19歳のルーキー、(ツェン・ヤニ)がマクドナルド全米女子プロ選手権を制し、メジャー史上2番目の年少チャンピオンに輝いた。「信じられません。メジャーに勝ったなんて。夢が叶いました」とニキビの残る童顔を綻ばせた。ツアーに彗星のように登場したを追った。
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19歳のフレッシュプロ、
オチョアの対抗馬になるか?
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同大会ではロレーナ・オチョアのメジャー3連勝なるか? さらには今季限りで現役引退を表明しているアニカ・ソレンスタムのメジャー通算11勝目なるか? に話題が集中したが、まさか台湾出身のツアールーキーが4打差を逆転して優勝するとは誰も予想していなかった。
だが一部のアメリカのマスコミの間では、「曽の優勝はあるかもしれない」と秘かに囁かれていたのも事実。新人ながらシーズン序盤ですでに、2位に2回入っている実績もさることながら、彼女にはジュニア時代から“大物キラー”の異名があったからだ。
台湾でトップジュニアの名を欲しいままにしていた10代前半から、曽は毎年試合が集中する夏休みのシーズンにアメリカに渡り、2カ月ほどを武者修行に当ててきた。もちろん将来「世界で活躍する」ことを見据えての行動である。そんななか、曽はある試合で全米に名を馳せることになる。
それは2004年、15歳のとき出場した全米女子アマパブリックリンクスで、当時飛ぶ鳥を落とす勢いだったミッシェル・ウィを破って勝利を飾ったこと。しかもその翌年、今度は全米女子オープン最年少出場で話題になったモーガン・プレッセルを下し、ノース&サウス女子アマ選手権を制したことで“”の名は一躍全国区となった。
「アマチュア時代の経緯があるから、彼女がいつ勝ってもおかしくないと思っていました」と言うのはゴルフ記者歴30年のベテラン、ロン・サイラックだ。
しかし興味深いのは曽自身もそう、つまり「いつ勝ってもおかしくない」と思っていたことだ。
大会前々日に同期で仲の良い上田桃子と一緒に練習ラウンドしたとき、「このコースなら4日間で12アンダーは出せそう」と言う上田に曽は「私は15アンダー出せると思う」と宣言している。
メジャーで通算15アンダーをマークすれば、それはすなわち優勝に直結する。「ひと目見たときから“ここは自分に合っている”と思った」と言う曽は最初から“参加すること”ではなく、“勝つこと”に意義を感じていた。
台湾勢のゴルフといえば、今年1月に行われたワールドカップ女子ゴルフで、日本と並んで3位に食い込んだことが記憶に新しい。曽はワールドカップメンバーではなかったが、先輩プロ、(ウェイ・ユンジェ)、洪沁慧(エイミー・ハン)の活躍に胸をときめかせた。
台湾勢はかつて男女ともワールドクラスの選手が大勢いた。陳清波、呂良煥、陳志忠はいずれもメジャーで優勝争いを経験しており、女子ではト阿玉、呉明月らが日本で何十勝も挙げている。
風の強い苛酷な環境で育った台湾の選手は技術とともに根性が備わっていたが、経済的な事情から国内にツアーが育たなかったこともあり、いつしかアジア勢ナンバー1の座を韓国に明け渡し、ゴルフ熱は衰退の一途を辿る。
しかしここに来て曽秀鳳らが積極的に若い世代を育て、日本やアメリカで活躍する台湾勢が再び増えてきた。
「私がメジャーに勝ったことで、10年前にパク・セリが韓国にゴルフブームを巻き起こしたのと同じ現象が(台湾で)起これば良いのですが」童顔のニューヒロインは満面の笑みでそう語った。
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