スペシャル対談
ゴルファーの天敵
“腰痛”との闘い
日本人の2割から3割が腰痛を抱えているという。仕事や加齢など原因はさまざまで、スポーツもまたしかり。腰痛を発症しているゴルファーも珍しくない。ツアー通算31勝を誇る永久シード保持者、片山晋呉プロも腰痛と闘うひとり。国内最先端の技術で腰痛の根本原因治療に特化した「ILC国際腰痛クリニック」の簑輪忠明理事長とのスペシャル対談を通して、ゴルファーと腰痛、治療の選択肢について考える。
PROFILE
片山晋呉プロ Shingo Katayama
簑輪忠明 Tadaaki Minowa
水城高から日大に進み、アマチュア時代から活躍。
22歳の1995年にプロ転向。98年にツアー初優勝。2008年に25勝目に到達し、永久シード選手に。賞金王5度。ツアー通算31勝(メジャー7勝)を誇る。2023年からシニアツアー参戦。YouTube「45 GOLF - 片山晋呉チャンネル」は登録者数 27万人を超える人気。
2009年⽇本医科⼤学医学部を卒業。同大付属病院などを経て、2022年に「ILC国際腰痛クリニック東京」院⻑就任。
2024年2月に理事長就任。2024年4月に開院する大阪院も統括する。⽇本で唯⼀、椎間板を修復する治療・セルゲル法を⽤いて椎間板ヘルニアの治療を中⼼に診療。
⾃⾝の椎間板ヘルニア⼿術での経験を活かし、患者さんの気持ちに寄り添った、負担の少ない治療を提供。
Q
日本人にはなぜ腰痛を訴える人
が多いのでしょうか?
- 簑輪理事長
-
日本人の体形は欧米人と比べると胴長短足の傾向にあります。その分、体のバランスが悪く、変な力が加わると腰の負担が大きくなります。実際、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症の割合は、欧米人よりも日本人の方が多いですからね。
- 片山プロ
-
僕はプロに転向してから20数年間、腰痛を発症したことが1度もなかった。他の選手から「腰が痛い」と聞いても、「腰なんか痛くならないだろう」と思っていました。ただ、腰を痛めてから勉強するようになり、いろいろと分かってきたことがありますね。
- 簑輪理事長
-
片山プロが最初に腰痛を発症したのはいつ頃ですか?
- 片山プロ
-
最初は4年前の2019年です。その時は長引くことなく翌年も平気でした。ところが、昨年(2023年)9月第1週からまた痛み始めて……。レギュラーツアーとシニアツアーの両方に出場するようになり、その分、車での移動が多くなったのが要因だと思います。3時間のドライブが何回か続いたぐらいから腰の様子がおかしくなりました。
- 簑輪理事長
-
長時間の車移動はまさに腰痛の原因として多いんです。
おそらく、座る姿勢も悪かったのでは?
- 片山プロ
-
間違いなく悪かったですね。
- 簑輪理事長
-
私がすすめる長距離移動での姿勢は、シートに深く座って、骨盤を立てる姿勢です。できれば背もたれにはあまり頼らないように。ただ、この姿勢で3時間は大変なので、適度に休憩を入れることが大切です。
- 片山プロ
-
背もたれに頼りながらの移動で、車ではテレビを見たり、寝たりしてしましたからね。そんな状態が何週も続いたので、やっぱりそれが腰痛のきっかけなのでしょう。
Q
片山プロはゴルフを長年プレーしていますが、
そのこと自体が腰痛の要因にはならないのでしょうか?
また、腰痛を抱えているゴルファーはどのようなケアをするといいのでしょう?
- 簑輪理事長
-
すごく難しいですね。人それぞれスイングも異なりますし、悪いスイングを続けていると、腰に変な力が加わって痛めやすくなります。アマチュアゴルファーがゴルフで腰を痛めたからといって、じゃあゴルフをやめましょうとは絶対に言いたくありません。ゴルフを楽しいからやっているわけで、ゴルフを我慢して腰の痛みを感じないようにする人生はすごくつまらない。
まずは、筋力の低下や正しいスイングに留意し、あとはやり過ぎないことですね。ゴルフをやり過ぎて腰を痛めた人も結構いるので、そこは適度に。
- 片山プロ
-
確かに、自分も腰を痛めてからはクラブを振れなくなりました。怖いんですよ、振るのが。例えばラフに入ったら、今までならグリーンまで届くように打っていましたが、「何かあったら嫌だな。ちょっとやめておこう」ということがあります。
それで、最初から「グリーンの手前でもいいや」と思うようになった自分はいます。もちろん、練習量も減っています。シーズンオフに入ってから丸々2カ月、クラブを握っていない状態です。
- 簑輪理事長
-
現在はそれほど腰に痛みを感じないとのことですが、ゴルフを2カ月プレーしなかったことで調子がいい可能性はあります。ただ、またクラブを握ったときに、痛くなるかもしれません。
休んだから根本的に良くなるわけではなく、そこが難しい。やはり、重症なら医療を介入すべきだと思います。
- 片山プロ
-
今シーズンは腰痛と上手く付き合っていくしかないでしょうね。
Q ゴルフは生涯スポーツですが、腰の大切さとは?
