「今までのメジャーで最高の勝利だった」。先の全米オープンでプレーオフに持ち込んだ最終ホール、バーディパットを決め雄叫びを上げたタイガー・ウッズだが、試合中はひざの痛みで顔をしかめることもしばしば。そのタイガーが今季残り試合を欠場すると発表した。ひざの手術とリハビリのためだが、このケガについて探ってみた。
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全米オープンでは
痛みをおして優勝したウッズ
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タイガーは昨年、全英オープンに向け、自宅がある米国フロリダ・オーランドでランニング中に左ひざ前十字じん帯を断裂、その後も痛みをこらえてツアーに参加していた。
今年に入っても痛みを感じていたためマスターズ後の4月15日に関節鏡視下手術を行い、左ひざの軟骨を除去した。じん帯の再建手術はシーズン終了後のつもりだったが、全米オープンの負荷も加わり、大会終了後の6月24日直ちに再建手術に踏み切った。この手術は無事成功したが、このとき左足脛骨の疲労骨折も見つかっている。
左ひざの養生と左足脛骨のリハビリのため今季後半戦の出場は絶望的となったが、今度のケガはタイガーならではのものか。
ゴルフもよくやるという東京慈恵会医科大学の整形外科学講座の丸毛啓史教授はこう話す。「前十字じん帯断裂は、ランニング中に急激なストップアンドゴーやカッティング動作など過度なストレスが加わり起こる。これ自体痛くはないが、半月板が損傷するとかなりの痛みを感じる。タイガーの場合はこれにあたると思われます」
スウィングコーチのハンク・ヘイニーは、復帰まで6~8カ月かかると言うが、「じん帯断裂は1カ月もすれば普通に歩けます。半月板のほうは早ければ半年、慎重にリハビリしても1年ぐらい。タイガーの場合もほぼ順当か」(丸毛教授)
復帰については、後遺症はなく心配ないということだが、同時に公式サイトで明らかにされたのが左足脛骨の疲労骨折だ。
丸毛教授によれば、一般的にゴルファーが左足脛骨の疲労骨折を起こすことは考えにくいという。肋骨や鎖骨、背中ではしばしば起きるということだが、足の疲労骨折は起き得ないという。
それならなぜタイガーは疲労骨折を起こしたのか。
筑波大大学院で学び、自身でも最近助骨に疲労骨折を起こした江原義智プロはこう見る。
「タイガーの体の動きはとび抜けて速い。踏ん張っている左足への負荷はかなりのものがある。足がそれに耐えられなくなり、疲労骨折を起こしたのでは」
まさに超人タイガーならではの疲労骨折ともいえなくはないが、一般ゴルファーはどうか。
疲労骨折はゴルファーの場合、ゴルフ歴6カ月未満の人が7割以上を占め、中高年者も少なくない。とくに練習場での、過度の練習が引き起こし、熟練者でもスウィング改造をして起こすケースも多いという。
江原プロ自身のケースは、「スウィングを改造して、何日も集中してやった。面白くなり打ちすぎたようだ。違和感があったらすぐやめること」とやりすぎに警鐘を鳴らす。
前出の丸毛教授も「下手なスウィングだとなりやすい。正しいフォームを身に付けること。基礎体力を付け柔軟性の向上を図ること」と注意を促す。
タイガーとは比較にならないが、限界を超えた無理な練習は慎んだほうがよさそうだ。
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