杉原輝雄は1997年に前立腺がん発覚以来、快復に時間がかかる外科的手術を拒否しホルモン療法を選択。治療を続けたが、今年春に闘病11年目にしてリンパ節への転移の可能性が出たことを公表した。その杉原に今度はイップスが襲う。パットの名人に直撃インタビューした。
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スムーズにヘッドを引けなくなった、と杉原
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――がん転移の状況は。
「3月にがんの2箇所への転移の可能性が告げられました。ここ数年ホルモン注射によってPSA値(前立腺がんの進行状況の目安の数値)は11~12くらいの数値で収まっていたが、去年の暮れに23に急上昇し、4月に26、9月は36、そして一番新しい10月には48まで上昇しています。数値が急激に上昇したので、今月末頃から『粒子療法』(放射線療法の一つ)を始めようと医者から提案されてます」
今年の杉原はもう一つ、ありがたくない異変に襲われている。9月の最終週のパナソニックオープンを前に、あのパッティングの名手がイップスになった。
――イップスはいつから?
「パナソニックオープンの1カ月くらい前から、ストロークがスムーズにできなくなった。自分では普通に打っているつもりが、インパクトでフェースが開いたり閉じたりし、1~2メートルでも球が右に左にバラける」
――初めての経験ですか。
「30年前にパッティングで悩んだ経験があります。バックスウィングが上がりにくくなり、片手打ちや逆ハンドでやったが効果がなかった。ある試合の朝の練習でベースボールグリップにしてみたら動くようになり、いきなり本番で試したらその試合でプレーオフまでいった。結果は負けたけど、その後は現在まで同じ握り方で、パットで悩んだことは無い」
――パナソニックでは長尺を使いましたね。
「一流選手がパターで悩み長尺パターを使うのを、『何が長尺や』と思って見ていたが自分がこの歳になって使うとは。イップス的な動きは出ずストロークもわりとスムーズに引くことができたが、慣れないので距離感をつかむのが難しく、なかなかパットが決まらなかった。その後、試合に出ていないので直ったかどうかはわかりません」
――今後は?
「自分自身の最終予定試合となるフェニックスは、検査の結果次第で出欠を決めることになる。でもまだまだ死ねません。体調を戻して、来季も現役として頑張る気持ちは変わりませんよ」
治療の効果があがり、来季も元気な杉原輝雄の姿が見られることを期待したい。
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