- 簑輪理事長
-
ゴルファーで体を痛める箇所が腰という人は最も多く、その次に多いのが膝。腰を痛めているから膝を痛める人もいると思います。ゴルフにおいて腰は大事な運動器ですが、痛めてしまうとゴルフ以外の時間も辛くなります。腰に強い痛みを感じるのであれば、まずは医療機関へ行き、腰の画像を撮ってどういう状態か、ご自身で理解することですね。
- 片山プロ
-
自分は体のケアに気を遣っていたからこそ、若い頃から腰痛に悩むことなく、プレーできていたのかもしれません。今回も早めに腰痛に気づいたのは良かったですし、腰痛がなければ、プロゴルファーとしての寿命はまだまだ残っていると思います。
- 簑輪理事長
-
アマチュアゴルファーの方も自分の体には気を遣ってほしいですね。
- 片山プロ
-
ラウンド前にせめてストレッチはした方がいいでしょう。寒い時期でもいきなりゴルフ場へ来てプレーするのは無理があります。自分はストレッチには結構時間をかけていますよ。
ゴルフ場でも30分以上はやっています。ゴルフだけでなく、自宅でも起きたら30分間は体を動かすようにしています。
- 簑輪理事長
-
そういうのは大切。柔軟性のない人が、急に体を動かすと筋肉や筋関係に不具合を起こしやすい。長時間の車移動は良くないと言いましたが、デスクワークでもそう。長時間の座位は姿勢が悪くなりやすいですし、姿勢が原因で結構痛めている人も多いですからね。理想は侍のように座ることです。せめて1時間に一度は休憩を。できれば歩いてほしいですが、1分ぐらい立つだけでも構いません。あと、骨格が悪い人はハムストリング(太もも裏の筋肉)が硬い傾向にあります。ストレッチなどで股関節が柔軟に動くようにするのも大事なケアになります。
- 片山プロ
-
今年から気をつけるようにします。
- 簑輪理事長
-
ゴルフ歴の長さが腰痛に影響を及ぼすかどうかは人によります。片山プロの場合は、年齢を重ね、筋肉が衰えて椎間板に負担がかかりやすかったのかもしれませんが、ゴルフが原因とはいえないでしょう。ただ、ゴルフを続けることで、悪くなった箇所がさらに悪くなるという悪循環に陥った印象はあります。
片山プロのMRIを見ると、腰椎の2番と3番の間にヘルニアが出ているので、この痛みがメインだと思います。ただ、骨格がよくないのも気になります。多分、元々真っすぐだったのが、ヘルニアが出たことで角度が変わったと思われます。
- 片山プロ
-
痛みの原因がどこか、先生の診察を受けたことではっきり分かりました。
ただ、これほどまでひどいとは思っていなかった。
- 簑輪理事長
-
片山プロの場合、恵まれた体格があり、ものすごく努力をしてトップに立ったイメージがあるので骨格がいいという印象はありましたが、MRIを見たときは結構悪いなと思いました。腰に負担がかかったときにヘルニアから中身が出てしまい、炎症が起きて痛くなるというサイクルなので、それをずっと繰り返していると、椎間板の中身が減ってきてつぶれてきます。
10年後、20年後を予想でき、そうなったときに腰の回転が加わると痛みが出やすいと思います。あと、脊柱管のところが、ちょっと狭くなっていますが、骨と骨が近づいてつぶれてくると、骨の変形が出てきます。そうなると私たちでも治すのが難しくなります。
- 片山プロ
-
最低でも1年に1回はMRIでの検査をしていますが、急に悪くなった感じです。それまでは痛くもなかったし、こんな状態ではなかったと思います。
シーズン開幕まで時間がないのでいまは治療をしないと思いますが、シーズンが終わって痛い状態なら、すぐに治療を受けたいですね。
1カ所の治療なら15分で終了
1. 医師やスタッフとの相談・問診
まずは、患者さんにとってベストな選択ができるように、私やスタッフとの相談は欠かせません。患者さんに寄り添うことを大前提としているからです。
事前予約で来院していただき、レントゲン撮影。MRIは事前に送っていただくか、当院と提携の施設で撮影してもらいます。当日は最初に問診を行い、いつどういう症状が出たか、どういう姿勢をとるとどのように調子が悪いのか、そのほか運動習慣や仕事内容、外出の頻度などをお聞きします。
