ティイングエリアからグリーンの手前に構えるバンカーが目に入ります。欧米のコースのようにアゴが反りあがり、砂の壁のような立体感あるデザインになったこと、周辺がギザギザにカットされたことで景観の美しさと存在感がアップしました。
打ち下ろしのストレートホールで第1打は左サイドのOBゾーンを警戒しフェアウェイウッドを握る選手もいるでしょう。第2打のエリアは左足下がり、つま先上がりになり、球が自然と左に曲がるライになります。
KEYA GOLF CLUB
Hole.1Par4 420yd
ティイングエリアからグリーンの手前に構えるバンカーが目に入ります。欧米のコースのようにアゴが反りあがり、砂の壁のような立体感あるデザインになったこと、周辺がギザギザにカットされたことで景観の美しさと存在感がアップしました。
打ち下ろしのストレートホールで第1打は左サイドのOBゾーンを警戒しフェアウェイウッドを握る選手もいるでしょう。第2打のエリアは左足下がり、つま先上がりになり、球が自然と左に曲がるライになります。
深さがたっぷりある左のバンカーは、グリーンの手前をえぐるように設計されたことで視覚的な圧力を生みます。そこでドローボールの出やすい、ショットが左に流れやすいフェアウェイ形状ですから戦略性がより増すわけです。砂の壁で跳ね返されたボールは勢いがついて手前に戻り、距離の長い、打ち上げのバンカーショットを強いられるためパーセーブが難しくなります。
バンカーのインパクトが増したことで、グリーンは形状が変わらなくとも狙えるエリアが狭く感じられます。しかしトッププロであればシャープな見た目は狙いが定まり、ミドルアイアン以下の番手で打てれば積極的に攻めようと思えるもの。アグレッシブになるからこそ、ミスも出やすい。スタートホールですからパーで問題ありませんが、バーディで勢いづくか、ボギーでつまずくか、その日のラウンドを大きく左右する芥屋の名刺代わりのつくりになりました。
Hole.4Par4 449yd
2021年の変更で、左右のフェアウェイバンカーの位置と形状が変更されました。打ち上げのパー4で、第1打の警戒ポイントはアゴが高い右サイドのバンカー。280ydのキャリーを出せずに、捕まってしまうとパーオンの可能性が低くなります。残り190yd前後のショットを5アイアン、6アイアンで高さを出すのは至難の業です。
対してティから300yd地点にある左のバンカーは「絶対にダメ」というほどではありません。アゴはそれほど高くなく、残り距離を考えても8アイアン、9アイアンを握ることができます。また、このバンカーが強調されたことで、ティイングエリアからのターゲットが明確になりました。以前は左サイドに流れるホール形状が“ぼんやり”していましたが、戦略性がはっきりしたように感じられます。
グリーンの周辺は特徴的な形状から、エリアによって難易度が大きく変わります。安全なのは右サイド、手前よりも奥からのほうが寄せやすそうです。最も注意すべきは左手前の“奈落の底”のようなコレクションエリア。ここからは自分の身長より高い打ち上げのアプローチが必要になります。登り切らなかったショットは強烈な傾斜で転がり落ち、ボールはフェアウェイ上にあっても、ラフに寄りかかって止まります。グリーン面が見えず、インパクトでクラブがまず芝とコンタクトするため距離感が難しい。とくに左奥にピンが立つ日はグリーン上で使える縦幅が短くなることもあり、このエリアはどうにかして避けるべきです。
Hole.9Par5 501yd
ティイングエリアが8番グリーンの横に新たに設けられ、距離が約30yd伸びました。以前は最も易しいホールの1つで、プロからすればバーディ必須ともいえるパー5でしたが、これからはそうも言っていられません。
左サイドにあった1つのフェアウェイバンカーが改修され3つになりました。一番手前のバンカーには220ydほどのショットで入ります。3つ目を越えるには290ydのキャリーが必要で、中でもアゴが高く設計されている2つ目の小さなバンカーにつかまってしまうとショートアイアンでのレイアップを強いられますから、是非とも避けたいところです。
ただし、トッププロであれば左のバンカー群よりも、右サイドが気になるのではないでしょうか。ホール全体が右に向かって下っており、とくにフェードボールではフェアウェイを転がって中央から横に逸れていきます。そうすると第2打でグリーンへの視界を遮る、右からせり出ている高い木々が気になり、トラブルになる恐れが生まれるでしょう。
実はこのホールはフェアウェイが広くとられているほうが、つまり右サイドのラフのエリアが狭いほうが、選手にとっては厄介になる可能性があるのです。第1打はフェアウェイバンカーに惑わされず、左を逃げずに思い切ってスイングしてほしく思います。
グリーン手前のバンカーも大きく、そしてグリーンに近づくように設計しなおされました。形状が“欧米仕様”になったことがどのエリアからもうかがえます。
