No.422 『緩みを誘うだけの練習』
11/15 更新
1メートルのアプローチ練習を続けたが・・・
冬は練習に行くのもコースに行くのも億劫で、部屋でアプローチの練習を繰り返しました。クッションに向かっての1メートルのアプローチ練習です。桜も咲いて、コースに出て自信を持ってアプローチに臨んだのですが、ミスの連発。その練習が身についていなかったのです。1メートルのアプローチの正しい練習と意識の持ち方を教えてください。
(福島県・43歳)
アプローチは5メートルが最短です!
貴兄の考えと行動に間違いひとつあるようだ。それは1メートルの距離のアプローチ練習である。
ショート、ミドル、ロングホールを絡み合わせた18ホールのコース、グリーンの端5メートル以内にピン切る事はない。5メートルとは旗竿2本の距離と思って頂きたいが、旗の立つピン位置は常にグリーンエッジから5メートルの距離を保つものであり、余程の理由ない限り5メートルより短い位置に旗立つ事はないと思う。
となれば5メートル以内のアプローチは理屈から申しても、へ理屈で申しても、存在しないとゆう事になるであろう。球ひとつの距離から5メートルまではパッティングの領域である。アプローチ技術は5メートルを最短の距離とし、認識次第では300ヤードを最長の距離とするものでしょう。300ヤードのアプローチとなれば漫画の世界の話と思うが、登場人物に「300ヤードのアプローチか、見事寄せてやろう」とでも呟かせてドライバーショット放たせるのも面白い。
事の正しさ、事の通り様を問う時、へ理屈論で追ってみりゃいい。へ理屈論が役に立つのはこの時ぐらいのものだろうが、漫画の世界ではへ理屈論が漫画の隠し味を作ってくれるものじゃある。へ理屈論は漫画の隠し味、時に返し味となって、へ理屈述べる登場人物、大いに役立つものです。味作りには素材の味に隠し味、そして返し味は要りましょう。
私の父は和菓子職人だったが、素材の味と隠し味は修行7年で出せるが、返し味出すには21年かかると言っていた。返し味、出せないようじゃ職人とは言えん、とも言っていた。私のゴルフ歴33年、物書き歴20年、素材の味も隠し味も返し味も見えちゃいない。焦ったって急いだって叫んだって得られるものでもなさそうでだし、日々さり気なくと想いて生きて行く所存。
父は、生きて20年で素材の味、それより生きて20年で隠し味、それより生きて20年、60歳になった時に人間の返し味出て来るかも知れんな、とも言った。父は49歳の時、脳溢血で逝った。60歳生きた後、返しの味出すにはまだまだ遠い時の死だった。私は55歳と6カ月。あと4年と6カ月。遠いと思う。
へ理屈論を滔々と述べる御仁をたまに見かける。アンタネ、漫画の世界の住人だネ。この場では周囲の迷惑になってるよ、と思う事がある。当の本人、嫌われ迷惑がられている事に気づいちゃいない。へ理屈論が現在を改善し、未来を作る事はないと思う。へ理屈論は口先の通り様を良くするだけだ。評論家、へ理屈を述べなくなったら一人前と申すが、へ理屈述べて成功した人はいないはず。へ理屈は事の核心にたどり着ける力は持っていない。
私は多くのゴルファーの方と出会って来たが、へ理屈申す方にハンディ6以上の腕持つ方はいなかった。へ理屈は腕を殺す。才能と努力を殺す。そして向上心を殺す。
300ヤードのアプローチとゆう発想はへ理屈論から飛び出したものなれど、漫画じゃ使える。ただし、現実的じゃない。現実の話だと50メートルまでがアプローチ距離でしょう。
貴兄は1メートルのアプローチ練習をひと冬為した。貴兄は緩みを覚えた。1メートル、強いインパクトは必要ない。1メートルは緩みを与えるだけ。合わせを覚えるだけの距離である。練習とはゴルフの風ある場での練習が最適。部屋の中、風はなかろう。空調の風はゴルフの風じゃない。
研修生時代、台風の日、鹿沼CCの支配人に「ゴルフの風が吹いてるな。いい風だ。アプローチ練習して来い」と命ぜられた。樹木の葉が飛び、小枝飛ぶ中でアプローチ練習始めた。南コース9番グリーンでした。始めれば面白い。飛んできた枝が背中に当たって痛い想い少ししたが、あの時、私はアプローチのインパクトを覚えたと思っています。台風の風がインパクトを作ってくれた。台風はゴルフの風じゃあった。
来年の冬、貴兄は想定5メートルを打て。1メートルは緩み、妥協を覚える距離だ。パッティングは違う。1メートルは勇気、確信、信念、忍耐、根気を与えてくれる距離となる。1メートルを打ちたいのであればパッティング。アプローチの1メートルは存在しない距離。貴兄の考えにへ理屈はなさそうだった。だから素直に述べさせてもらった。
貴兄は間違っていた。1メートルの空中距離と4メートルの転がりのアプローチはあっても1メートルのアプローチはない。この論、へ理屈ではなく、正統の論です。
この「野性塾スペシャル版」は週刊GDの過去の連載からピックアップして転載したものであり、周囲の状況が現在と異なっていることが多々あります。
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