「Qi35って何がすごいの?」、「前作Qi10とどう違う?」、「カーボンフェースのメリットは?」―。
3つの大テーマ × 各5つのポイントで、なぜ飛んで、なぜ曲がらないのかを深掘り! クラブコーディネーターの鹿又芳典氏とツアープロコーチの三觜喜一氏が、慣性モーメントの進化から、スピンコントロールの秘密まで、ゴルファーの質問にズバリ答えます! 「Qi35」の魅力が分かれば、アナタもきっと試したくなる!
INDEX
目 次
「Qi35」の意味
「Qi10」の次が「Qi35」になった理由は?
「10から一気に35」と、
もっと先を行く革新性を強調
歴代シリーズを振り返ると、「SIM」から「SIM2」、「ステルス」から「ステルス2」という流れがあり、今回は「Qi10・2」も予想されたが、「10から一気に35」と、もっと先を行く革新性を強調するため「Qi35」と命名された。
「3」の意味は?
「3」は、「Form(形状)」、
「Function(機能)」、「Fit(フィッティング)」
この3つの開発コンセプトが由来。「形状」はカーボン素材※を活用したテーラーメイドが得意とする最新鋭のデザイン性とカッコよさ、「機能」は飛距離性能とやさしさの両立を徹底的に追求したテクノロジー、「フィッティング」は画期的なフィッティングテクノロジーを組み合わせることにより、多くのゴルファーのパフォーマンスを向上させることを表している。
※カーボンウッドの特長
近年のドライバーはフェースにチタンを採用するのが主流だが、テーラーメイドでは2022年の「ステルス」シリーズから、チタンより軽くて硬いカーボンフェースを採用。フェースの軽量化とエネルギー伝達効率の向上により、ボール初速アップに貢献している。

「5」の意味は?
ドライバーヘッドのモデル数
コアモデルの「Qi35」。前作に引き続き、慣性モーメント※の上下・左右の合計値が10K(1万g/cm2)を超える「Qi35 MAX」、操作性が高く低スピンモデルの「Qi35 LS」、軽量でつかまりが良い「Qi35 MAX LITE」、さらにフィッティング用コンセプトヘッド(計測専用ヘッドのため非売品)が用意されている。
※慣性モーメントとは
MOI(慣性モーメント)が大きいほどヘッドがブレにくく、ショットが安定。直線的に振りたい人には高MOI、弾道を操りたい人には低MOIが向いている。

「Qi」の意味は?
「Qi」は「QUEST(探求)」と
「INERTIA(慣性モーメント)」の頭文字。
このように「慣性モーメントを探究する」ことで、寛容性を高めつつ、テーラーメイドらしい飛距離性能を追求しており、ゴルファーにもその恩恵と性能を実感してほしいという想いが込められている。
そもそも慣性モーメントとは、物体の動かしづらさや止まる力を意味しており、ゴルフクラブの場合、ヘッド回転のしづらさを表す。「g・cm2」の値は、大きければ大きいほど、クラブがボールとのインパクト時にブレなくなり、当たった方向に真っすぐ飛んでくれる。そのため、ゴルフにおいては「やさしさ」や「寛容性」に言い換えられている。テーラーメイドとしては初めて前作の「Qi10 MAX」で慣性モーメント値が1万(10K)g・cm2を超え、話題を呼んだ。
「Qi35」が実現したことは?
これまで両立できなかった難題をクリアし
「飛ばせるクラブ」に進化
重心を深くしつつ、フェース面上の重心を下げるという難題をクリア。寛容性を高めながら、飛ばせるエリアを広げることに成功している。
クラブの重心は、フェース面から深い場所(=ヘッド内部のフェースから離れた場所)に重心が移動すると、慣性モーメント値が上がり、寛容性は高まる。フェース面から浅い位置(=ヘッド内部のフェースから近い場所)に重心が移動すると、フェース面上の重心が下がり、高弾道&低スピンで打てるスイートスポットが広がり、飛距離性能がグンと上がる。
しかし、フェース面上の重心(=一点で支えてバランスが取れる位置。クラブの一番飛ばせるスイートスポット)は、深重心となると上に上がるため、飛ばせるエリアが小さくなりがちだった。それをテーラーメイドではカーボンウッドだからこそ実現可能なヘッドの軽量化と余剰重量の最適な配分で、フェース面上の重心を下げることに成功。前作の「Qi10」より強く飛ばせるクラブに進化している。

