6月は各地区アマ選手権(全8地区)のシーズン。全国から続々と優勝者の名前が届いている。大学生や高校生らの優位が続くなか、今年は老若異色の存在が目立った。先週号のグラビアでも紹介した関東アマ優勝の伊藤誠道君(13歳、中学2年)と、中国アマを制した本誌でも連載を持つ44歳の田村尚之さんだ。とくに、田村さんは普通のサラリーマン。最年少と最年長の優勝者に迫った。
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44歳の超人・田村さん(左)と、まだ13歳の伊藤誠道くん(写真・KGA)、どこまで伸びる?
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まずは伊藤君だが、関東アマでこれまでの最年少優勝記録(15歳7カ月)を持っていた、伊藤勇気(日大4年)をプレーオフで下し、大会最年少記録の13歳9カ月で優勝。
さらに、その翌週には全日本パブリック選手権でも同じくプレーオフの末に制した。同選手権はこのところジュニアの優勝が続くが、それでも「今回の伊藤君が最年少記録であることは間違いないと思います」(日本パブリックゴルフ場事業協会事務局)
伊藤君は既に数多くのジュニアタイトルを持つほか、昨年は男子ツアーのキヤノンオープンにも出場。2日目に68の好スコアを出し、予選通過にあと1打にまで迫る健闘を見せた。
末恐ろしい中学生が、アマチュア界で本格的に頭角を現すことになった。
以前から伊藤君のプレーぶりを知るツアープロコーチの井上透氏は、彼について一言、「“強い”という印象の子ですね」と語る。
上手いとか、完成されているとかではなく、実戦の「強さ」が目に着いたという。もともと英才教育で育てられた選手だが、それに加え、先天的な“勝負強さ”も持ち合わせていたのだろうか。
なお、中部アマでは川村昌弘君が15歳11カ月(高1)のやはり最年少記録で優勝した。これは藤木三郎プロが持つ18歳の記録を36年ぶりに更新するものだった。
こうしてトップアマ競技にジュニアが次々と殴り込んできたなか、異彩を放つのが、中国アマ2連覇(通算5勝目)の44歳の田村さんだ。そのゴルフの内容については連載ページ「がんばらないからうまくなった。」を見ていただくとして、40代でトップアマの実力を堅持していることについて本人、そして周囲の声を聞いてみた。
まずは本人。「ゴルフのピークはまだまだ、です。確かにエンジンがかかり出すまで時間を要するようになりましたが、プレーの質が落ちたとは思いません。年齢のハンディですか? いえ、それよりも経験を重ねたことによる貯金の方が大きいと思ってやっています」と年齢をプラスの面でとらえている。
アマチュア界に詳しい日本ゴルフ協会広報委員会元参与の福島靖氏は「以前は、学生に負けてなるものかという強い気骨が感じられました。
でも、最近の言動を見ると、アマチュア界のリーダーとしての自覚と精神面のゆとりが、彼のゴルフを逞しくしているのかも知れませんね」と内面の充実ぶりを評する。
実際、田村さんもライバルとなる周囲の学生のゴルフを見ながら、「確かに強いが、その日のゴルフは、スタートしてみなければわからないという脆さも見てとれます。そこを補うゴルフを、僕も一緒になって学んでいきたいですね」と指導的見地からのコメントも聞かれた。
ところで、40代でトップの座に君臨というのは田村さん個人の資質なのだろうか? それとも、道具や指導法の進化で、今後も後継者は続くのだろうか?
先の井上コーチは「田村さんは特別な存在です。もともとプロになっても活躍できたくらいの方ですですから」と語る。
残念ながら、“中年の星”がこれからも続出する、とはならないかもしれない。
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