ジュニア世代では互角に戦えても、プロになると世界に水を空けられてしまう日本。その原因はコースの差にあるともいわれている。そんななか小林浩美がツアーでセッティングしたコースに注目が集まっている。
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コースが人を育てる、そんな設定を、と小林
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米女子ツアー3年目の宮里藍がこう証言する。「日本ではアプローチショットが3種類くらい打てればまったく困らなかった。でもアメリカでは状況によってアプローチの引き出しを増やさないと上位を狙えません。球筋も、ドローでは絶対に寄せられないホールがあり、ドロー一辺倒ではだめ。スランプを経て、スウィングを変えなくてもフェードが打てるようになったのは、コースがそういう球筋を要求した結果だと思っています」
しかし、日本の女子ツアーのコースセッティングも変わりつつある。手腕を発揮しているのはアメリカで13シーズン過ごした小林浩美だ。その経験を買われ、2005年から「日本女子プロ選手権」を担当してきたが、今年は女子プロ協会の理事となり、他の試合のセッティングも手がけるようになった。
今年アメリカツアーを経験し、「ミヤギテレビ杯」(宮城・利府GC)に優勝した上田桃子は、小林のセッティングを高く評価した。
「ピンの位置が左右に振ってあって、ここに落とさないとダメというシビアさがありました。ということは、セカンドでそれなりのいいショットを打たないとチャンスはない。いいショットにはご褒美、ミスには罰、そういうフェアなセッティングの中で勝てたことが嬉しかった」
また、アンダーパーが3人という厳しい戦いとなった今年の「日本女子プロ選手権」(片山津GC白山C)でも選手から不平不満の声は聞こえてこなかった。初日80を叩いて予選落ちを喫した諸見里しのぶですら、「攻めがいがあるし、ミスにも納得できるコースでした。大叩きして普通だったらふてくされてしまうところなのに楽しかった」と振り返る。
小林が心がけているのは、デザイナーの意図を尊重すること。
「セッティングの仕事をすることになって、まず、コースデザイナーの本を徹底的に読みました。設計者の立場で各ホールを見て、どういうショットを打たせたいのかをつかむようにしています」(小林)
もう一つは選手の技量を引き出すセッティングとすること。「飛ぶ人がラフに入れてもそこから狙えるようなホールは不公平。要は結果がリーズナブルであること」(小林)
グリーンは速く、硬く、ラフは深くという傾向もあるが、全部をやたら難しくすればいいというわけでもないそうだ。
「コースによってレイアウトも芝の状態も違う。攻め方のバリエーションを多くしていきたい。強い人はどんなパターンでも勝てる。そういった意味でコースが人を育てるといえます」(小林)。
まだまだ試合は続く。こういう視点で試合を見ると、また、面白いかも
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