「ニューJPX DE ボール」の開発秘話に迫る!
世界最多となる512個のディンプルで「明らかに飛距離が伸びた!!」とゴルファーから高い評価を得ているミズノ「JPX DEボール」が更なる進化を遂げた。
今回発売される「ニューJPX DE ボール」では、前モデルからさらに54個増の566ディンプルとなり、“世界最多”の自己記録を大幅に更新。より飛距離性能がアップしているのだ。
前モデル同様、ミズノがこの「ニューJPX DE ボール」開発で徹底的にこだわったのが、“落ち際のもうひと伸び”だそう。その秘密は通常の大きさと極小のディンプルを組み合わせるという、独自の新形状ディンプル構造とその数にあるのだとか。
そこで同社のボール開発の現場である、岐阜県の「ミズノテクニクス養老工場(以下「養老工場」)」に潜入取材。「ニューJPX DE ボール」の開発・制作過程を見学させてもらうとともに、企画開発の担当者に詳しくお話しを伺ってきました!!
二宮徳数
グローバルイクイップメントプロダクト部
クラブ・ボール開発課 技師
玉越将志
グローバルイクイップメントプロダクト部
ゴルフ企画課 上級専任職
落ち際のひと伸びで飛距離アップを実現する「ニューJPX DE ボール」の最大の特徴といえば、通常の大きさのディンプルの隙間を埋めるように、極小(直径1.3mm)のプチディンプルを配置した新形状ディンプル構造。
前モデルと「ニューJPX DE ボール」を見比べてみると、プチディンプルの数が明らかに増えているのがわかる。
ボールの企画を担当した玉越将志氏に伺うと、
「今回のリニューアルでは、ディンプル数を512個から566個に増やしましたが、通常の大きさのディンプル数は前モデルと同じです。つまり、前モデルから増えた54個のディンプル数はすべて極小のプチディンプルなんです。私たちが「JPX DE ボール」の開発で徹底的にこだわった「落ち際のひと伸び」を実現する秘密が、この極小ディンプルにあります。「ニューJPX DE ボール」では、このプチディンプルの数を増やすことによって、前モデルよりも「落ち際のひと伸び」をさらにパワーアップさせることができるんです」
ゴルフボールにおけるディンプルの役割は、空気抵抗を減らして揚力を増すことにあります。
ではなぜ、この極小のプチディンプルを増やすことが、さらなる飛距離アップをもたらすのでしょうか。
その理由を玉越氏に詳しく聞いてみると、
「ボールが空中を飛んでいる間の動きはディンプルの数や形状、配列によって決まりますが、他社も含めた従来のゴルフボール開発は、ボールが打ち出された直後の高速域を重視したディンプル設計が主流でした。そこで私たちが着目したのが、ボールが最高到達点のあたりから、地面に落下するまでの低速域でいかに揚力を高めるかです。ディンプルの数を増やせば、揚力は増しますが、通常の大きさのディンプルだと、打ち出し直後の高速域で揚力が働きすぎて、ボールが前に進もうとする力を妨げてしまうんです。いわゆる“吹け上がる”という現象ですね。JPXボールに採用されているプチディンプルは打ち出し直後の高速域では、空気がディンプルの上を通過するだけで揚力をあまり生みませんが、ボールが最高到達点のあたりから地面に落下するまでの低速域では、その効果を発揮し、高い揚力を維持することができるんです。ボールが落下中の揚力は進行方向と同じ方向に力が働くので、プチディンプルの数を増やせば増やすほど、ボールが地面に落下するのを遅らせることができます。加えて、今回のリニューアルでは、通常の大きさのディンプルにも改良が施されています。個数は前モデルと同じですが、ディンプルの深さやエッジの角度など、形状を見直すことで、打ち出し角は変えずに、最高到達点をより高く、遠くへ持っていくことに成功しました。プチディンプルが効果を発揮する時間が長くなることによって、前モデルよりも落ち際でさらにもうひと伸びしてくれる、というわけです」
インパクト直後から最高到達点付近の高速エリアでは、大きなディンプルが揚力と直進性に効果を発揮。
落ち際から落下に掛けての低速エリアでは、プチディンプルが効果を発揮し始め高い揚力を維持します。
他メーカーとは一線を画す革新的なミズノの技術!
