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内面へ、より深く 〜復活を期す3年目の宮里藍〜

なんでこうなったのか分からない

07年中盤からの不調について、シーズン終了後の宮里藍は多くの言葉を残してきた。6月の全米女子オープンの頃から足に怪我を抱えていたこと。7月のHSBCマッチプレー選手権で優勝争いの末2位となり、そこから気持ちだけが先走るようになったこと。8月のステートファームクラシックでは、プロ転向後初となる途中棄権に追い込まれる程、心に痛手を負ったこと。わずかな狂いが少しずつ積み重なって、そのズレに気付いた時には何が原因か分からない程パニックになっていたこと。

昨年12月、日本で会見を行った宮里藍。当時の苦悩を笑顔を交えながら語っていた
昨年12月、日本で会見を行った宮里藍。当時の苦悩を笑顔を交えながら語っていた

日本に一時帰国した12月、宮里は久しぶりにマスコミの前に姿を見せた。「直後は悪いことは思い出したくないとか意識して、なかなか自分にフィードバックも出来ずにいたけれど、ようやくそういうことも考えられて、今は前に進める状態になっています」。その表情には、複雑に絡み合ったパズルをようやく分解して眺めることが出来るようになったという、ほのかな安堵感が感じられた。

今度はそのパズルを正しく組み直せば良いのだが、ことはそう簡単には運ばない。不調に陥る前と今とで大きく変わってしまったこと。それは、宮里本人にしか知りえない大切な“フィーリング”を失ってしまったことだ。

フィーリングを戻すのが先

昨年の「ミズノクラシック」では隣のコースに打ち込む場面も。過去には見られなかった光景だ
昨年の「ミズノクラシック」では隣のコースに打ち込む場面も。過去には見られなかった光景だ

不調に陥った当初は、メカニックとフィーリングのどちらを優先すべきか揺れていた。「ミズノ(クラシック)の時は、すごくスイングを直していたのですが、その週は全然上手くいかなくて…」。そして、決断した。「今は自分のフィーリングを早く戻して、自信を作っていった方が近道だと思っています」。正月早々、拠点のあるロスに戻って調整に入った宮里は、フィーリング重視の方針でスイングチェックはほとんど行わない予定だという。

“フィーリング”とは、「ボールを曲げる練習であったり、フェースがどう動いているかとかを、体で感じられるようになること」だと、宮里は言う。「今まではまっすぐ出す練習しかしていなくて、曲がりだすとどうして良いか分からなかったけれど、逆に曲げる練習をすることでイメージが良く出てくるかなと思っています」。きっかけは何にせよ、宮里は未知の領域へと歩を進めつつある。

父だけじゃ解決できない

過去の不調は比較的簡単に原因が特定できた。それは自分でも見つけられたし、分からない時はいつもコーチである父・優氏が的確なアドバイスを与えてくれた。宮里はチェックポイントを意識した練習をし、それをものにして不調を乗り越えてきた。

しかし、今ぶつかっている壁は“フィーリング”という心の内側にあるものだ。「お父さんだけでは解決できない問題が一杯あった」と宮里は振り返る。それは、誰かが答えを与えてくれるものではなく、宮里本人が自分自身と向き合って克服していかないといけない種類のものだ。

今季は、国内外でこんな“藍ちゃんスマイル”が多くみられることに期待したい!
今季は、国内外でこんな“藍ちゃんスマイル”が多くみられることに期待したい!

ただ、その手助けをしてくれる人はいる。アニカ・ソレンスタムを輩出したスウェーデンナショナルチームのコーチ、ピア・ニールソンとリン・マリオット。昨季、新たに契約を結んだメンタルコーチで、宮里のサインに書かれている「Ai54」という数字は、彼女らの提唱するビジョン54(全ホールでバーディを獲るというプラス思考のイメージ力を重視したメソッド)に由来している。

もっと日本でプレーしたい!

自分自身と向き合う中で、宮里の視野は広がっている。「私はこれだけ沢山の人に応援して貰っている!」久しぶりに日本で戦ったミズノクラシックでは、自身との葛藤に明け暮れ、忘れそうになっていたことを思い出した。「2008年はもっと日本でプレーしても良いかなと思っています」。その実現は、体調や成績を見ながら決めるというものの、ファンの応援が自分の戦う力になることを改めて実感した宮里の中で、物事のプライオリティは少しずつ変わり始めた。

一方で、今季はゴルフ以外の趣味も広げたいという宮里。「プレーしている時と、休んでいる時のメリハリをもっとつけたい。そうする事で、ハングリー精神も出てくると思います」。発想の根幹には、リフレッシュが上手く出来ていなかった昨年の反省がある。生活がゴルフ一辺倒になってしまうと、どうしても気分転換が上手くいかない。そんな時、夢中になれる趣味があると切り替えは容易になる。「ヨガを習ってみたいと思っているんです」。宮里は目を輝かる。「でも、結局はゴルフに繋がっているんですけどね(笑)」。

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