コースの特徴を生かしながら、選手の最大スキル(心技体)を引き出そうというのが、17日から始まる今年のナショナルオープンのコンセプトだ。
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舞台は茨城GC東コース
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舞台である茨城GC東コースは全体にフラットで、フェアウェイも広い。そこで、これまでの日本オープンのように、フェアウェイの幅をぎりぎり狭くするというようなセッティングはしない、という。それではコースの"利点"をそぐようなバランスの悪いものになってしまうからだ。
「以前は選手をいじめるようなセッティングだったこともあります。ラフに入ったら、ただ脱出するだけ、というような具合。しかしそれでは、見ている側はつまらない。選手のスキルの最高パフォーマンスならばグリーンに乗るかも知れない……、そんな状況になれば、エキサイティングなプレーを見せられると思うのです。だからラフの長さは90ミリ、グリーン周りは100ミリ程度にします。あまりに長すぎると、ギャラリーに踏みつけられたとき、逆に打ちやすくなって不公平になったりしますから。
またフェアウェイ幅は狭いホールで22~23ヤード、広いパー5では25ヤード程度。距離の変更はなく、パー5の1番をパー4にすることぐらいです」とは、主催するJGA(日本ゴルフ協会)のチーフコースセッティングディレクター・佐野文範氏。
フェアウェイ幅で具体的にいうと、いちばん広いところで15番パー5で27ヤード。9番もそれに近い。狭いホールの注目は14番、パー4。フェアウェイ幅を14うヤードほどにして、短いホールだけにプレッシャーをかける趣向だ。
次はグリーン──。実はこの東コース、3年前、開場50周年を記念して1グリーンに改造している。そのおりにベント芝の種類をペンクロスから007(ダブルオーセブン)種、第4世代といわれる芝に張り替えている。少々専門的になるが、欧米では芝の品種改良が盛ん。ベントは元々寒冷地の芝であるために暑さに耐性が少ない。それを進化させようと各芝メーカーが鎬しのぎをけずり、007などは第4世代の新種。
「007はコンディションを非常に"作り"やすいといえますね。今年、西コースで女子のワールドレディスを従来の芝(ペンクロス)でやりましたが、それと比較して、今回のコンディション作りのやさしさが実感されました。今年の暑さにもへこたれませんでしたし、また短く刈っても平気ですしね。最低でも『11フィートの速さを』とJGAから要望されていますが、順調に仕上がっています。007はメジャーでの初見参となります。
またコンパクション(グリーンの硬さ)も23~24くらい確保できるでしょう」と茨城GC・グリーンキーパーの富永豊氏は語る。
「あまりに速くすると、グリーン面の傾斜エリアにカップを切れなくなり、ピン位置が限られてしまいます。それでは攻め方のバリエーションが少なくなって、選手の技術を引き出せなくなります」(前出・佐野氏)
グリーンの速さでいえば、トーナメントでは練習グリーンも含めた"19"のホールの速さを合わせることが重要になる。つまり何ホールか非常に速いグリーンを仕上げても、それが全部のホールで均質化していなければ何にもならない。この難しい課題に富永氏は自信を見せる。
佐野氏は「最大で8アンダーくらいが優勝スコア」と予想している。このスコアが、守るだけでも、攻めるだけでもダメという、一番エキサイティングな試合展開になるからだ。
果たして、今年のナショナルオープンを誰が制するのか……。
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