イタリア車に乗るといつも感動することがある。それは“音”。
エンジン音も排気音もしっかりとデザインされている。いまでこそ、日本でも『音をデザインする』といったフレーズはクリエイティブな世界では使われているが、アルファ ロメオに代表されるイタリア車は、ずっと前からそれを行ってきた。
もしかしたらそれは土地柄と関係しているのかもしれない。
アルファ ロメオの故郷ミラノとバイオリンの名器として知られるストラディバリウスのクレモナはとても近い。ともにアルプスの麓を臨む北イタリアに位置する。ストラディバリウスの生みの親アントニオ?ストラディバリはきっとそんな環境で生まれ育ったのだろう。
北イタリアは音にこだわるエリアと言えそうだ。
そんな背景からかアルファ ロメオの音はとても気持ちがいい。
回転数を上げるとリニアに響き渡るエキゾーストノートは、まるで管楽器のようだ。現在、彼らはジュリエッタとミト用に1.4リッター直4ターボのマルチエアエンジンをラインナップするが、性能はもちろん、いい音を奏でる。スタイリングばかりかエンジンサウンドやエキゾーストノートまでクルマに見合ったものをつくりこんでいる。
それに貢献しているのがマルチエアテクノロジーといえそうだ。
吸気バルブの開閉タイミングとリフト量を電子制御式油圧システムでコントロールするシステムである。
目的はアクセルペダルの操作に対して適切なエンジンパワーを出すためで、高回転時は吸気バルブを全開にすることで高出力を発揮し、低回転の低負荷時には燃費をよくしたり排出ガスを低減したりする。排ガスのクリーン化は日本もそうだがヨーロッパのメーカーはより一層積極的に取り組んでいる課題となる。
で、このエンジンが前述したように気持ちのいいサウンドを奏でる。エキゾーストノートと合わせじつにレーシーで壮快だ。
アルファ ロメオはかつてグランプリレース(今日のF1)で勝利し続けたメーカー。そんな足跡もここに垣間みられる。
最近はドイツ系メーカーも音に着目しているが、その先駆者はやはりイタリアンブランドに他ならない。
ということで、Alfa Romeo D.N.A.システムを「Dynamic」モードのポジションにし、自慢のエンジンを回しながらゴルフ場へと向かう。
すると、響き渡るエキゾーストノートに伴い自分のテンションもいつのまにか攻めモードに。スタートホールのビッグドライブを頭に描きながら、ジュリエッタを操る。いやはや完璧なシナリオの出来上がりだ。
1964年生まれ、東京都出身。広告会社に勤務の後、自動車雑誌「カー・イー・エックス」(世界文化社)副編集長、同「アメリカンSUV」(エイ出版社)編集長などを経て、フリーランスとなる。その後、副編集長として男性雑誌「レオン」(主婦と生活社)の編集に従事。現在は、自動車評論家として、主に自動車関連の雑誌やウェブサイトに寄稿するなどしている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カーオブザイヤー(2008-2009)選考委員。