搭載された
テクノロジーの進化

鹿又 芳典かのまた・よしのり
千葉県でゴルフ工房「マジック」を経営するクラブフィッター兼クラフトマン。プロからアマまで対応し、クラブテスターとしても活躍。
「カーボンフェース」は何がすごいの?
軽量化で飛距離アップ&やさしさを両立
近年の代表的なテクノロジーといえば、真っ先に思い浮かぶのが「カーボンフェース※」です。カーボンフェースは、初代「ステルス」から始まって「ステルス2」、「Qi10」と続き、「Qi35」で4世代目。そもそもカーボンフェースを採用する理由は、軽量化です。主にウッドのフェースにはチタンなどの金属が使用されますが、より軽いカーボン素材を採用することで劇的に軽くすることが可能になりました。
フェース以外のボディもカーボン素材を採用。「Qi35」はパーツをつなぐフレームも、面積を小さく成型することで軽量化されており、その点が進化ポイントといえるでしょう。軽量化がかなったことで、その分の余剰重量を重心位置の設定に使うことができ、4つの異なるヘッド性能のモデルを作ることができました。
※カーボンフェース
カーボン素材は強度と柔軟性を持つ繊維を折り合わせて、カーボンファイバーを創り出し、それを複数の層に織り重ねることで、最適な強度や重さに調整することができる。テーラーメイドの「カーボンフェース」は、カーボンファイバーの方向や厚さを最大のボール初速やゴルファーが心地よいと感じる打感や打音を生み出すように設計。強度や重量のバランスを調整する中で、「60層カーボンフェース」が最適解だった。

ヘッドを軽量化することの恩恵は?
余剰重量を活かし、
重心位置の最適化が可能に
「Qi35」のヘッド重量は、4モデルとも200g前後。これはフェース部、クラウン部などで軽いカーボン素材を使い、数十gの軽量化に成功したことで設計自由度が高くなり、タングステンのような重い素材を使える余剰重量を生み出したからです。
この数十gの重さが、重心位置をヘッド内で数mm移動させることを可能にします。慣性モーメント値や、ヘッドのつかまり具合を調整する重心角を大きく変化させることが可能なため、ヘッドそれぞれが特有の性能を持つことができます。

「Qi35」が「飛んで曲がらない」理由は?
飛距離性能が高いエリアが大きく広がり、
飛びと寛容性を両立した
多くのゴルファーが考える理想のゴルフクラブは「飛んで曲がらない」こと。「曲がらない」のひとつの基準になるのも慣性モーメント値です。この数値が大きいほどヘッドがブレずらく、ミスヒットに強い性能を持ち、曲がりの幅も軽減されます。
一方、「飛ぶ」要素は、慣性モーメント値が大きくなると、どうしてもフェース面上の重心位置が上がるため、ギア効果※でスピン量が増え、ボールスピードも落ち、球が飛ばなくなってしまいます。それが「Qi35」では、慣性モーメント値を大きくしながら、フェース面上の重心位置を下げることに成功。これにより、飛距離性能が高いエリアが拡がり、飛びと寛容性の両立を叶えているのです。
※ギア効果
クラブヘッドはボールとのインパクト時、フェース面上の重心より上なら、ヘッドが上を向き、重心より下なら、ヘッドが下を向く。そのため、上で当たると高弾道かつ低スピンになりやすく、下で当たると低弾道かつ高スピンになる。これがギア効果と呼ばれる。

本当に慣性モーメント値は大きい方が良いの?
慣性モーメントの最適バランスが、
飛びと操作性の鍵
「慣性モーメントが大きいほどブレない」と言われると、数値が高ければ高いほど良いクラブという気がしますが、実は、ココに落とし穴があるんです。慣性モーメント値が大きくなると、クラブが振りづらくなってヘッドスピードが上がらず、フェースをスクエア(=目標方向)に戻しづらくなります。インパクトでヘッドがブレないことが慣性モーメント値の高いメリットですが、そもそも目標方向にインパクトできていなければ真っすぐ飛ばすことができません。
今シリーズでは「Qi35」、「Qi35 LS」、「Qi35 MAX」、「Qi35 MAX LITE」がラインアップされており、段階的に慣性モーメント値が調整されています。コアモデルとなる「Qi35」はソール前後に2つの「TASウェイト(可変ウェイト)」が搭載され、位置を入れ替えることで9000g・cm2から8100g・cm2へと慣性モーメント値をコントロールすることができます。これにより球の強さや操作性、振りやすさやミスヒットへの強さなど、1つのドライバーで調整する事ができます。
単純に慣性モーメント値の数値の大きさでヘッドを選ぶのではなく、自分にあった振りやすさを意識してモデルを選ぶことで、ブレずに飛ばす弾道を手に入れられます。そのため、購入する前には、是非実際に試打をしてみるといいでしょう。

