武藤俊憲プロが「ターゲットをピンポイントで狙える」と絶賛する、ミズノの「MP-66アイアン」。
いまから9月16日のデビューが待ち遠しいが、MPシリーズに代表されるミズノの軟鉄鍛造アイアンが、クラブに対するこだわりの強いプロや上級者の心をギュッと掴んで離さないのはなぜか。
その秘密を探るため、軟鉄鍛造アイアンのヘッドを製造している、同社の鍛造工場を訪ねてみました!!
「ミズノのアイアンといったら、岐阜県の養老工場じゃないの?」と思うかもしれません。
養老町にあるミズノテクニクスは、匠の技を持つクラフトマンたちが、お客様のオーダーに合わせ、出来上がったヘッド1つ1つに微調整を施し、完成品へと組み上げる、いわば最終作業を行う工場です。
今回、私たち取材スタッフが訪問した広島の鍛造工場はその前段階にあたり、吟味された高品質の軟鉄素材を、ミズノ独自の製法によって鍛造し、アイアンのヘッドを製造しています。
今回の取材では、丸棒状の軟鉄素材から鍛造ヘッドが出来上がるまでの、実際の作業工程を見ることができました。
国内有数の優れた鍛造技術を持つこの工場では、1968年から同社の軟鉄鍛造アイアンのヘッドを製造しています。
取材当日はちょうど、武藤プロが現在使用中の「MP-5」から移行予定の「MP-66アイアン」のヘッドが製造されていました。
見学用の白衣とヘルメットを着用し、スタッフの案内のもと、いよいよ工場内へ潜入。
まず、長い丸棒の軟鉄素材を切断して加熱し、ロールと曲げという2つの加工を施した後、ハンマーでプレスして形を作っていきます。
この工程を「粗鍛」といい、そこからさらに、最終的な形状に近いところまで精密に鍛造していく、「精鍛」の工程へと入ります。
匠の技を持つ熟練の技術者たちによって、最初はただの丸い鉄の棒だった軟鉄素材が、精密なアイアンヘッドへと姿を変えていく。
美しい形状と心地よい打感を持つ、ミズノの鍛造アイアンヘッドは、こうやって作れらているんですね。
世の中には、たくさんの“軟鉄鍛造アイアン”が存在しますが、“打感の良さ”という点において、他メーカーと一線を画すのが、ミズノの軟鉄鍛造アイアンです。「あのソフトな打感を味わってしまうと、他の軟鉄鍛造は使えない」「打感は柔らかいのに、インパクトの感触がソリッドに手に伝わってくる」etc…。
プロや上級者はもちろん、クラブにこだわりを持つゴルファーが絶賛する、ミズノの“心地よい打感”はいったいどうやって生まれているのでしょうか。同社でMPアイアン等のクラブ開発を担当する土井一宏さんに話を伺うと、「その秘密は“音”にあります」というのです。
「以前から、“ミズノの鍛造アイアンは打感が心地よい”と、多くのゴルファーから評価をいただいてきましたが、その理由について、私たち開発者も実は明確な答えを持っていなかったんです。
そこでより優れた商品開発のため、数年前から打感の研究を始めました。
様々な角度から分析していくなかで、ゴルファーがインパクト時に手から感じるフィーリングには、“音”が大きく影響していることがわかりました。
たとえば、プロや上級者に形状や製法の異なるアイアンを、打音が聞こえない状態(雑音を流したヘッドフォンを装着)で打ち比べてもらうと、打音が聞けるときには判別できた打感の違いが、明確に感じ取れなくなってしまうんです。
そこからさらに打音を深く研究していくと、他メーカーの鍛造アイアンや、素材と製法の違うステンレスの鋳造アイアン等に比べ、MPシリーズに代表される当社の鍛造アイアンは、音の響きが非常に長いことがわかりました。
では、インパクト時にゴルファーが“心地よい”と感じる、「MPアイアン」の響きの長い透き通った打音はどこから生まれるのか。
そこには私たちミズノが軟鉄鍛造アイアンを開発、製造するにあたって大事にしている、「素材」「製法」「設計」という3つの飽くなき“こだわり”があるんです」
一般的に、軟鉄鍛造アイアンに多く使用されている軟鉄素材は、「S20C」や「S25C」などの炭素鋼ですが、ミズノでは独自に規格を設けて厳選した「S25CM」という高品質の炭素鋼を、MPアイアンのヘッド素材に採用しています。
炭素鋼にはリンやイオウといった脆さ(もろさ)を助長するような不純物が混じっていますが、「S25CM」はそれらの不純物がJIS規格の50%に抑えられています。不純物が少ないことで強度や靭性が増すのはもちろん、一般的な軟鉄鍛造アイアンや鉄を液体に溶かして型に流し込んで成形する鋳造アイアンに比べ、金属組織がより密になり、均一性が高くなります。
