クルマ好きのゴルファー以外の方にはあまり興味がないかもしれないが、先日“ラフェスタ•ミッレミリア2014”というイベントに参加した。クラシックカーに乗って4日間日本中を走りまわる公道ラリーである。
そもそもはイタリアで行われていた過酷な公道レースであった。スタートは1927年。アルファ ロメオはもちろん、ベントレーやブガッティ、マセラティ、メルセデス•ベンツなどのワークスカーがしのぎを削っていた。ただ、不幸な事故で1957年にレースは終了。1977年からはクラシックカーを走らす、タイムラリーとして復活している。
参加したのはその日本版。明治神宮を起点に越後湯沢、軽井沢、箱根を経由してもどってくる。全行程およそ1300kmのロングドライブだ。
そこで、じつに様々なクラシックカーが見られるのだが、その中において初代アルファ ロメオのジュリエッタをなんと7台も目にした。正確なことは言えないが、エントリーしたモデルの中で一番か二番の多さに違いない。元レーシングドライバーとしても知られるマッチこと近藤真彦もそのステアリングを握っていた。
そしてその背景には、当時のジュリエッタの活躍がある。1956年、ジュリエッタ•スパイダーヴェローチェがそこでのすばらしい走りで観客を魅了した事実があるからだ……。
いまも初代ジュリエッタが人気なのは、そんなストーリーがあるからに違いない。この名前にはベローナを舞台にしたシェイクスピアの戯曲のイメージが付いて回るが、レースシーンで語られる逸話もまたいくらでもある。
先日までアルファ ロメオの輸入販売元、フィアット クライスラー ジャパンが行っていた、3日間のモニターキャンペーンの中で、「あなたも特別な3日間のストーリーをつくってみませんか?」と謳っていたのは、そんなことと関係するからかもしれない。ジュリエッタにいくつものストーリーがあるように、これからも多くのストーリーが生まれる予感がする。
個人的には、そんな機会に是非ゴルフ場へ乗って行ってもらいたい。スポーツマインド溢れる走りに、身も心も覚醒され、すばらしい朝一ショットが飛び出すであろう。
その感覚は……、言葉で表現する前にまずは実感してもらえると嬉しい。どんな形容詞を使っても伝えにくいものがある。
事実、今回のミッレミリアでアバルトに乗っているオーナーと立ち話したところ、普段の足は現行型ジュリエッタと言っていた。だが、その理由を説明するのに、彼はかなり苦労していた。イタリア車をよく知る者として、ジュリエッタの楽しい走りをより精緻に伝えたかったようである。
ジュリエッタの人気が高いのは走りだけでなく、デザインも優れているのは言わずもがなだ。クラシックカーラリーで初代ジュリエッタが多いのはそんな理由も当然関係する。いくらレースシーンで活躍しても、美しくなければこれほど多くの人が所有するまでの意欲はわかない。
だが、初代も現行型もジュリエッタはそれを成立させている。つまり、いまも昔もアルファ ロメオのデザインは秀逸であり、誰もが“カッコイイ”と思わせるナニかがあるのだ。もちろん、デザインには好き嫌いがあるので、万人向けというのは難しい。それでも、現行型ジュリエッタを眺めていれば、妖艶で美しく思えるのは容易いであろう。
その意味からもスタイリッシュなゴルファーにはこのクルマをオススメしたい。ゴルフ場のエントランスで、他のクルマとはひと味違う雰囲気を醸し出せる。高性能ギアをセンスのいいバッグにつめ、シュッとしたウエアで整えたら、あとはジュリエッタに乗り込むだけ。スマートスタイルのゴルファーの出来上がりである。
1964年生まれ、東京都出身。広告会社に勤務の後、自動車雑誌「カー・イー・エックス」(世界文化社)副編集長、同「アメリカンSUV」(エイ出版社)編集長などを経て、フリーランスとなる。その後、副編集長として男性雑誌「レオン」(主婦と生活社)の編集に従事。現在は、自動車評論家として、主に自動車関連の雑誌やウェブサイトに寄稿するなどしている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カーオブザイヤー(2008-2009)選考委員。