昨年の米ツアーで最も注目を集めたプレーヤーといえば、賞金獲得第1位になったV・シン、女子ではA・ソレンスタムということになるが、実はこの2人が設計したゴルフコースが中国にある。
E・エルスやG・ノーマン、そしてジャンボ尾崎などが設計した10のコース(180ホール)が一箇所に集まった中国本土南部、香港に程近いミッションヒルズ・ゴルフリゾートのことだが、このコース、世界最大の規模を誇るばかりでなく、シンとソレンスタムの活躍も含めて、今もっとも注目されているゴルフコースと言われている。
その理由のひとつは、このゴルフ場が中国本土にあるからだ。いま、世界のゴルフ界が中国に熱い視線を向けており、その延長線に巨大ゴルフリゾート・ミッションヒルズが位置している。
何しろ、世界最大の人口を抱える中国。現時点では、まだ総人口の0.1パーセント弱、100万人前後のゴルフ人口しかいないが、わずか人口の1パーセントがゴルフを始めるようになっただけで、日本のゴルフ人口を超えてしまう。だからこそ、世界のクラブメーカーは、将来の市場として中国を有望視している。しかも、昨今の好調な経済成長に歩調を合わせて、ゴルフが少しずつブームになり始めてもいる。中国国内では、かつての阿片戦争をもじって、イギリスからやってきたゴルフの魅力を「緑の阿片」と形容しているぐらいだから、これから市場が拡大していくことは間違いないだろう。世界のゴルフ関係者がこの好機を見逃すはずもない。
例えば、欧州ツアーは昨年11月末に05年のシーズンをスタートさせたが、その開幕戦は上海近郊で開催されたボルボ・チャイナ・オープンだった。さらに次週の香港オープンを含めると、今年は6月の2試合(ジョニー・ウォーカー・クラシックとBMWアジア・オープン)を加えて、欧州ツアーの公式戦が中国で4試合も開催されることになった。
「過去10年ほどで、中国はゴルフを含めて、大きく変貌している。ゴルフ場を例に挙げると、現在、中国本土には200コースあり、これが毎年50コースほど増え続けている。ゴルフ界の力関係が、将来、中国にシフトしてゆくことに疑いの余地はないが、問題はそれがいつかということだけだ」と語るのは、開幕戦となったチャイナ・オープンの冠スポンサー、ボルボ・イベント・マネジメントのM・ピヤット最高責任者。つまり現在のゴルフブームがブレイクする前に、中国の市場にコネクションを作っておこうという企業が、軒を連ねているというわけだ。
昨年は米女子ツアーや日本の男子ツアーで韓国人プレーヤーが大活躍して「韓流フィーバー」が起きたが、その背景には韓国内でのゴルフブームがある。韓国にはゴルフ場が少ないため日本へ団体でプレーしにやってくるゴルファーが大勢いる。
中国にはまだ、それだけの基盤が出来ているわけではないが、今年を境に、中国がゴルフ界で話題になる機会が増えることは、間違いなさそうだ。
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