アクサレディスで初優勝した堀奈津佳(20)が特別規則を誤認してプレーした“ルール問題”を、LPGAと選手間で総括しようと選手ミーティングで話し合いがもたれた。
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ミーティング委員長の吉田弓美子も対応に追われた
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問題をおさらいすると……。同大会では雨の影響でコースの状態が荒れているため、初日、2日目にLPGA競技委員会より追加特別競技規則のローカルルールが採用されていた。『スルーザグリーンにある球は罰なしに拾い上げて、拭くことが出来る。球を拾い上げる前に、プレーヤーはその位置をマークしなければならない。(マークしなかった場合は1打の罰)』という内容だ。
これを見た(聞いた)選手のほとんどはボールを拭いた後、元の位置にボールを置く(リプレース)処置をして、プレーしていた。マークするというのはそういう意味だと思ったのだろうと推測される。ところが優勝した堀は「初日6インチプレースで5、6回プレーした」と、2日目終了目に競技委員会に自己申告。「プリファードライは6インチだと思い込んでいた」とも。
優勝後のインタビューで「プリファードライ」という言葉が突然、堀の口から飛び出している。なぜなら堀は初日スタートホールで、競技委員見習いに「今日はプリファードライ」と説明を受けたという(競技委員は否定)。いうまでもなくプリファードライとは直訳すると「好きにライを選べること」で、「リプレース」ではない。「ゴルフ規則」では1クラブ以内などにボールを動かせるローカルルールと説明されている。堀は昨年、プリファードライを適用した試合(その時は6インチプレース)に出場していたので、その時と同じ処置をしたというのだ。
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頭を下げたLPGA
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追加特別競技規則を読んだ堀に、競技委員がプリファードライと告げたとすれば、それもまた問題であろう。
ともかく堀は6インチプレースをしたのだから、それが本当なら「誤所からのプレー」の罰則か、「過少申告」と失格になるところだった。
ところがその特別追加競技規則にも不備があったと裁定はくつがえされる。「リプレース」という文言はどこにも書かれていなかったからで競技委員会で協議の結果、「ゴルフ裁定集34.3」により、堀の誤所からのプレーは無罰となったわけだ。その裁定の要旨は「委員会がローカルルールや競技の条件のいずれかについて間違った情報を与えた場合、その情報に基づいて行った行為に対する罰を免除されるべき」というものだ。ならば堀がプリファードライと告げられたことも「間違った情報」となろう。その意味では堀も被害者の可能性もある。やはり責められるべきはLPGAだろう。
選手のなかには口に出してはいわないものの、堀の優勝に不満を持つ者が多い。事実、「6インチプレースでは2、3ストロークは違ってくる」という意見もあるほど。そこでLPGAと選手の間で話し合いをして、わだかまりを解いておこうとした次第だ。
小林浩美会長は「誤解を招く不備の文書で申し訳ない」と選手に謝罪。その上で「再発防止のために検討している」として、文書作成に関わった関係者の処分も名言した。堀や同伴競技者は事実関係を説明し、事態は表面的には一応収束したかのように、選手ミーティングは終わった。
全英、全米オープンのレフェリーを長年つとめた川田太三氏は提言する。「ローカルルールを書くときは、それこそ細心の注意を払ってどこにも遺漏なきかを検討しきらなければなりません。大体、ルール条項は保険契約の条件項目と同じで見ようとしないもの。だからこそローカルルールの主なものを要領よくまとめた“ハードカード”(今回の特別ルールは記載されていない)を配布しているわけで、何度もじっくり見るくらいの配慮は選手にも必要でしょう。今度の件で競技委員がすぐに謝罪したのはいい処置だったと思います」
ミーティング委員長の吉田弓美子は「1人ひとりがマナーやルールを学んで一丸となってやっていきたい」
堀や堀の行為を見逃した同伴競技者も反省すべきだが、“泥を拭いていい”ルールで、“泥を塗った”協会は、反省だけではすまされない。
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