日本の女子ツアーでは10代の若いプレーヤーが注目されているが、先の全米女子オープンでも目を引いたのは、アマチュアと10代プレーヤーの数の多さ。アマチュアは、なんと18名も参戦し、しかもそのうち10代が12名いた。これに10代のプロ5名を加えると、合計17名もの10代プレーヤーが活躍していたことになる。
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スコアボードには10代プレーヤーの名前がズラリ
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結果から言えば、アマチュアプレーヤーで予選を通過したのは6人、10代のプレーヤーで予選を通過したのは7人だけだが、17歳のM・プレッセルと19歳のB・ラングの2人がともに2位タイとなり、ベストアマとランナーアップの勲章を手にしたのはご存知のとおり。
15歳のミッシェル・ウィも最終日に大叩きをしてしまったが、3日目まで優勝争いに加わっていたことを考えれば、10代のアマチュアプレーヤーが、女子ゴルフ界最大の試合で大活躍したことは、現地の米国人たちにとっても予想外だったようだ。
優勝候補ナンバーワンのソレンスタムがプレッシャーの中で期待はずれのプレーに終わってしまったのを尻目に、なぜこのような展開になったのか?
「わたしのようなアマチュアプレーヤーには、失うものが何もないし、怖いもの知らずとでも言ったらいいのか、大舞台でも恐れを知らない、といった要素があると思うわ。お金のためではなく、自分自身のためにゴルフを心から愛してプレーしている。だから諦めないし、全力を尽くして戦っているから、頑張れる。もし今後、プロになっても、こうしたひたむきさを忘れずにプレーしたいわ」と語るのは、10代アマチュアのお姉さん格のB・ラング。
そのラングは、すでに名門デューク大学を2年間で中退し、プロ入りを表明しているが、そのデューク大学に入学を希望しているM・プレッセルは、「勝てなかったことには確かに失望しているけれど、私にはこれから先まだまだ何年も残されている。それよりもギャラリーが応援してくれて、とても楽しかったわ」とラングと同じように、全力投球をした後のすがすがしさを感じさせる試合後のインタビューだった。
考えて見れば、タイガー・ウッズが96年にプロデビューしてからすでに10年。10年前にはプレッセルはまだ7歳で、ウィに至っては、まだ5歳。
そのウィに言わせると、「父がタイガーの大ファンで、父が私に教えたスウィングもタイガーを真似したものだったわ。だから私の部屋には、タイガーの写真がいっぱい飾ってあるの」とのこと。
タイガー・ウッズが火をつけたゴルフブームの中で、タイガーに憧れ、いつかタイガーみたいになることを夢見ながら育ってきた世代が、いまの10代というわけだ。
タイガーのデビューによってジュニア層がゴルフに興味を持ち始めたのと同時に、テレビ放映権料などが高騰し、その利益をアメリカのさまざまなゴルフ団体がジュニアゴルフに投資した結果が、ここに来て出始めたようだ。
米国では、多くのゴルフ団体が協力して始めた「ファースト・ティ」というジュニア育成のプログラムには、すでに50万人を超えるジュニアの参加者があるという。そうした中で、10代に関しては、一般に女性の方が男性より成長が早いために女子ゴルフ界が10代プレーヤーに席巻され始めたのだろう。
「わたしを含め、多くの若いプレーヤーがどんどん出てきて、女子ゴルフは毎年、層が厚くなっている。きっとそれは、LPGAや女子ゴルフ界にとっても良い事に違いないと思うわ」とラングが語るように、ソレンスタムが「年間グランドスラム」を達成できなかった今年の全米女子オープンは、「時代の転換」を象徴するトーナメントだったのかもしれない。
となると、来年から米ツアー参戦が予定されている宮里藍は、大変な群雄割拠時代の中で戦うことになりそうだ。今年の全米女子オープンの直前に20歳になったばかりの宮里に対して、まだまだ日本で活躍してほしいといった声も聞くが、数年後にはウィやプレッセルなどもプロ入りするはず。やはり世界に飛び出すなら、早ければ早いほど良いということになりそうだ。
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