コウタロウ 新「RMX VD ドライバー」の印象は前作と全然違いました。重心位置から形状まで、「ここまで変える?」と思うぐらい別物だったので、この変化は勇気が必要だったのではと感じています。
梶山 私は20年モデルから企画開発に携わっています。当時からツアープロの声を聞きながら、大きくコンセプトを変更して特徴的なクラブ作りをしてきました。ただ、寛容性や打感もそうですが、多くのゴルファーが求める「飛び」の要素がないと面白くない。今回はそこにこだわりました。
ヤマハゴルフのフラッグシップモデル『RMX VD』シリーズがリニューアル。
今平周吾や藤田寛之、神谷そらといった契約プロが次々とツアー優勝を飾り、その性能の高さを結果として証明している。
いったい新『RMX VD』は何が変わったのか?
その秘密をGOLFTECコーチのコウタロウが、ヤマハ担当者から聞き出す。
ドライバー・フィッティング編
シリーズ全モデル・試打ラウンド編
梶山 駿吾SHUNGO KAJIYAMA
ヤマハRMXブランドディレクター。10年以上ツアーレップとして男女ツアーの現場で活動。2020年モデルの「RMX」からクラブ企画・開発に携わる。最新シリーズのコンセプト決めなどに関わる。
コウタロウKOTARO
「日本一の漫才師」を夢見た幼少期を経て、学生時代は競技ゴルフに没頭。日本プロゴルフ協会(PGA)ティーチングライセンスを取得した2012年にゴルフテックに入社。長年レッスンコーチを務めていたが、現在はコンテンツに出たり作ったりしている。
コウタロウ 新「RMX VD ドライバー」の印象は前作と全然違いました。重心位置から形状まで、「ここまで変える?」と思うぐらい別物だったので、この変化は勇気が必要だったのではと感じています。
梶山 私は20年モデルから企画開発に携わっています。当時からツアープロの声を聞きながら、大きくコンセプトを変更して特徴的なクラブ作りをしてきました。ただ、寛容性や打感もそうですが、多くのゴルファーが求める「飛び」の要素がないと面白くない。今回はそこにこだわりました。
コウタロウ 3モデルのドライバーを打ちましたが、どれも初速感が良かったです。やはりフェースなどに違いがあるのですか?
梶山 初速というのはフェースに頼ることになります。ちなみに、フェース面で一番飛ぶ部分はどこか分かりますか?
コウタロウ これは「フェースセンターより少し上」とよく言われています。
梶山 そうなんです。少し上の位置が打ち出し角とスピン量を最適化できる部分です。ただ、ボール初速が出る反発値の最大はやはりフェースセンターになります。新「RMX VD ドライバー」ではフェースセンターを「少し上」に持ってくることで、最大飛距離を生み出すように調整※しました。
それにはフェース面とソール部分をつなぐL字部分を肉厚化することで、下部のたわみを抑え、最もたわむ位置をフェースセンターより上に持ってきています。また、アドレス時にフェースセンターより少し上をセンターの高さだと認識させるために、クラウン部を高く盛り上げた形状にしました。
梶山 人間の目はすごく優秀なので、構えた時にヘッドの高さを認識して、そのセンターに当てようとするという研究結果から導きだしています。そのため、打点位置が安定しているアスリートゴルファーやプロなら、初速が出る恩恵を最大まで受けられるのです。
※「Bull’s-eye Face(ブルズアイ フェース)」…飛びの三要素と言われるボール初速、打ち出し角、スピン量を最適化し、最大飛距離を生み出すフェース構造。
横にスライドしてご確認いただけます。
コウタロウ 僕の周りの人も言っていましたが、今回の「RMX VD ドライバー」は構えた時の顔の良さ、黒で統一されているカラーリング、曲線の形状も嫌いな人がいないのではと思います。
梶山 形状は0.1mm単位でこだわっています。クラウンのテクスチャーも真っ黒だと威圧感があるので、少しだけ色に変化をつけたり、輪郭のラインもよく見ると「RMX VD/R ドライバー」なら「R」の文字が入っていたりします。
コウタロウ 本当だ。気づかなかった! 細部にまでこだわっていてオシャレですね。あと、複数モデルがあるドライバーだと、フックフェースが気になったり、ヘッド後方が伸びていたりと、いくつか見た目が気になるモデルもあるのですが、「RMX VD ドライバー」は3モデルそれぞれにアスリートが好む“カッコよさ”がある。中でも僕は「RMX VD/X ドライバー」が印象に残りました。 前作の「RMX VD59 ドライバー」の後継になるかと思いきや、フェース独特の見え方もなく、弾道も右にふけることのない、ストレートかストレートドローで打てました。
梶山 慣性モーメント値が高いドライバーはどうしてもグース感(フェース面がネックのラインよりも奥に下がる形状)が出てしまうのですが、その見え方が少なくなるようにデザインしています。私も「RMX VD/X ドライバー」がお気に入りで、女子プロも「RMX VD/M ドライバー」と「RMX VD/X ドライバー」で悩む人が多いです。「RMX VD/X ドライバー」はヘッド後方に4カ所のウェイトポジションによる調整が可能で、つかまりの度合いもかなり変化します。
コウタロウ 確かにウェイトの位置を変えるとかなり特徴が変わりました。慣性モーメントが最大になるポジションに設定すると、いい意味でフェースが動かない感じで、ちょっと革命的でした。
梶山 ウェイトの重量も小さく見えて、実は16gもあります。それがヘッド後方で動かせるので、重心位置はかなり変わる設計です。「RMX VD/M ドライバー」は重心深度を調整できる前後のスライドウェイト、「RMX VD/R ドライバー」は重心距離を調整できる左右のスライドウェイトを装着していますが、重心設計はそこまで極端ではないものの、全体的にアスリートブランドとして認知された作りになっています。
コウタロウ 前作は寛容性が高く、やさしく球が上がるようなクラブでしたが、そことは大きく変わっていました。
梶山 「カッコいいから使ってみたい」「プロが使っているから使ってみたい」というゴルファーがたくさんいて、そんなアスリートゴルファーに寄せたモデルとも言えます。あとは、私たちの契約プロが活躍できるクラブを作りたいという思いもあります。「RMX VD/R ドライバー」はドローヒッター、「RMX VD/M ドライバー」はフェードヒッターのプロが満足できる性能になっています。
コウタロウ 前作では2モデルだった「RMX」が3モデルになった理由は、そういった意味があるのでしょうか?