これによって響きが長くて透き通った打音が生まれ、セットや番手の違いによる打感のバラツキも限りなく小さく抑えられるのです。
ミズノの軟鉄鍛造アイアンは独自の“グレインフローフォージド(鍛流線鍛造)製法”による、ネック一体成型によって製造されています。
金属には木材の木目と同じように、結晶組織の流れがあり、それを鍛流線(グレインフロー)といいます。鍛流線は金属の靭性や耐性に深く関与していて、ミズノの軟鉄鍛造アイアンはこの鍛流線が途中で切れることなく、ネック部分まで一方向に繋がっています。一般的な軟鉄鍛造アイアンにはヘッドとネックを別々に作って溶接で繋いでいるものも多く、これだとネック部分で鍛流線が途切れてしまいます。
また、ミズノと同じネック一体型であっても、成形するまでに切削や研磨を繰り返すことで、やはり鍛流線が断裂してしまいます。
その点、ミズノの“グレインフローフォージド製法”は、加熱した丸棒のネックからホーゼル部分にあたる場所をロール加工によって絞って伸ばし、さらに曲げ加工を施してから鍛造しています。
これはミズノが世界8カ国で特許を取得した独自の製法であり、鍛流線の断裂に繋がる切削や研磨工程を最小限に抑えることができます。
途切れることなく、ネックまで繋がったこの鍛流線によって、“心地よい”と感じる、響きの長い澄んだ音を実現しているんです。
ミズノの軟鉄鍛造アイアンのヘッドは、まずCADで設計を行いますが、微妙で繊細なヘッドの形状を表現するのには限界があります。
そこでミズノでは、CADの設計データをもとにサンプルを削り出し、CAD設計時に発生する面と面のつながりの折れや波、形状の凹凸などを、匠の技を持つクラフトマンが細部に渡って修正。プロや上級者を満足させる美しい形状へと仕上げていきます。
そのヘッドをスキャニングすることで、精度の高いCADデータが完成し、高品質の金型が作成されます。
一般的な軟鉄鍛造アイアンは、形状の修正をヘッドの成型後に行うため、研磨の作業が多くなり、それが打音や打感に重要な“鍛流線”を途切れさせる原因になっています。ミズノの軟鉄鍛造アイアンは限りなく完成型に近い成型がなされるので、修正のための研磨が最小限で済み、鍛流線が途切れるのを防いでいるのです。
ミズノプロスタッフからでてきた「球をつぶして柔らかい打感で打ちたい」「落ち際までスピンを持続させたい」
「ロングアイアンを楽に打ちたい」「球を包み込むイメージが欲しい」 といった意見をベースに開発を進めたMP-66。
ミズノクラフトマンが形状監修した「和顔」ヘッド は、アドレス時にネックラインが飛球線を向くようにし、ボールを包み込むイメージを出しやすく、日本人が好む形状をしている。
「インパクトで球を潰してフェースに乗せたい」という要望に応えるため、 トップエッジの肉厚を厚めに設定し、インパクト時にヘッドの変形を抑えることにより振動を最小限に抑え打感を向上。
またMPらしいコンパクトなヘッドながらトゥ・ヒールの肉厚設計で大きなスイートエリアを可能にし、「やさしさ」を向上させた。
音の響きや高さ、大きさ、音色を考えた、こだわりの1本になっている。
#3 | #4 | #5 | #6 | #7 | #8 | #9 | PW | |
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ロフト(°) | 21 | 24 | 27 | 30 | 34 | 38 | 42 | 46 |
ライ角(°) | 59.5 | 60 | 60.5 | 61 | 61.5 | 62 | 62.5 | 63 |
長さ(インチ) | 38.75 | 38.25 | 37.75 | 37.25 | 36.75 | 36.25 | 35.75 | 35.25 |
バウンス角(°) | 2 | 2 | 2 | 3 | 3 | 4 | 5 | 6 |
F.P(mm) | 3.1 | 3.3 | 3.5 | 3.7 | 3.7 | 3.8 | 3.9 | 4 |
バランス | D2 | D2 | D2 | D2 | D2 | D2 | D2 | D2 |
クラブ重量(g) | - | - | 429 | - | - | - | - | - |