先のミケロブ・ウルトラオープンに優勝したアニカ・ソレンスタムが引退を表明した。ロレーナ・オチョアに女王の座を奪われたソレンスタムだが、そのオチョアも出場していたミケロブでは2位に7打差をつけるという圧倒的な強さを見せて、今季3勝目を飾っていた。そのソレンスタムが今季かぎりで引退を表明。一体何があったのか。
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ゴルフより大事なものができた!?
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米女子ツアー通算72勝、数々の記録を塗り替え、LPGAでは初の2200万ドルを超える生涯賞金を獲得したソレンスタムも、いまや37歳。昨年の故障から復活したといっても、引退の兆候は見え隠れしていた。
「熟慮の末、私は今季末をもって、競技ゴルフから身を引く決心をした。ゴルフを愛する私にとって非常に難しい決定だったが、正しい選択だと思っている。というのも、家庭といった私の人生での優先すべきことがいくつかあり、こうしたものにゴルフで傾けてきたような情熱を注ぎたいからだ」とソレンスタム。
今年の10月には38歳になるソレンスタムだけに、結婚(再婚)をして子供を産むとしたら、ツアーは今年いっぱいというのが潮時だったのかもしれない。
昨年は首を痛めて、14試合しか参戦できなかったが、その間、マネジャーを務めていたマイク・マギー氏と婚約したり、「アニカ・ゴルフアカデミー」を開講したりしている。あるいは、ゴルフコースの設計や「アニカコレクション」というゴルフウェアのブランドを作ったりと引退後の生活設計もしっかりやっていたのだ。
「私は、プロゴルファーとしてやってきたことや達成した記録などを、自分自身誇りに思っている。競技ゴルフからは引退するが、これからもゴルフというゲームにはかかわってゆくつもりだ。私に多くのものを与えてくれたゴルフに恩を返してゆきたいと思っている。
それが最もよくできるのは、多分、アニカ・ゴルフアカデミーや基金を通して、若いゴルファーを育ててゆくことだろう。企業のスポンサーのプロモーション活動は続けたいと思っているし、女子ゴルフのゴルフ大使としての活動も続けたいと思っている。
また私は、女子ゴルフの成長の一翼を担えたことを誇りに思っている。過去を含めて、引退のタイミングを考えた時に、常に私にとって重要であることは、女子ゴルフが強い人気を保っているかどうかということであった。
そして今、女子ゴルフに素晴らしい未来が約束されていることを知っている」と語る。
ある意味では、2001年から2005年まで5年連続賞金女王に輝いたソレンスタムにとって、女子ゴルフを引っ張ってゆけるような自分に代わるプレーヤーの出現が待たれていたのかもしれない。
そして、オチョアの出現が、彼女に引退を決意させるきっかけになったということは十分に考えられる。
さらに今回の発表は、そのオチョアの出場する試合で優勝を果たした直後のもの。まさにまだ華のある時期に惜しまれて引退するには、絶好のタイミングだったといえる。
ただ、ちょっと穿った見方をすれば、彼女の引退をもっとも残念がっているのは、契約先のクラブメーカー、キャロウェイゴルフかもしれない。
というのは、「(選手との)スポーツにおける用品の使用契約が頻繁に変わるなか、アニカは(プロになった)最初の日からキャロウェイと歩んできた」(ニック・ラフェエル・キャロウェイ副社長)からだ。
同社の2枚看板の一方の顔であるフィル・ミケルソンのほうは、本当に強いのかどうか心もとないし、せっかく復活の兆しが見えたところで、ソレンスタムを競技ゴルフから失うことは、同社にとっての痛手となりうる。
もっとも、ソレンスタム自身が語るように、これからもスポンサーのプロモーションに出るということなので関係が切れるということではない。
1990年代後半から2000年代前半にかけて最強の強さを誇ったソレンスタムの引退で、女子競技ゴルフの一時代が終わろうとしている。
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