深いラフに狭いフェアウェイ。USGAのコースセッティングというと、とにかくフェアウェイをキープして、パーオンさせてゆくというのが、これまでの常識だった。しかし、今年、全米オープンと全米女子オープンを終えて、そうしたUSGAのコースセッティングのポリシーが大きく変わっていたことが明らかになった。
新たな男女の全米オープンの特徴といえば、まず第1にコースのヤーデージが長いこと。第2に毎日ティグラウンドを変えたり、ティマークを動かして、変則的なセッティングにしていること。第3にドライバーで1オン可能なパー4があること。そして最後にグリーンが難しくなっていることがあげられるだろう。
コースのヤーデージが長くなっていることに対しては、「ロングヒッターというのも、プレーヤーの能力ひとつで、それに罰を加える必要はなく、ロングヒッターが有利であっても間違いではない」と語っていたのはUSGA競技委員のマイク・ディビス氏だが、
「確かに、男子のトーレ・パインズGC(7643ヤード・P71)も女子のインターラーケンCC(6789ヤード・P73)も、全米オープン史上最長のヤーデージだが、女子オープンの場合は、パーが73で、さほど長さを問題にする必要はないと思う。
(中略)
確かに、ラフは極端に深くしていないし、フェアウェイもまずまず広い。ただ、距離ということなら、むしろ、来年のサウコンバレーCCで開催される女子オープンは、今年より50ヤードほど短くなるが、パー71でプレーされるので、実質的な距離は長くなる」と、こうした傾向は、これからも続いていく模様だ。
実際、女子オープンで最終日にスコアを崩したポーラ・クリーマーは、「ラフはさほど深くない。問題はグリーンで、これほど常にストレートに打てないグリーンは初めて。とにかくピンの下にボールを置くことが重要となっている」と言い、
また、男子の全米オープンでは、「自分が思っていたようなプレーはできなかったが、コースセッティングは、これまでプレーした全米オープンの中で、最高のものだった」とフィル・ミケルソンが語っていたように、総じてロングヒッターには好評だったようだ。
ただ、過去の男女の全米オープンで、最長のヤーデージだったとはいえ、実質的には、公評されたヤーデージでプレーされたわけではない。毎日のようにティマークの位置が変わっていたからだ。
女子オープンでは、6789ヤードとされていたが、3日目などは実質6593ヤードと200ヤード近くも短くなっている。
その最大の理由は、1オン可能なパー4のホールを作っていたからだ。男子の全米オープンでは3日目435ヤードの14番ホールが269ヤードでプレー、女子オープンでは316ヤードの7番ホールが248ヤードでプレーされていた。
もちろん「(インターラーケンの)7番ホールは、左ドッグレッグで、1オンされるにはリスクも伴う」ということで、実際に1オン狙いのプレーヤーは、風の影響もあって少なかったが、これがナショナルオープンの特色となる可能性は十分にある。
加えて、ティマークの位置を毎日、大きく変えることによって、より多くのショットのバラエティをプレーヤーに要求するようになっている。
USGAによれば、コースセッティングの基本原則は2004年に決められ、05年の全米オープンから採用されていることだが、コースの改造などに時間がかかることから今年になって、それがようやく現実的に実行できるようになったということのようだ。
女子オープンで、これまでのナショナルオープンのイメージに縛られていたベテラン達が出遅れ、逆に若手が頑張ったのは、こうしたコースセッティングの大きな変化があったからだろう。
それにしても、この1オン可能なミドルホールや、ティマークの大幅な移動など、日本の競技などでも使えば、ちょっと面白くなるかもしれない。
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