日本ゴルフツアー選手権で、芹澤信雄を師と仰ぐ宮本勝昌が優勝、同門の藤田寛之が2位に食い込んだ。賞金ランクも藤田が1位、宮本が5位。なぜ彼らは強いのか? 軍団の長・芹澤を直撃した。
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40歳の藤田と38歳の宮本。アラフォーが今年のツアーを席巻する
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「宮本はオフに調子がよかったんですが、開幕前に崩して『今年はシードも危ないかも』と、悩んだ時期がありました。でも、そういう危機感を持つってことは、真剣に自分と向き合っている証拠です。ツアー選手権の難しいコンディションでも勝てたことは、彼にとってとても大きかったと思います」
と語る師匠の芹澤信雄。そのうえで宮本には「お前は1勝するとホッとするタイプ。調子に乗らず気を引き締めてやれよ」と釘をさすことも忘れない。
では、今季絶好調の藤田に関してはどう思っているのだろう。
「藤田は目標をきちっと持って、それに向かって努力するタイプ。気持ちが強いぶん、放っておいても大丈夫なタイプです」
そう思われている藤田だが、『藤田寛之というゴルファーは芹澤信雄がつくった』と、藤田自身が言い切るほど、芹澤イズムが骨の髄まで沁みている。
2人の好調の理由の1つに上井邦浩(現在賞金ランク24位)の存在も見逃せない。
「彼は体力があるからトレーニングも半端じゃない。それに刺激されて宮本や藤田もガンガンやる」(芹澤)。若手の加入が先輩たちの闘争本能に火をつけた。
しかも宮本には、藤田への対抗心があるという。
「宮本は『藤田プロがツアー9勝。それに早く追いつきたい』と公言しているほどで、今回ツアー選手権で8勝目。持つべきものはライバルですね」(芹澤)
では、技術面については何を伝えているか。チーム芹澤の一員である遠藤正人プロは、
「昔、芹澤プロと一緒にラウンドしていた研修生が途中のホールでチーピンを打った瞬間、『帰りな』といって途中でやめさせたという伝説があります」という。
それを芹澤に聞いてみると、
「チーピンが出たら即OB。もうその瞬間から恐くて振れなくなってゴルフにならない。だから、チーピン打っているようじゃコースに出ても意味なないんです」
と言い切る。たしかに、芹澤はもちろん、藤田、宮本ともに持ち球はフェードだ。
「僕はエリートじゃなかったから、昔は皆に相手にされなかった。で、少しは名前が売れたら手のひらを返したみたいに周りが変わった。その経験があるから、どんなに強くなっても驕るなよ、といっています」(芹澤)
技術以外にも勝って驕らない心構えを説く“芹澤イズム”を継承する2人に注目だ。
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