今秋、ゴルフ場の地球温暖化防止効果に関する研究論文が発表されることが明らかになった。森林の伐採や農薬の使用などを理由に、とかく環境破壊施設の扱いを受けてきたゴルフ場だが、実は手入れが行き届いたゴルフ場の芝や樹木は高い温暖化防止効果を持つというのだ。
注目の研究論文を書いたのは九州大学農学部の縣和一(あがたわいち)名誉教授。栽培学の大家だ。論文は今年9月に発行される日本芝草学会の学会誌に掲載される。
最近はビルの屋上の緑化が進められているほか、石原慎太郎東京都知事も都内の小学校の校庭の芝生化を検討しているなど、都市部の緑化への関心は高い。
が、縣名誉教授が目を付けたのは都市部から遠く離れたゴルフ場だ。
一般に、樹木は二酸化炭素を吸収し酸素を吐き出してくれる、天然の温暖化防止装置であることはよく知られているが、輸入材に押されて日本の林業は衰退の一途。結果、保有林が手入れもされないまま放置され、荒れ果てていく森林が後を絶たない、という問題をテレビなどでもよく目にする。
縣名誉教授によると、放置された森林は葉が密生してしまい、風通しが悪くなるだけでなく太陽光も充分には届かなくなる。光合成も活溌には行われなくなるのだから、温暖化防止効果も落ちてしまう。
また、天然林の多くは成熟段階に入っていて、もはや樹木も成長しないので光合成もまた活発には行われなくなる。
ところが、「ゴルフ場の樹木は徹底した管理によって過繁茂になることがないので、1年を通じて光合成に最適な状態を維持でき、その温暖化防止能力をフルに発揮できる。芝も毎年刈り取りを徹底しているし、常に葉が茂り、効率の高い表面積を維持できている」という。
日本国内にある約2600カ所のゴルフ場の総面積は約30万ヘクタールにもなる。神奈川県の面積が約24万ヘクタールなので、ゴルフ場の国内総面積は神奈川県1.2倍分ということになる。
縣名誉教授の試算では、この30万ヘクタールのゴルフ場の樹木と芝が排出する酸素の量は、1230万人が1年間に必要とする酸素量に匹敵するという。日本の人口の1割分を賄えるわけだ。
さらに、吸収する二酸化炭素量は、290万世帯が1年間に電力を消費することで排出する二酸化炭素量に匹敵する。「とかく農薬の使用が問題視されるが、ゴルフ場で農薬を使用する箇所は、全体の2パーセントくらいにすぎない。実はゴルフ場は環境問題に貢献している、ということを広く知ってもらいたい」という。
この研究結果には、自民党のゴルフ振興議員連盟(衛藤征士郎会長)も注目しており、「ゴルフの効用性を強く訴えていくことで、公務員の倫理規定上の禁止項目からゴルフを削除してもらうための運動につなげたい」という。
ゴルフ議連は5月24日に洞爺湖サミットの機運を盛り上げる、という趣旨でゴルフコンペを開催している。
「環境サミットとなる今回の洞爺湖サミット参加国の主要構成メンバーにもアピールをしていくという趣旨もあり、今後も様々な形でアピールをしていく」という。ゴルフがCO2削減に貢献しているというデータも、しっかり活用してもらいたいものだ。
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