矢野、谷原の活躍を陰で支える画期的スイング診断システム 02
「クラブフィッティングとレッスンに活用できるのが『サイエンスフィット』の最大の強み」―――内藤雄士
フェードヒッター谷原秀人のスイング軌道はストレート

 内藤コーチは、スイング軌道が分かる「ヘッド挙動測定器」を基に作られた「スイングタイプ分布図」を示しながら、2人のスイングタイプを解説してくれた。
 スイング分布図とは、アウトサイドイン、インサイドアウトのスイング軌道とアッパープロー、ダウンブローの入射角をデータ化し、表にまとめたもの。男子プロはほとんどが基本的には「インサイドアウト」、「アッパーブロー」なのだが、調子の良し悪しによりその枠内で若干のズレが生まれるそうだ。
「谷原は私がスイングを見る前、昨シーズンの開幕当初のデータを見ると、ややアッパー軌道でした。一方、調子を上げてきた7月のスイングでは、ほぼ直線的な軌道になっています。つまり、谷原はフェードヒッターですが、調子が良いときはアウトサイドインではなく直線的なスイング軌道だということが分かります。シーズン開幕当初は、飛ばそうとしすぎていたのかアッパー軌道が調子が上がらない原因だったといえます。また、フェードボールが持ち球のため、調子が悪い時期はアウトサイドからクラブを入れて、カットに打とうとする傾向もあります。数値化したスイング軌道を見ることで、その度合いを正確に把握できるのです」
 いくら内藤コーチとはいえ、これらの傾向を自分の目だけで判断すると、誤った結論を出してしまうことがあるという。これはプレーヤーでも同じ。矢野プロは昨年、自分のイメージとデータにズレがあった時期があったそうだ。

絶好調時の矢野東が描いたイメージと実際のスイングのズレ

「東が10週連続トップ10入りしていた頃は、フェードボールが完璧に決まっていた時期でした。針の穴を通すような正確性があったからこそ、好成績を残せていたのです。フェードボールといえば、球を上から打つイメージの「アウトサイドイン」だと思いがち。実際に彼自身も『自分はアウトからクラブを降ろしている』と思っていたんです。イメージ通りのフェードボールはアウトサイドインのスイングで作っているのだと。しかし、この頃のスイングを分析してみると、アウトサイドではなく若干インサイドからクラブを振っていることが分かりました。結論から言えば、彼はフェードボールを『ヘッドの入れ方』ではなく、フォロースイングで作っています。それを自分では、アウトサイドインの軌道でフェードを打っていると思っていたんです」  矢野プロほどのトップ選手でも、「自分のスイングイメージ」と実際の軌道では、ズレが生じることがある。しかも、絶好調時でさえもこのような誤差があるわけだ。

サイエンスフィットの「定期健診」でスイング傾向を把握

年間通して矢野プロ、谷原プロのスイングをチェックする内藤コーチは、ほぼ毎週、試合会場に足を運び、彼らのスイングを確認している。一方で「サイエンスフィット」のスイングデータは年に3、4回収集し、チェックしているという。
「『サイエンスフィット』のデータ測定は、健康診断のようなもの。一週間で体脂肪が10%も変わったり、体重が10キロも変化することはありませんよね。スイングデータも同じです。理想のスイングを作るために大きな目標に向っていく過程で、どのようにスイングが変化していくのかを数ヶ月おきにチェックしておくのです。こうすることでより効果的、かつ合理的にスイングを磨けるわけです」
 それ以外にも、クラブをチェンジした時などにも「サイエンスフィット」の「定期健診」は効果的だそうだ。「明らかにマッチしてない場合は別ですが、そのクラブが合っているかどうかは1試合では判断できません。数試合分のデータとスイングを分析することで、そのクラブを使った時の傾向が見えてきます」
 矢野プロ、谷原プロを支え続ける「サイエンスフィット」は、実はアマチュアにも効果的であると言及した内藤コーチ。その理由を詳しく聞いてみよう。