2. 診察
問診後は身体診察。前屈すると痛いかどうか、腰のあたりを押して痛いかなど、どんな要素が患者さんの症状を引き起こしているのか調べます。診察を終えたらレントゲン、MRIといった画像を見ながら、仙骨の上の腰椎や骨格の並びなどを丁寧に解説します。ここまで25分ぐらいかけます。
3. 治療内容のご説明・治療
次に治療について、イラスト付きの資料を使ってメリット、デメリットもしっかり説明します。当院では椎間板の治療をしているだけで、骨を治すこと、筋肉を強くすることができないことも伝えます。
患者さんの悩みや質問に答えながら、最終的に治療を行うか、行わないか、いつ行うかを決めます。診察当日に治療を行う人も少なくありません。最大5カ所までの治療ができますが、それでも40分ぐらいで終わります。1カ所なら15分ぐらいです。2~3カ所の治療を行う患者さんが最も多いです。治療後は1時間半ほど安静にしていただき、診察後に帰宅となります。
TREATMENT POINT
再発しないのがセルゲル法
腰を痛める人の多くは椎間板が傷んでいます。ヘルニアの人は椎間板の外側に亀裂が入り、椎間板の中身が出ている状態です。私たちが行っているセルゲル法とは、椎間板の中にディスコゲルという特殊な液体状の物質を充填する治療法です。
ディスコゲルが亀裂したところを埋め、ディスコゲルに配合されているセルロースという繊維が固体化します。液体状のものが椎間板の中に入ると固体になるので、固まって椎間板の中を修復してくれるわけです。椎間板の中身が出なければ炎症が起きませんし、椎間板がつぶれなくなることを期待して行う治療です。
通常の外科手術は椎間板の外からのアプローチなので、飛び出た中身を切除しますが、セルゲル法は椎間板の中からのアプローチなので、そこが大きく違うところです。全身麻酔が必要なく、針を刺すだけなので日帰りも可能です。
治療後はすぐに状態が改善するわけではありません。早くて3週間、多くの人は3カ月かかります。ディスコゲルが椎間板の中で起こる変化が3カ月ぐらいかかるからです。
セルゲル法は2007年にフランスで始まった治療で、主にヨーロッパを中心に世界54カ国以上で導入されており、日本に入ってきたのは2022年。導入したのは、世界的にも日本が一番遅いぐらいです。外科手術と違い、自由診療なので治療費は1カ所なら120万円(税込み132万円)、2カ所目からはプラス10万円(税込み11万円)ずつとなります。
腰痛チェックリスト CHECK LIST
【1~2項目あてはまる方】 今後のためにも一度腰のMRI画像を撮って専門医の診察を受けてみても良いかと思います。
【3項目以上あてはまる方】 椎間板が弱っている可能性が高いので早めに腰のMRIを撮って専門医の診察を受けることをおすすめします。
咳やくしゃみが腰にひびく、ひびいた時期がある。
重いもの(10kg以上)を頻繁に持つ。
長時間、同じ姿勢で座ることが多い(仕事、車移動など)。
ゴルフ、サッカー、テニスや強度の高い筋力トレーニングをしている。
過去にぎっくり腰、ぎっくり腰のような症状になった経験がある。
「腰痛や下肢の痛み・しびれ」が良くなったり悪くなったりを年単位で繰り返している。
クリニック紹介 CLINIC
医療法人OJ会
ILC国際腰痛クリニック東京
東京都港区港南1-8-15 Wビル1F
(JR「品川駅」中央改札を出て港南口(東口)より徒歩7分)
医療法人OJ会
ILC国際腰痛クリニック大阪
大阪府大阪市淀川区西中島5丁目4-20
新大阪駅前中央ビル1F
(新幹線・JR「新大阪駅」より徒歩約5分)
ILC国際腰痛クリニック
予約専用ダイヤル
TEL : 03-6712-3520(東京・大阪共通)
予約受付 / 月~土 9:00~17:00(祝日・休診日も受付対応)
診療時間 /
9:00~17:00(木・日・祝日・年末年始は休診)※MRI画像での事前相談(無料)も可能