産業再生機構の力を借りて再生の道を歩んでいる大京グループ。その関連3コースの再生計画がほぼ決着した。
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再出発する鳩山CC
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まず、もっとも紆余曲折あったのが鳩山CC(埼玉県)。旧会社側が示した民事再生の計画案は、ゴルフ場事業会社である鳩山観光株式会社を100パーセント減資し、新スポンサーである森インベストメント・トラスト株式会社が新たに1億円を出資。さらに鳩山観光に44億円を限度に弁済資金を貸し付けるというもの。
これにより会員(約1200名、預託金総額約138億円)に対する弁済率は34パーセント(再生計画認可決定確定後6カ月以内に一括弁済。継続希望者は弁済金の80パーセントを再預託)と、他の経営破綻コースの会員が聞けば何とも羨ましい条件が提示されていた。
ところが、この計画案に「待った!」をかけたのが、「鳩山カントリークラブを守る会」(世話人代表・岩崎伝造氏)。
「ゴルフ場の再生はあくまでも会員の手でおこなう」とし、中間法人の「鳩山カントリークラブ」を設立。事業会社の株式を会員が社員となった中間法人が全額引き受けるため、会員重視の経営、そして運営が保証されるというのが同会の主張である。
守る会が提出した計画案は100パーセント減資後の鳩山観光株式会社が発行する新規の株式を中間法人が引き受け、退会会員には31.2パーセントを10年間で分割弁済(年6パーセントの利息を付与)。もちろん、この全額を再預託することで、継続プレーも認めている。
こうして二つの再生計画案の賛否を問う債権者集会が3月30日に開催されたのだが、会社側に賛成した203名に対し、守る会への賛成は655名。債権額も会社側の28パーセントに対し、守る会は63パーセントと、いずれも圧倒的過半数を確保し、守る会の逆転勝利となった。
「そもそも森インベストメント・トラストは投資会社。投資会社である以上、投資したお金を回収するのが目的で、利益優先の運営になることは目に見えている。我々は利益より、あくまでも会員を重視した名門コースをめざしており、多くの会員がその考えに賛同してくれた結果だと思う」(岩崎氏)
鳩山CCは首都圏からも近く、トーナメントを開催したこともある人気コース。それだけにスポンサーの入札金額も高騰した。しかし、この高騰価格こそが、今回の逆転劇を生んだという厳しい見方もある。
「債権者の大半が会員で、債権額の大半が預託金。しかも人気コースで営業利益も確実に出せる今回の場合、会員主導の再生計画でも十分に現実的だったはず。ところが、高額売買が可能と判断した旧経営陣が、何故かスポンサー型の再生計画に。このあたりの不透明さも、会員の反感を買ったのでは」(ゴルフ場の再生に詳しい関係者)
「いくら人気があるといっても、40数億円という買収金額は高すぎ。投資金額の回収によるパブリックコース化を会員が懸念したのも当然」(ゴルフ場の再生コンサルタント)
「継続プレーを希望する会員にとっては弁済率だけが問題ではない。スポンサーが投資会社ではなく、然るべき上場企業であれば、我々も会社案を受け入れた」(岩崎氏)というように、鳩山CCの一件は、プチバブルともいわれる高騰した買収劇に警鐘を鳴らす結果となりそうだ。
一方、会員を含めた債権者から何と100パーセントの同意を得て、新たなスタートを切るのが東庄GC(千葉県)。こちらの再生計画案では東京建物株式会社がスポンサーとなり、10数億円ともいわれている買収金額と保有不動産の売却により80パーセントの弁済率を提示(プレー希望の継続会員には無額面のプレー権を付与)。2月23日に開催された債権者集会に於いて出席債権者全員、債権金額でも95.1パーセントの賛成を得て、難なく認可決定を受けている。
最後に、文字通り大京グループの代名詞ともなっていた大京CC(沖縄県)。こちらはユニマットグループの株式会社ユニマットホールディングが営業譲渡を受け、2月1日からはユニマット沖縄GCと名称も変更した。
同クラブは預託金総額が少ないこともあって安易に法的手続きを取らず、敢えて資本強化による再生の道を歩んでいる。
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