アマチュアでプロの試合に優勝。初代現役高校生プロゴルファーとなり20歳で世界へ飛び出した宮里藍。何度もゴルフ界のヒロインとして小誌の表紙を飾ってくれた宮里が目下米ツアーで韓国のシン・ジエに次いで賞金ランク2位につけ、岡本綾子以来19年ぶりにLPGAツアー史上2人目の日本人賞金女王を狙えるところまでやってきている。そんな彼女に聞いた、今現在の心境と目標とは。
「日本のシードを確定させることが最優先」として、これまでは賞金女王についてはほとんど言及してこなかった宮里だが、先のSANKYOレディースで国内ツアー3年ぶりの優勝を飾ってシード権を確保。それによって心境に何らかの変化があったはず。
「こういう勝ち方もあるんだなぁ、と思いました。嬉しかったですけど、ちょっと拍子抜けしました(笑)」と、まずは、SANKYOで首位を走っていたジョン・ミジョンが突如崩れ、上がり2ホール連続ダブルボギーで棚ぼた勝利が転がり込んできたことにふれて、
「でも改めて、自分に期待せず、目の前のショットに集中して自分のゴルフをすれば勝てるんだ、ということがわかりました。ベストを尽くすことがいかに大事か。それに気付いて、良い意味で気持ちが引き締っています」。勝って奢らず、いかにも宮里らしい優等生的発言である。
今後賞金ランクに加算される米LPGAツアーの試合は日本で行われるミズノクラシックと、メキシコで開催されるロレーナ・オチョア招待、そして最終戦のLPGAツアー選手権の3戦。そのうち1つでも勝てばマネークイーンに大きく近づく。
「勝ったことが良いモチベーションになっているのは確かです。賞金女王になれるかどうかは誰にもわからないし、自分には他の人のプレーをコントロールすることはできません。私がいまできるのは目の前の1打に集中することだけです」
1年を通して宮里が自らのテーマに掲げてきたのが「目の前の1打に集中する」ということ。「バーディが欲しい」「これを入れたい」と結果を求めるのではなく「これはこういうストロークで、ここを狙って打つ」と決めたら、何があってもその意志を貫く。これがいまの“宮里スタイル”。結果ではなくプロセスを重視することで逆にバーディ数が増え、それに比例して賞金ランクもアップしてきた。
「考えてみるとエビアンも、SANKYOも、自分に一番期待していなかった週に勝てたような気がします」と無欲の勝利を強調する。だが残り試合が少なくなったいま、嫌が上にも“勝ち”を意識しないわけにはいかないのでは?
「そんなことはないと思います。勝てるかどうかわからないけれど、結果うんぬんじゃなく、1打に集中することだけはできると思っています。逆の言い方をすれば“それしかできない”と言っても良いかもしれません。エビアンのウィニングパットも、あの重圧のなかでちゃんとストロークに集中して、やるべきことができました。だから残りの試合でも1打に重みを置いて、いかに丁寧にプレーできるかを考えていきたいと思っています。自分に期待し過ぎず、地に足をつけてプレーしたい!」
最新のワールドランキングではSANKYOに勝ったことで1つ順位が上がって9位。そのことについて尋ねると「1つのバロメーターなので励みにはなります。でも勝たないと上がれないので、厳しいものだとも思っています」とした上で、これまで口にしたことがなかったセリフが飛び出した。
「ゆくゆくはワールドランクトップに立ちたいという気持ちはあります」
本人の口からはっきり世界ナンバー1を目指すという言葉が出たのは初めてではないだろうか。これは間違いなく確かな自信の表れ。世界の頂点に立つプロセスの1つとしての賞金女王……。そして宮里はすでに賞金女王の先にある自分を見据えているのかもしれない。
|