重めになっているのも、『RMX 116 ウェッジ』の特徴です。このおかげで自分の意図を伝えやすく、フェースを閉じたり開いたりするコントロール性能に優れています。
そもそもプロや上級者がウェッジに抜けの良さを求めるのは、悪いライだとソールの当たりが邪魔をして、フェース面をコントロールできなくなるから。『RMX 116 ウェッジ』なら、自分がヘッドを打ち出したいところに、スッと持っていけて、狙ったところにボールを出していける。躊躇せずにしっかりと振れるので、スピンもよく掛かってくれます。まさに上級者が求める性能が備わっているウェッジです。とにかくラインの出方が素晴らしいですね。
失礼ながら、これまでヤマハにはウェッジのイメージがなかったのですが、『RMX 116 ウェッジ』の性能の良さには本当に驚きました。ソールの抜け方がバツグンに良くて、とてもラインを出しやすかったです。ボールがピンにしか飛ばなかったですよ。
『RMX 116 ウェッジ』は、いつも安定したスピンを掛けられるように開発したモデルです。まずヘッドの重心を高くして、フェース面でボールが滑ってしまわないように配慮しました。プロは技術的にインパクトで少しロフトを立てるように打っているのですが、一般のゴルファーが手にしても、そういった打ち方が自然にできるように考えた設計です。
ロフトを立てながら打つことで、プロはボールを包み込むように打ってスピンを掛けていますよね。このバックフェースの特徴的なデザインには、どういった意図があるのでしょうか?
ヘッドのトゥ側に重量をもたせるためのデザインです。トゥ側に重量があることでフェースを回転させやすく、インパクトゾーンではフェースでボールを押さえ込むように打つことができます。それが安定したスピンをもたらすんです。
トゥ側に重量があると、逆にインパクトでフェースが開いてしまうように思えるのですが、実際にはそうではないのですね。
はい。ソールが地面に当たったときに、トゥ側に重量があるとフェースターンが促されて、自然にロフトが立つようにヘッドが動きます。この現象は開発時に何度も検証して、ソール形状にもしぶとくこだわって作りました。
実際に打ってみると、その強いこだわりがよく分かりました。このウェッジ、このまま家に持って帰りたいぐらいです(笑)