梶山 そうですね。今回はアスリートモデルに寄せたいという思いがあり、そうすると今までの2モデルだと足りないゾーンが出てきます。操作性が高く、つかまりを抑えて叩けるモデルの存在が必要だということです。そのため「RMX VD/R ドライバー」が加わったというイメージです。
コウタロウ まったく逆を思っていました。それこそ今平プロに合わせたモデルから作り始め、「RMX VD/M ドライバー」や「RMX VD/X ドライバー」をアスリート寄りに作ったのかと。
梶山 今回の「RMX VD ドライバー」は、アスリートゴルファーがこのモデル、アベレージゴルファーはこのモデルという、はっきりとした区分けはありません。3モデルの中でどのモデルが一番合うかを試してもらい、その中でウェイト位置の調整、シャフトの選択、ロフト角は±2度の調整※ができるスリーブになっているので、いろいろ試していただいて、最大飛距離が出る設定を見つけ出して欲しいです。
※新スリーブ構造…最適な打ち出し角を得るためにロフト角を±2度で可変調整できるスリーブを採用。ヘッドのロフト角と合わせて7.5度~12.5度までのロフト幅が選択可能に。
コウタロウ 「RMX VD」シリーズはアイアンも3モデル(R/M/X)の展開になっています。個人的には「RMX VD/R アイアン」が良かったです。ヤマハのアイアンは全体的にトップブレードが厚めですよね。
梶山 厚めになっています。ただ今作はヘッド形状が大幅に変わっています。今までのアイアンは、フェース長が短めで、トゥ側が高く、ヒール側が低くなって、三角形状が特徴的でした。ただ、この形だとフェースの重心がヒール寄りになるため、センターヒット時にややヘッドが動いてしまいます。そのため、今回は形状を変えることで、重心位置をセンターに持ってきて、センターヒット時の球のねじれが解消されました。
梶山 「RMX VD/R アイアン」と「RMX VD/M アイアン」の2モデルは、形状がまったく同じなのですが、「RMX VD/M アイアン」の方がトップブレードで0.5mm、ソール幅も広めになっているので、安心感が持てるクラブになっています。
コウタロウ 僕は普段、マッスルバックのアイアンを使っているので、トップブレードが薄い方が好きです。ヤマハのアイアンは比較的厚めが多いのですが、これは飛び系ってわけではないですよね?
梶山 ロフト角は「RMX VD/R アイアン」の7番で33度※と、通常のツアー系アイアンとは1度立てている状態です。ただ、今平プロからは「半番手ぐらいは違う」とコメントをもらっています。形状を変えた恩恵の、球のねじれのなさもあるのかなと思います。藤田プロも「RMX VD/M アイアン」を使い始めていますが、「30年間契約した中で一番いいアイアン」というお褒めの言葉もいただけました。
※「RMX VD/M アイアン」は7番31度、「RMX VD/X アイアン」は7番28度
コウタロウ あと「RMX」と言えば歴代のフェアウェイウッド(FW)の評価が高いですよね。今作に関してはどうですか?
梶山 20年モデルの「RMX FW」は球が上がりやすいと評判で、グリーンをとらえることに長けていました。前作の22年「RMX VD FW」では、「世の中で一番飛ぶ3Wを作りたい」という思いから、コストを気にせず、とにかく飛距離に特化した素材で組み立て、驚くほど飛ぶFWができました。今回はさらに82gの大容量タングステンをソール前方に設置し、超低重心&浅重心にすることで、ロースピンでさらにぶっ飛ぶFWになりました。
コウタロウ 超低重心&浅重心と聞くと、球が上がるかどうかが心配になります。アスリートゴルファーにとって、ぶっ飛ぶだけだとグリーンに止められないリスクも負うのかなと……。
梶山
正直な話、パワーがある人が打つと、ロースピンで推進力がある球が打てるので、飛距離が欲しい人にはものすごい恩恵になります。ただ前作の方が高さを出せる分、グリーンを狙いやすいので、その方が合うゴルファーはいると思います。そこはすべての人に合わせるのは不可能なので、今作はとにかく飛ばすことにフォーカスし、飛びが欲しいゴルファーに挑戦してほしいです。
一方で、5Wや7Wは、前作と比べて重心位置を高くしています。打ち出しが高く、バックスピンが入りやすくなっているので、グリーンをとらえるクラブとしての性能を備えています。契約プロもほとんど最新モデルへスイッチしてもらっています。「RMX VD ユーティリティ」も同じように高さとスピンが入りやすいクラブなので、プロやアスリートゴルファーには絶対的な武器になる性能になっています。