アダム・スコットの優勝で幕を閉じた今年のマスターズ。タイガー・ウッズのあわや失格、2罰打騒動は週刊ゴルフダイジェスト誌面でも報じられているが、ウォーターハザードからの救済という、われわれにも身近な問題なだけに、いま一度、考えてみよう。
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タイガーは(A)か(B)か(C)を選べたが……
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この問題が顕在化したのにはいくつかの理由があった。ウォーターハザードの救済措置(今回の場合は図版のA~Cの3つ)のなかから「元の位置のできる限り近いところにドロップ」を選んだはずのタイガー。しかし、ドロップ後、競技委員の間では「ちょっと遠いのでは」という意見があったという。さらにタイガー自身が「2歩(2ヤード)下がった」とコメント。おまけにTV視聴者からの通報があり、委員会が3日目朝に対応を協議し、2罰打となった。しかし、じつは問題になった15番には競技委員もいて、タイガーは処置について相談したのだという。ただ、その競技委員はタイガーのドロップ地点には立ち会っていない。
全米、全英オープンでレフェリーを何度もつとめた川田太三氏はいう。「実はマスターズでは競技委員はプレーヤーに同行しません。1ホールに2人ほどの固定制なのです。全英では1組に4人、全米では3人が選手に帯同して、問題が起きたらその場で裁定する権限が与えられているので、今回のようなケースは起きません。15番では競技委員はドロップエリアにいたそうですが、タイガーのドロップには立ち会ってはいない。その競技委員にしても、ルールに精通している人ばかりでなく、毎日人も変わるといいます。それにTVの影響でしょうか、なるだけ選手とキャデイが映る状態にしておく雰囲気があるとも聞きます。こうした競技委員のシステムの違いが、今回の問題を引き起こしたのだと思います。競技委員がドロップ場所を指導すれば問題ないのですから」
タイガーは、3日目終了後、「明らかにハリントンルールだと思う」とコメント。「ハリントンルール」とは、かつてパドレイグ・ハリントンがTV視聴者からの通報で失格となったことを機会につくられた規則。TV中継に映る有名選手だけが通報されることは不公平だとの論争もあり、「選手が違反に気づかずスコアカードを提出した場合、自動的に失格にはならない」との新ルール「ゴルフ規則33.7」が2011年にできた。これが今回も当てはまると、タイガーは自らのミスは認めながらも弁明した。
「処分が甘い」などの批判もあがったが、タイガーがいないメジャーは画竜点睛を欠くのも事実。お茶の間としては“大岡裁き”と思うべきか。
【ルールMEMO】
規則26-1ウオーターハザードに入った球の救済球がウオーターハザード内に見つかったか、あるいは見つかっていない球がウオーターハザードの中にあることが分かっているか、ほぼ確実な場合、プレーヤーは1打の罰のもとに次の中から1つを選んで処置することができる。(A)初めの球を最後にプレーした所のできるだけ近くで球をプレーする。(C)ホールと、初めの球がウオーターハザードの限界を最後に横切った地点とを結んだ線上で、そのウオーターハザードの後方に、球をドロップ。この場合には、ウオーターハザードの後方であればいくら離れても距離に制限はない。(一部抜粋)
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