安定した飛びを生み出すテクノロジーは?
歴代モデルのDNAを継承。
スピードポケット&ツイストフェース
10年以上前から採用しているのが「貫通型スピードポケット」。ソールのフェース面に近い場所に、小さな隙間(ポケット)を作ることで、インパクト時にフェースがたわんで、より高いボール初速を生み出す効果があります。一般的に、フェース下部でヒットした時の初速低減を抑制する効果があると言われていますが、実は、「フェースのどこに当たっても初速がアップする」という効果もあるようです。これはフェースだけでなく、ポケットがあることでボディ全体がたわむためで、テーラーメイドのクラブは飛距離性能が高いという印象を与えているのは、この「スピードポケット」の影響も大きいです。
もう1つ、何代にも渡って採用されているテクノロジーが「ツイストフェース」。フェースを平坦にするのではなく、あえてねじった形にすることで、ボールが狙ったところに飛びやすくなるテクノロジーです。例えばクラブのトゥ側の上目でインパクトした場合、右にボールは飛び出しつつも、ドロー回転(左回転)のスピンが入るので、フェアウェイの真ん中に戻ってきやすい効果があります。
「Qi35」は慣性モーメント値が大きく、ヘッドがブレにくいので、サイドスピンは入りにくいのですが、それでも芯を外した場合は多少ブレるので、そのブレを「ツイストフェース」でカバーし、「真っすぐ打ちやすい」と実感できるモデルになっています。

4モデルの
試打インプレッション

三觜 喜一みつはし・よしかず
日本プロゴルフ協会ティーチングプロA級。14年に同協会ティーチングプロアワード功労賞受賞。ジュニアからツアープロまで指導し、登録者43万人超のYouTube『MITSUHASHI TV』でも活躍。
「Qi35」シリーズを構えた時の印象は?
ヘッドの据わりが抜群。
自然にスクエアセットできる安心感
フェース面がスクエア(=目標方向に真っすぐ)になっていない状態でアドレスに入り、テークバックを始めると、スムーズにスイングができなくなります。その点、「Qi35」はそんなエラーが起きにくくなるドライバーでした。何も考えずにポンとソールを地面に着けるだけで、誰でもフェースをスクエアにセットできます。
フェース面の上部に白いラインが引かれていることも構えやすさの要因のひとつです。前述のように「Qi35」はヘッドの据わりが良いヘッドで、それと白いラインで、「真っすぐ構えられている」と視覚的に認識することができます。
また、フェース部がブラック、クラウン部がグレーっぽいシルバーと、色のコントラストも絶妙です。フェース面の存在を感じることができますが、フェースの色の主張が強すぎないので、構えやすくてスムーズに始動できます。

「Qi35」の見た目の特徴は?
ゴルファーごとの
好みに合わせたヘッド形状で、
自信を持って構えられる
今回試打した4モデルはどれもヘッド体積が460ccですが、「Qi35 LS」は投影面積が小さいディープ形状。強弾道が打てる印象でした。上級者やゴルフ歴が長い人が好む顔※です。
「Qi35」と「Qi35 MAX」は、投影面積が大きいシャロー形状。投影面積は同じとのことですが、「Qi35」のクラウン後方部を見ると、黒いラインがデザインされています。これは、実際のサイズよりも小さく見える効果があり、シャープに見せる工夫がされています。低重心でいかにもボールが上がりそうなイメージが湧きつつ、振り抜きの良さも感じます。
「Qi35 MAX」と「Qi35 MAX LITE」は、アベレージゴルファーやゴルフ歴が浅い人に安心感を与えるデザイン。意外と見落とされがちですが、見た目と実際の球筋が一致するというのは非常に大事なポイントで、ナイスショットの確率を上げてくれる要素です。
※クラブの顔
アドレスで構えた時に、クラブヘッドを上から見た印象のこと。

