フィル・ミケルソンが全米オープンに向けて始動し始めた。先のクラウンプラザ・インビテーショナル・アット・コロニアルで今季2勝目を挙げたミケルソン。実はこの試合で、彼は5本のウェッジを使用していたのだ。
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5本ウェッジで全米オープンはいただき、
とミケルソン
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ミケルソンは毎日、すべてのウェッジを使用したというが、この試合での圧巻は、最終日、最終ホールでのウェッジを使用したセカンドショットだ。18番ホールで、ロッド・パンプリングにトップタイで並ばれたミケルソンは、ティショットを左に大きく曲げ林の中。
ライは深いラフで、何やらウィングドフットでの全米オープン(2006年、18番で左のラフに入れて優勝を逃す)を思い出させるような絶対絶命の状況に陥っていたのだ。ピンまで残り140ヤードをロフト52度のウェッジで打ったボールは、最初の木の枝の間をぬけて、2つ目の木の上を越え、なんとピン右横2.7メートルにつけるスーパーショット。
ミケルソンは、この「生涯でも5本の指に入るスーパーショット」のおかげで、最終ホールをバーディとし、2位に1打差で逃げ切った。
「自分がスコアメークをするのは、グリーン周りやアプローチ。だから難しいコンディションのなかで、異なったライから異なったショットが可能な限り多くできるようにオプションを持っていたい」ということで、キャロウェイの47度、50度、55度、60度、64度の5本のウェッジをバッグに入れていたのだ。
この試合の会場となったコロニアルCCは、以前にアニカ・ソレンスタムが挑戦したことでもわかるように、ツアーでも比較的距離が短い7054ヤード(パー70)。
そのため、ミケルソンは、ドライバーで飛ばすだけ飛ばして、ショートアイアンとウェッジで勝負する作戦に出たようだ。実際、この試合でのミケルソンのドライバーの平均飛距離は317.6ヤード。今年最高の382ヤードというティショットまで披露している。
普通の試合を「メジャーのためのウォーミングアップ」と以前に語っていたこともあるだけに、今回の5本ウェッジも全米オープンのためのテストといった気がしないでもない。
「自宅に帰れば、64度のウェッジなんか使わないし、それどころかほとんどすべてのウェッジも必要がないので、使うことがない。でもツアーでは、グリーン周りのライが難しかったり、深いラフや硬いグリーンなど極端なコンディションなことがよくある」ということで、今回は5本のウェッジをバッグに入れた。
今年のコロニアルはいつもよりラフが深かった。加えて全米オープンはグリーン周りが難しいことは周知の事実。それを考えれば、ミケルソンの言葉は、全米オープンに向けて語られているようにも思えてくる。
確かに全米オープンが開催される7600ヤード近いトーレパインズGCのサウスコースと7000ヤード強のコロニアルでは、同じ戦略でプレーすることは不可能だろう。
しかし、ミケルソンの今年の統計を見ると50ヤードから100ヤードのアプローチでは、平均で5メートル以内には寄らず、これが大きな課題となっている上、ミケルソン自身も、昨年来150ヤード前後からのアプローチで精度を上げることを課題にしていた。
そうした意味では、今回の試合の最終ホールのウェッジを使ったスーパーショットをはじめ、パーオン率72.22パーセント、バンカーセーブ率100パーセントという数字は、5本ウェッジの成功を物語るものだし、全米オープンに向けてのウェッジ選択にも、参考になったはずだ。
いずれにしても、タイガー・ウッズは、ひざの手術の回復に時間がかかり、マスターズ後、全米オープンが最初の試合になりそうだし、先のメモリアルトーナメントにはビジェイ・シンも参戦していなかった。
となると、ビッグネームのなかでは、もっとも全米オープンに期待がかかるのは、ミケルソンということになる。それだけにミケルソンの5本のウェッジ、全米オープンでどう活躍するのか、注目したい。
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