最先端のテクノロジーが「ニューJPX DE ボール」には詰まっている
ボールの打ち出し直後の高速域だけでなく、落ち際の低速域にも着眼して開発された、前モデルの「JPX DEボール」、そしてそれをさらに進化させた「ニューJPX DE ボール」。ボール開発の歴史はまだ10年と浅いながらも、他メーカーとは一線を画す革新的な技術は、“球体の空力を科学する” という、ミズノ独自の研究開発によって生まれたのだという。 その最先端基地が「養老工場」なのだ。
「養老工場」に潜入した取材スタッフが、真っ先に担当者に案内されたのが、ボールの風洞実験を行う専用の開発ルームだ。
こういった風洞実験というのは、自動車や航空機の開発ではよく見かけるが、ゴルフボールの研究開発にも使われていたとは驚きだ。
「ミズノでは以前から空力研究の権威がある九州の大学とともに、野球やサッカーのボールといった球体の飛翔研究に取り組んできました。現在はその設備を養老工場で譲り受け、ゴルフボールも含めた球体の飛翔研究を続けているのです。前モデルの「JPX DEボール」、そして今回の「ニューJPX DE ボール」に採用されているプチディンプルの効果も、この風洞実験で新たなディンプルの可能性を追求した結果として生まれた革新技術なんです」(前出・玉越氏)。
ゴルフボールを開発している他社メーカーで、風洞実験の設備を持っているところはなく、空力性能の研究はほとんどがコンピュータ上でのシミュレーションによるもの。他メーカーには真似のできない、最先端のテクノロジーが「ニューJPX DE ボール」には詰まっているのだ。
“空力を科学する”というミズノ社の「養老工場」で使用されている風洞実験マシンがこれだ。写真右から左に風を流し、左の測定部でゴルフボールに働く力を計測したり、ボール周りの空気の流れを観察する。 ちなみにお値段は推定で約1億円とか?
ゴルフボールを風洞の中央にセットし、実際の飛びと同じ速度の風を右側の装置で作成し送る。ボールはエアージェットで回転させ 、実際、空中を飛翔しているのと同じ状況にし、ボールにかかる力などを測定し、ディンプル性能を研究している。
飛翔中の空気の流れを、パソコンの画面上でリアルに可視化できるのが利点。この空力実験によって、最適なディンプルの数や配置が導き出される。
「ニューJPX DEボール」もこの球体飛翔研究から生まれた
風洞実験によって最適なディンプル形状と配列を導き出し、その後に初めていくつかのプロトタイプが作成されます。
完成したプロトタイプのボールはまずランチャーテストにかけ、初速度や対称性といった規格に適応しているかをテストするのだそうです。
同社ボールの研究・開発に携わる技師の二宮徳数氏によると、
「養老工場にあるランチャーマシンは、英国のR&Aが規定しているものと、まったく同じです。マシンから打ち出されたボールの飛翔中の動きをセンサーでキャッチし、R&Aの規格と適合しているかをテストすると同時に、ディンプル性能の確認も行っています」
2つある上下の円形ドラム(写真左)を回転させて、ボールを打ち出す。ネットで囲まれた縦約40cm、幅約100cmの空間にボールを飛ばし、要所に設置されたセンサーでボールの動きと直進性などをチェックする
ディンプルの配置や深さに問題があると、飛ぶ向きによって直進性が悪くなる。一定のスピードで打ち出したボールは、弾道測定器の「ベクター」でもデータ計測。ディンプル性能も細かくチェックされる
ランチャーテストをクリアすると、最終段階となる試打ロボットによるマシンテストへと移ります。
この段階ではプロトタイプも内部コアのバランスを変えた数種類ほどに絞られ、どれを商品化するかがこのマシンテストで決定されるそうです。
そこで二宮技師にお願いして、前モデルの「JPX DEボール」と「ニューJPX DE ボール」を試打ロボットに打ち比べてもらいました。
3つぐらいに絞られたプロトタイプを試打ロボットで実打テスト。取材時はターゲット層である、一般アマ男性の平均ヘッドスピード42m/sにセットして、前モデルとニューモデルを打ち比べてもらった
試打ロボットが打ったボールは、レーザー式追尾システムの弾道計測器『トラックマン』を使って、ショットデータを詳細にチェックする。もちろん、人間の眼でも打ち出しから落下までの飛び様を確認
Ballスピード (m/s) |
飛び出し角度 (°) |
バックスピン (rpm) |
最大高さ (yard) |
キャリー (yard) |
トータル (yard) |
|
14JPX | 63.2 | 11.9 | 2652 | 25.5 | 223.1 | 248.3 |
16JPX | 62.9 | 11.9 | 2662 | 29.2 | 232.2 | 251.6 |
その結果、前モデルに比べ、「ニューJPX DE ボール」の飛距離性能が明らかにアップしていることがわかりました。
「ヘッドスピード42m/sでテストした2つのボールのショットデータを比べてみると、打ち出し角は11.9度とまったく同じなのに、最高到達点はニューJPXボールのほうが高く、キャリーが約10y伸びています。プチディンプルによる“落ち際のもうひと伸び”の効果が、この数値に如実に表れています」
ロボットによるマシンテストで「ニューJPX DE ボール」の進化が証明されたが、やはり実際にコースで打ってみないと、真の実力は見えてこない。そこで「養老工場」から、岐阜県大垣市にある「関ケ原カントリークラブ」に場所を移動。
OUTの1番ホールをお借りして、取材記者がドライバーとアイアン、ウェッジという3つの状況で、ニューJPX DE ボールを実際に試打してみました!!