4モデルを打った感想は?
飛び・操作性・直進性。
自分に合った1本が見つかるラインアップ
「Qi35」のコアモデルは、「真っすぐ飛びそう」というイメージを持つことができ、実際にラクにストレート弾道が打てました。一番の特徴はフィーリングの良さ。インパクトでフェースに喰いつく打感は玄人好みで、締まった打音も好印象です。
「Qi35 LS」は、球筋を操作できるイメージが持てますし、実際にドローとフェードの打ち分けもしやすいです。特筆すべきは打感と打音のバランスの良さ。インパクトでフェースに乗る感触はあるのですが、必要以上に喰いつく感覚ではなく、高音で弾き感があるフィーリングが得られます。
「Qi35 MAX」は、投影面積が大きく安心感があります。また構えた時にアップライト(=ヘッドが上を向く)になるので、ボールをつかまえやすい。実際に打って感じるのは「真っすぐしか行かない」ということ。スライス、チーピンを狙って打とうとしても、フェアウェイに収まるぐらいの幅で抑制されそうです。
「Qi35 MAX LITE」は、「Qi35 MAX」よりも、さらに球がつかまりそうな形状。最大の特徴はとにかく軽くて振りやすいこと。どんなに振りにいっても振り遅れる心配がなく、ボールをラクにつかまえられます。一般的に、軽量クラブは打感が軽く、スピン量が増えすぎて直進性が失われる傾向があります。ですが、「Qi35 MAX LITE」はインパクトに手応えがあり、球筋は強く前に前に飛んでくれました。

「TASウェイト」で弾道はどう変わる?
弾道をカスタマイズして
全く違う1本に変えられる
「Qi35 LS」は、ソール前方のトウ・ヒールに「TASウェイト(可変ウェイト)」が2つ設置されています。このため、ほかのモデルよりも浅重心設計になっていることが分かります。重心が浅くなると慣性モーメント値が下がるため、ヘッドの操作性が高まり、弾道を操りやすくなります。また高初速エリアも広いため、低スピンの強弾道が打てました。
コアモデルの「Qi35」は、「TASウェイト」を前後で入れ替えことが可能です。標準は前に3g、後ろに13gで設定されていますが、これを入れ替えることで、スピン量や球の高さが変化します。試しに、前に13g、後ろに3gとウェイトを入れ替えると、やや打ち出しが低くなり、低スピンの弾道が打てるようになりました。
浅重心にして操作性を高め低スピンにすると飛距離性能は高まる傾向がありますが、その分寛容性は下がってしまうので、特にアベレージゴルファーの方はどちらが自分に合った振り心地なのか何回か打ってみた方が良いと思います。

軽量ドライバーのメリットは?
振りやすさとつかまりの良さで、
スライス軽減と安定した飛距離を実現
テーラーメイドが日本人ゴルファー向けに企画した人気シリーズ「グローレ」は、軽量でつかまりが良いヘッド性能で、スライサーのゴルファーには心強い人気モデルでした。「Qi35」シリーズで、同じ性能を持つのが「Qi35 MAX LITE」。慣性モーメント値を上げつつ、つかまりをよくする重心設計がされている。
最大の特徴は、軽量で振りやすさも担保されていること。スライスに悩むゴルファー、力が落ちてきて重いクラブが苦手になってきた人は、一度このモデルを試してもらいたいです。

【総括】 飛ばしもゴルフも
“自己最高”へ 最適ヘッドで真っすぐ遠くに!
Qi35シリーズは、テーラーメイドの飛距離性能に加え、大慣性モーメント設計で驚くほどのやさしさを実現。あなたにぴったりの1本で、自己最高を更新しよう!
真っすぐ遠くに、「強く飛ばしたい」アナタには「Qi35」
真っすぐ遠くに、「安定して飛ばしたい」アナタには「Qi35 MAX」
真っすぐ遠くに、「無理せず振りぬき飛ばしたい」アナタには「Qi35 MAX LITE」
真っすぐ遠くに、「弾道を操りながら飛ばしたい」アナタには「Qi35 LS」