ゴルフ場を取り巻く環境は厳しい。といっても経営環境の話ではない。芝の生育環境は、猛暑、水不足、集中豪雨など予測のつかない気候変動に、グリーンキーパーにとっても気の抜けない日々が続いている。そのグリーンキーパーにはこれまで「芝草管理技術者資格」という資格があったが、これが8月1日より日本ゴルフ協会の公認資格となった。
芝はきちんとメンテナンスされているのが当たり前と、プレーのたびにグリーンキーパーの苦労を思い起こす人は希だろう。
だが、そのキーパーの仕事も今ではデータ、科学の導入など変化の兆しも見えている。そういう中で発足したのが、日本芝草研究開発機構だ。
92年1月に発足した日本芝草研究開発機構(特定非営利活動法人)は、芝草管理に携わる人材の資質を高め、地位向上を第1の目的とし、「芝草管理技術者」の育成と資格認定を主要な事業としている。
また、80年代後半から90年代にかけては、ゴルフ場は農薬問題で批判の矢面に立たされていた。
ゴルフ場ごとにばらばらで経験や勘に頼っていた芝草管理技術を標準化し、環境問題に配慮しつつ技術向上を図ろうというのが2番目の目的だ。
芝草管理技術者資格は、1級、2級、3級の3段階にわかれていて、それぞれ3~4日間の講習を受講した後、筆記試験(1級のみ面接試験も)を経て資格が認定される。
国家資格ではないが、内容は高度で、単なる芝の知識だけではなく、土壌や薬品など大学の農学部で教えるレベル。
また、2級以上は現場の責任者として必要な、人事、労務、予算管理能力なども勉強し、コース管理責任者として必要なマネジメント能力を身につける。
ちなみに1級合格者のほとんどは専門学部や修士課程卒業者で占められており、「現場では博士号取得者より使える」(ゴルフ場関係者)といわれている。
当初は業務の研鑚を目的としていた制度だが、最近では就職活動を有利にしたい個人や、ゴルフ場営業のツールとして有資格者を必要とする造園業者からの受講者も増えている。
この資格を8月1日より日本ゴルフ協会(JGA)が公認とすることを決めた。
今回の決定は15年間の活動で延べ7447名が資格取得し、ゴルフ場はじめ公園、競馬場、スポーツ施設など多方面で芝草管理技術者の活躍が認知されていることを受けてのことという。
「コース管理や管理者を適正に評価することがゴルフ界の発展に寄与するという考えで、JGAと当機構の意見が一致しました。現在有資格者は3000名以上いますが、ゴルフ場やその他の施設数を考えたらまだ少ない。これを機にゴルフ場の認識がさらに高まれば」と同機構の神田功事務局長は期待を寄せる。
JGA公認となればゴルフ場に対しては、ある意味国家資格よりもアピールになる。
これを受けてゴルフ場でも「世代交代を機会に若いキーパーには、本人のためにも積極的に資格取得をバックアップしてあげたい」(南愛知CC・山内章生支配人)など早くも呼応した動きを見せている。
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