今年の新製品の中で注目の「四角いドライバー」が発売開始直後にいきなりつまづいた。K・J・チョイが米ツアー「クライスラー選手権」(昨年10月)で優勝するなど幸先のよいスタートを切ったはずの「ナイキ・サスクワッチSUMOスクエアドライバー」が無償交換。ナイキに何が起こったのか。
ナイキゴルフグローバルプレジデントのボブ・ウッド氏は、3月16日に電話記者会見を行い、北米と欧州で発売された「サスクワッチSUMOスクエア」の中に、SLEルールの制限値を超える反発係数の製品が含まれていたことを発表した。
これを受けて同社では、無償検査・交換プログラムを実施するとして、その日のうちにホームページ上で告知、受付を開始した。
同プログラムは、ユーザーがホームページ上で登録を行うと、同社から新品の適合品が発送され、その後で購入したクラブを送り返す仕組みで、事実上の全品交換となる。
「検査してからの対応ではお客さまの手元にクラブがない期間が生じる」(ナイキゴルフ・信田真樹氏)ための措置だが、「期待値をはるかに超える出足」(同氏)なだけに、同社の負担はかなり大きなものとなりそうだ。
今回、交換の対象となるのはアメリカ、カナダ、ヨーロッパ向けの製品だけで、「フェース部材の材質と設計が異なる日本およびアジア向けスペックはルールをクリアしており問題はない」(同社)ため日本国内のユーザーには直接関係しないが、それでも心配という人にはペンデュラムマシンによる検査を行ってくれる。
また、こうしたケースで問題となるのは並行輸入品や現地で購入して持ち帰ったケースだが、これに対しても同社では欧米のユーザーと同様の対応を保障している。
今回の一件は、「同製品の中にルールを超えている製品があるのはないか」というUSGAからの非公式な連絡を受けたナイキゴルフが独自に抜き取り検査を行って明らかになったものだが、通常USGAが市販品の抜き打ち検査を行うことはあり得ないため、ライバルメーカーの関与も噂されている。
米国の業界事情に詳しい関係者は次のように語る。「アメリカではライバルのクラブが飛びすぎているとして、選手が検査に持ち込むケースは多いようです。どのメーカーもペンデュラムマシンを持っており、ライバル製品を購入しているので可能性としては考えられます」
真相は薮の中だが、いまだ不況の出口の見えないゴルフ用品業界、もちろん隠ぺいや偽装はもってのほかだが、技術の競い合いでなく、足の引っ張り合いがあるとすれば、お互い首を締めあうことにもなりかねない。
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