Hole.12Par3 168yd
大会名物の“DJホール”。今年は19yd短くなり、168ydの設定に変わります。わずかに打ち上げているため、無風であれば7アイアン、8アイアンを持つ選手が多くなるでしょう。ティイングエリアの芝が逆目になっていることもあり、注意が必要です。
もともとグリーンの縦幅が短く、距離感を問われるホールでした。今回の改修で左サイドのバンカーがなくなり、芝を敷き詰めて高低差のある砲台の印象が強くなりました。プロにとってはバンカーのほうがイージーだったはず。左手前にこぼれたボールは強い傾斜で押し戻され、グリーンから遠ざかっていきます。4番ホールと同じように、ボールは芝に寄りかかるように止まるためチッピングが簡単ではありません。左奥に外した場合も難しいラフからの寄せになりそうです。
右手前はバンカーよりも、左足下がりになる周辺エリアのほうがフェアウェイであってもピンに近づける技術を求められます。グリーンを外した場合、見た目以上に難しさが詰まったホールです。
今年も決勝ラウンドではDJを迎え、場内を盛り上げる演出が施されます。選手がミドルアイアンからショートアイアンでピンを狙える距離設定に変わることで、さらにエキサイティングになるはず。積極的な攻撃が成功した選手にはバーディチャンスが訪れ、惜しくも失敗した選手がボギーのピンチを迎えるメリハリのあるセッティングが大会を面白くしそうです。187yd設定の昨年は、4日間でバーディ「62」、パー「300」、ボギー「71」、ダブルボギー「2」という結果でした。
Hole.16Par4 469yd
ここ何年も4番、10番と並んで最難関ホールの一つとして選手を待ち構える左ドッグレッグホール。第1打、第2打ともにロングゲームの精度の高さを問われます。ティショットはドローヒッター有利で、右サイドのバンカーをターゲットに右から左に曲げていくのが定石です。フェードヒッターはティイングエリアの左前方にある木々に当たる恐れがあり、3Wを選択してドローをかける選手もいます。
2打目のライは強烈なつま先上がり、左へのミスを誘発するフェアウェイの傾斜です。グリーン左サイドは、奥へのミスショットが隣のホールまで到達してしまう可能性も。ですから、グリーン右手前に構える深いバンカーを恐れない勇気が問われます。このバンカーからのショットは、プロにとっては大きな問題ではありません。むしろそれを嫌がってセカンドで長い番手を持ち、左奥に突っ込んでしまうことのほうが、よっぽどトラブルに繋がりやすくなります。ちなみに、バンカーのすぐ奥のグリーンは手前に下る傾斜で、ボールも止まりやすくなっています。
最難関ホールの一つですから、パーは悪いスコアではありません。ピンがどこに立つ日も、グリーンの手前エッジから中央10ydまでにきっちりキャリーさせて、バーディパットを打ちたい。結果的に下りのパットを打つことになっても、2打目がグリーンに止まっていることに、ギャラリーの皆さんには拍手を送ってもらいたいと思います。
Hole.18Par5 556yd
スコアを伸ばしあう展開になる本大会は、やはりバーディ、イーグルでのフィニッシュこそ締めくくりにふさわしいものです。2019年大会優勝の比嘉一貴選手は、この最終ホールで4日間通算6アンダーをマークしました。
第1打を右サイドにミスする選手が多いのは、まず左サイドが崖下のトラブルを招く可能性があること。2021年大会優勝のスコット・ビンセント選手も、ツアー初優勝がかかった最終日第1打を左の崖下に落とし、大ピンチになりました。さらにもう一つ、ティイングエリアがフェアウェイの右を向いていることにあります。右ラフには種類の違う芝が混在しており、根が強く粘り気が多いバミューダ系のラフからは男子プロでも前方に進めるのが精いっぱい。レイアップする場合は、改造された中央で口を開ける巨大なバンカーに入らないよう、下っているフェアウェイ上でのランを計算しなくてはなりません。一方で芝の色が薄いエリアからなら2オンが可能なため、まずはその見極めが重要です。
グリーンは中央を縦断する尾根が走る、全体傾斜が左右に分かれたグリーン。この場合はピンが立つショートサイド側から攻めるのが鉄則です。とくに左手前のピンに対しては、右から尾根を越えて寄せるのは大変。この場合は左手前のバンカーもプロであればセーフティゾーンになるはずでしょう。
大会最終日は例年グリーンの右奥にカップが切られます。2オンを狙う場合は200yd前後のショットになりますが、センターにキャリーさせて右に流れる傾斜を利用します。ラインを伝ってピンに近づいていくボールが真夏の芥屋に大歓声を呼び込みます。
1975年、愛知県生まれ。2000年代にPGAツアーに参戦した丸山茂樹の専属キャディとして米国を渡り歩く。日本帰国後は宮里優作の悲願のツアー初勝利を含め、多くの日本人プロをサポート。現在はプロキャディとして活躍する傍ら、テレビ中継の実況・解説、ラウンドリポーターも務める。愛称は「杉ちゃん」