米ツアーの賞金ランキングの1位と2位、タイガー・ウッズとケニー・ペリーが不参加だった全英オープン。このため、どんな試合になるかと懸念されたが、ふたを開けてみれば、グレッグ・ノーマンの活躍など予想外の“ハプニング”で注目を集め、全英史上でも、セントアンドリュースでの大会をを除けば、トップ3に入る20万人を超えるギャラリーを集める試合となった。激闘を制したパドレイグ・ハリントンの勝因に迫った。
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Wランキングは3位に上昇。
「まだまだ上をめざしたい」とハリントン
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今大会の主人公は、なんと言っても、コースと自然の猛威と、そして優勝したハリントンを除けば、ノーマンだろう。
「強風が吹くのを期待してはいたが、これほどの強風とは。もしグリーン上でこれ以上ボールが動くようなことがあれば、(風のために)プレーを中断していた。」とR&Aのチーフ・エクゼクティブのピーター・ドーソン氏が語っていたように、最悪ともいえるタフなコンディションだったのだ。
例えば300ヤードを飛ばすのが当たり前というプロたちでも、499ヤードの6番ホールでは、初日のティショットの平均で226ヤードしか飛んでいないのだ。ちなみに、このホールの初日の平均ストローク数は4.89。4日間このホールでは4.76とボギーが当たり前のホールとなっていたのだ。
そんななかで、すべてを味方にしたのが、ハリントンだ。本来ならディフェンディング・チャンピオンとして、注目を集めるところだが、手首の怪我もあって、優勝候補の圏外に。特に初日に74というスコアを出したことから、予選落ちという声もあった。
それが2日目、この日2オーバーというところから、15番544ヤードのパー5で、アゲンストの風のなかでバーディをとると、17番572ヤードのパー5、18番473ヤードパー4でフォローの風に乗せてイーグル、バーディと決めて、予選落ちの危機から一気に4位タイで予選を通過する奇跡を見せつけたのだ。
この15、17番では、最終日もバーディ、イーグルとたたみかけ優勝を不動のものにしたが、つまりは、コースと風を読み切り、味方につけていたとも言える。
一方、今年の全英オープンのもう1人の注目株は53歳のグレッグ・ノーマンだった。50歳超でメジャー優勝はメジャー最年長記録の快挙。
加えて再婚相手の元テニスのトッププロ、クリス・エバートがノーマンの応援についてコースに姿を見せていたことも手伝ってマスコミの話題を独り占めの勢いだった。
そのノーマンと最終日同じ組で回ったことが、ハリントンからプレッシャーを取り除いていた。
「18番ホールで彼に、一緒にプレーできたことに対して感謝の言葉を伝えたんだ。もし誰でも全英の最終組でラウンドするとしたら、ノーマンこそ完璧なパートナーだ」とハリントンが語ったように、ノーマンの活躍の陰で、本来ハリントンが受けるべき重圧とストレスから逃れることができ、自分のペースを保つことができた。
そうした意味で、今年の全英のもう一人の主人公ノーマンをも味方につけて、一気に全英2連覇の偉業を達成したと言えるのだ。
「自分は、ワールドランキングの6位だったが、この位置はどうしても納得できないものがあった。(今回の優勝で)3位になって少しは良くなったが、自分はまだプレーヤーとして上達し続けている」と語るハリントン。
彼にとっては、今回の優勝は、不測の事態などではなく、まだまだ上がある、まだまだメジャーでの優勝があるということを証明して見せたということだ。
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