8月22日朝、突然のニュースが飛び込んできた。ダイワ精工がクラブメーカー・フォーティーンを買収したという。フォーティーンといえば、ウェッジ、ドライバーを中心に上級者に人気のメーカー。一体何が起きたのか。背景を探った。
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人気のMT-28Jスペック。
従来通りフォーティーンからも発売される。
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ダイワ精工は、10月1日付でフォーティーンの発行済み全株式を取得し、子会社化することを8月21日の取締役会で決定し、同日に発表した。
ダイワ精工は、かつて『チームダイワ』など上級者向けのブランドも扱っていたが、現在は『オノフ』や『GⅢ』など主にアベレージゴルファーから中級者向けのブランドを展開している。
これに対して『フォーティーン』は、プロツアーで一世を風靡したウェッジをはじめ、とくに上級者層に浸透しているブランド。ダイワ精工が、フォーティーン側から買収を打診されたのは今年度に入ってからだが、両社のブランドが互いにない部分を補完し合う関係であることから、急速に話がまとまったようだ。
「当社として一番のメリットと感じているのは、フォーティーンのブランドイメージです。また、クラブ作りのノウハウも高く評価しており、これらが製品の付加価値向上につなげられると期待しています」(ゴルフ営業部営業推進課/坂口雅裕課長)とダイワ精工側は買収の成果を強調する。
「今のところ人事異動も考えておらず、販売チャネルも含め、これまでの独自経営を継続してもらうつもり」(坂口氏)ともいう。
フォーティーンの代表でもあり、設計家でもある竹林隆光氏、「最近のベンダー(下請け業者)は、経営にファンドが入ったことで品質よりも利益追求型になっている。そのなかで品質のいいクラブを作り続けるためには、会社の規模が大きいほうが発言権も強くなって有利です」。この意味では今回の買収はフォーティーンにとってメリット大でもある。
フォーティーンは、竹林氏が自分の思い通りのクラブを作りたいとして、81年に独立し、立ち上げた会社。現在の従業員数は33名で、平成19年8月期の売上高は22億4800万円、経常利益4億5800万円、純利益2億5200万円。
企業の収益性の高さを示す経常利益率は、製造業の平均が5パーセント前後といわれるなかで20.4パーセントに達するなど超優良企業といっていい。それをなぜ売りに出したのかと疑問は拭い切れない。
「フォーティーン、コンセプト、フォーティーンゴルフ(米国法人)の3社を見ていると、自分自身が設計に関わる時間がほとんどとれない。もういい歳(58歳)なので、最後に自分が一番得意とする分野でキャリアを終えたい」(竹林氏)
単刀直入な質問に対して、わかりやすい答えが返ってきた。竹林氏は、社長の座は退くものの、フォーティーンにとどまって設計に専念するとのこと。
フォーティーンのブランドはそのまま残り、会社もダイワの子会社にはなるが、存続。となると、竹林氏にとっては今回の買収劇は“おいしい”話だったともいえる。
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