「緊急記者会見のご案内」10月31日午前、ゴルフ媒体各社にこんな見出しのファックスが送られてきた。通常、新製品発表などの案内は数週ほど前に送られてくるが、件の会見は当日午後6時30分からという慌ただしさの中で行われた。この記者会見の中身はなんだったのか?
31日に記者会見を開いたのはSRIスポーツ。
その内容は、同社が同日付で米国クリーブランドゴルフ社の全株式取得契約を締結したというものだった。
クリーブランドゴルフ社に関しては、半年ほど前から親会社のクイックシルバー社が買い手を探しているという噂が出回り、相手先候補としてテーラーメイドなどの名前が挙がっていた。
しかし、よもや日本のゴルフメーカーが買収すると予想していた人間は皆無といっていいだろう。
クリーブランドゴルフ社はクラブデザイナーのロジャー・クリーブランド氏が創業し、米ツアーでは定番となっているツアーアクションなどウェッジを柱とし、10年で総合クラブメーカーへと急成長。
ここ2年ほどは業績不振に陥っているものの、2006年の売上高は約189億円で、ゴルフ用品メーカーとしては全米第5位の地位を保っている。
かたやSRIスポーツは、いわずとしれた日本国内のトップメーカー。
同年の連結売上高は約582億円で、両社の売上げを単純に合計すると約770億円となる。
SRIスポーツでは、2015年までに売上高1000億円という目標を掲げ、縮小傾向の国内市場を補完すべく、「スリクソン」ブランドで米国を中心とする世界市場進出計画をスタートさせたが、海外売上高の比率は15パーセント、米国市場でのシェアはボールで2パーセント、クラブにあっては1パーセント以下(ともに06年)と、まだまだこれからといった状況だった。
それが、クリーブランドゴルフ社の買収によって、一気に目標の8割近い数値に達したわけだ。
買収を持ちかけられたのは3カ月前ということだが、はたから見れば電撃的と映る。
これだけ短期間で話をまとめることができたのは、「1000億の目標を立てた時点で企業買収も視野に入れていた」(SRIスポーツ・馬場宏之社長)という背景があってのことだ。
もちろん同社のねらいは単純な企業規模の拡大だけではない。
馬場社長はクリーブランドゴルフ社買収のシナジー効果として、地域的補完、得意商材の補完、全体規模拡大の3つを挙げている。
具体的には、クリーブランドゴルフ社の販売チャネルを生かした米国での「スリクソン」ブランドの拡販、SRIスポーツが苦手とするウェッジやパターを「クリーブランド」の商品で補完すること、生産や購買面でのスケールメリットなどがすでに視野に入っている。
この買収劇、ゴルフ業界にどういう効果を与えるか、まずは期待したいところだ。
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