関ケ原CCのOUT1番ホールはレギュラーティから373ヤードのパー4。
天気は快晴だが、左からの強いアゲンストという、ボールの飛距離テストにはやや厳しい条件。
さっそく「ニューJPX DE ボール」をティアップし、ドライバーで打ってみると、まずは弾道の高さに驚かされた。
前モデルと打ち比べてみると、フォローでボールの行方を追ったときに、視界に飛び込んでくるボールの最高到達点が明らかに違う。 弾道計測器のトラックマンのデータを見ると、ロボットのマシンテスト同様、打ち出し角はほぼ同じなのに、です。
打感もまるでプロや上級者が使うスピン系のボールのように柔らかいですね。
前モデルはややインパクトの打感が硬めで、球離れが早い印象ですが、「ニューJPX DE ボール」は打感がソフトで、フェースにいったんボールが食いつく感覚があります。フェースにボールが乗っている時間が長いから、コントロールがしやすいし、ボールにパワーも乗る感じがします。
そして肝心の飛距離はというと、右から強いアゲンストが吹いているにもかかわらず、落ち際であまり右に流されず、前へ前へと進む力が強いんです。
強いアゲンストのなか、200ヤード地点の右サイドにあるバンカーにキャリーで届くなんて、「ニューJPX DE ボール」飛距離性能の高さにビックリしました。
次にティグラウンドから、グリーンセンターまで残り150ヤード地点のフェアウェイに移動し、7番アイアンで打ってみました。このアゲンストだと、7Iで150ヤードは厳しいかなと思ったんですが、しっかりグリーンセンターまで届きました。
ここでもやはり印象に強く残ったのが、弾道の高さです。普段、自分のクラブとボールで打っている7Iの弾道とは高さが明らかに違います。感覚的にはワンクラブ小さい8Iに近い高弾道で飛んでいきます。
ここでも前モデルと打ち比べてみましたが、距離では半番手から1番手、「ニューJPX DE ボール」のほうが飛んでいる感じです。
このボールを使えば、パー3のティショットで同じぐらいの飛距離の同伴者よりも1番手小さいクラブで打てちゃう。そんな優越感を与えてくれるボールですね(笑)。「ニューJPX DE ボール」は飛ばしに特化したボールですが、この弾道の高さなら、真上からグリーンに落とせるので、スピン量が少なくてもグリーンで止まってくれそうです。
最後にウェッジで20~30ヤードのアプローチショットも打ってみましたが、ディスタンス系ボールにありがちな、打ち出しでポンと高く上がってしまうようなことがなく、適度な高さで飛び出すので、距離のコントロールがとてもしやすいと感じました。
私はアマチュア競技にも挑戦しているんですが、プライベートのラウンドだけでなく、試合でも使ってみたいなと思わせるぐらい、性能の高いボールだと思います。
協力:関ヶ原カントリークラブ 岐阜県大垣市上石津町牧田95−18
フリーのゴルフライター
49歳/ゴルフ歴25年/JGAハンディキャップ4.6/ドライバー平均飛距離250ヤード/ヘッドスピード45m/s
ホームコースは成田東CC、クラブ競技や千葉県のアマチュア競技などにも挑戦。
前モデルの「JPX DEボール」の口コミ
ヘッドスピード:39~42m/s
平均飛距離:201~220yd
ゴルフ場で初めて打った時、ボールの伸びがいつもと違うなと思いました。打感も問題なく、これからこのボールを使っていこうと思いました。ミズノのボールを何度か使ったことが有りますが、今までの中で最高です。
ヘッドスピード:39~42m/s
平均飛距離:221~240yd
もしかしてこのボール 宣伝通りかも! 特にアイアンとの相性が良く今日は何度もパーオンしました。低気圧のせいでボールが飛んだのかと思われるほど柔らかい打感で距離がワンクラブ分飛んだかも。近々1ダース買おうかな。 ちなみにスコアーは自己最高に近かったです。
ヘッドスピード:50~m/s
平均飛距離:241~260yd
ビックリしました! とてもよく飛びます! 1度試してみて下さい! 流石ミズノです。よく研究されてる。