日本で、ひさびさにゴルフを題材にした大型映画が製作される。しかもタイガー・ウッズが「初出演」することで話題になっている。
阪神淡路大震災ですべてを焼失しながら、60歳でプロになることを目指した古市忠夫を題材にした物語『還暦ルーキー』(平山譲著・講談社刊)が映像化。その映画『ありがとう』の製作発表記者会見が、11月14日に宮崎シーガイア・リゾートで行われた。
会見には、ダンロップフェニックス参戦のために来日していたタイガーも出席。古市役を務める俳優の赤井英和、妻役の田中好子らとともに登壇した。
この映画とタイガーとの関わりは、原作が出版された01年。書籍の印税がタイガー・ウッズ基金に寄付され、経済的に恵まれない世界中の子供たちの教育費に充てられた。その縁から物語を知ったタイガーが、映画化されると聞いて宣伝役を買って出たのだという。
「喪失感から立ち上がる勇気と感謝の物語に感動した。その映画化の制作会見に立ち会えたのは光栄なこと」
慈善事業に積極的なタイガーは、96年に父アールとともに基金を創設。これまで数多くの子供たちを支援してきた。
「優秀な子供たちが大学を卒業し、地域のリーダーになっていることは嬉しいし、自分にとっては社会への恩返しのつもり。まさにこの映画のタイトル同様『ありがとう』の精神です」
このように事業と映画の共通点を語るタイガーが、俳優として映画初出演する可能性も持ち上がっているという。
『リング』『らせん』などのヒットメーカーとして有名な映画プロデューサーの仙頭武則氏が、今年8月にタイガーへの協力を打診。するとその際タイガーサイドから、「出ることもアリだよと言ってくれた」(仙頭氏)。
この物語に対するタイガーの思い入れの深さに、関係者は驚いたという。まさかの「逆オファー」に、見事プロテストに合格した古市役と対戦する本人役として銀幕デビューする案も検討された。
だが「いきなりタイガーとの対戦では、せっかくの実話を基にした映画としてのリアリティがなくなってしまう」(同氏)と、今回の出演は見送られそう。
それでも、賛同者としてタイガーのメッセージが映画の最後に流されるかたちでの「初出演」が決定。
これにはタイガーも喜んでおり、「阪神淡路大震災にはずっと心を痛めていた。物語を知り、これは世界中の人々に勇気と希望を与えられる映画になると確信した。ぜひ応援したい」と協力を惜しまない。
この日の会見で世界のスーパースターと初対面した古市は、涙を見せる感激ぶり。
「握手した手が震えて汗が噴き出した。震災の焼野原から立ち上がってきたことを振り返ると、まるで夢を見ている気持ち」
またこの翌日には、テレビマッチのフェニックス・チャレンジでタイガーとの対決も実現した。
「ワシが世界のタイガーと戦えるなんて信じられへん。勝つ、負けるやなしに、晴れやかな舞台に立てることに、ほんま『ありがとう』の気持ちでいっぱいです」
映画は来年度中の完成・公開が予定されている。ゴルフは自称「HC100」という主演の赤井英和は、この作品のために練習場で猛特訓したという。
「本を読んで、涙が止まらなかった。どうしても古市さん役をやらせてほしかった。悲しさ、優しさ、理不尽さ、そして勇気と感謝、すべてが詰まっている映画になる」
出演は赤井、田中の2人の他に、薬師丸ひろ子、豊川悦司、永瀬正敏、仲村トオルら、豪華な顔ぶれが並ぶ。
ゴルフを題材にした邦画としては過去に例がない大作になりそうで、完成後は全国ロードショーされ、『リング』のハリウッド成功を手本に海外上映も視野に。世界公開の際はタイガーのメッセージが大きなPRになるだろう。
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