No.274 『何番からピンを狙うか』
12/16更新
シングルに合った狙い方は?
塾長は「セカンドショットはグリーンの中央を狙え」といいます。それが最もスコアがまとまるゴルフだそうですが、それは私のようにハンディ3のレベルでも狙いはグリーン中央ですか。私はピンが端に切ってあってもピンを狙っていきます。塾長のお考えは、シングル前のゴルファーに言っているのだと思います。私のレベルにあった、ピンの攻め方を詳しく解説してください。
(神奈川県・33歳)
中央狙いこそが「攻め」だ
次なる事実も参考にして頂きたい。
タイガー・ウッズは5アイアンからサンドウェッジ迄のアイアンでピンをデッドに狙う。4アイアンからドライバー迄のクラブではグリーン中央を狙っている。
調子のいい時に5アイアンからサンドウェッジ迄のクラブでピン狙いに徹し、調子の落ちている時は6アイアンから先のクラブでピンを狙っているのです。
ただし、いつの時も5アイアンから先のクラブでピンを狙っている訳ではない。飛距離、方向のショット精度の落ちている時は落ちている状況に合わせたゴルフをウッズを含めたツアープロはしている。それが出来ない者はツアーで生き抜くは不可と思う。
己のゴルフ内容を冷静に認識し、その時のゴルフ内容に合わせたゲームの組み立てをしないと一定のレベル維持を続けは難しい。体は機械ではない。心も機械とはなり得ぬ。技も生き物である。体・技・心の順応力がプロで生きていくための能力だと私は思っている。
スウィングの好不調の差はクラブ1本というのが世界トップレベルでしょう。私のレベルだとクラブ3本のレベルになって行く。アイアン1本の飛距離差を10ヤードとすればタイガー・ウッズの好不調のバラつきは飛距離にして10ヤード以内であり、私レベルだと30ヤード迄となる。
ウッズは4アイアンでピン狙う時もあるし、6アイアンからサンドウェッジ迄のクラブでしかピン狙わぬ時もある。
変化に寛大なのが強者の証しであり、変化に頑固な者はトップレベルを維持するのは困難。プロスポーツの領域はそうだと思う。変化に頑固な者は駄目だ。
川の流れ途(みち)は水の量によって変わる。頑固なままじゃ川の流れ途は見つからないものでしょう。強者はその時の己の最善の戦い方と結果を求める。ウッズでクラブ1本、私でクラブ3本の距離の中に流れ途を見つける事は出来る。今、私はその事を知る。
16年の間、メジャー競技45試合の観戦記を執筆し、国内競技自戦記、観戦記を含めて10年余、書いてきた中で気付いた事である。私は無知であった。体・技・心を支える智の部分の才能に欠けていた。
日本のトッププロでクラブ1.5本の差ではあるまいか。15ヤードである。ハンディゼロのアマの方で私と同じレベルと思う。
私は8アイアンからサンドウェッジ迄のクラブでピンを狙う。ジュニア塾生にもピンを狙うクラブ、ピン狙う距離を把握するように指導してきた。それの出来ている者はアマ界のトップレベルにゴルフ始めて3年で肉薄し、その後、プロの中でも戦えるレベルにはなっている。
クラブと距離の把握出来ていない者はプロと戦えるレベルに、到達出来ていない。それは己のゴルフレベルが認識出来ていないという事です。
ゴルフは己の頭を下げて突進したり、相手の頭と己の頭をくっつけ合って殴り合うゲームじゃない。己のレベルを知る事は大切な事だ。何番アイアンからピンを狙って行けるのか、どれだけの距離からピンへ打って行けるのかを知る必要はある。
直径30メートルのグリーンを想定して頂きたい。端5メートルの中にピンが切られる事はない。となれば30メートルのグリーン、ピンの切られる位置は直径20メートルの範囲となる。グリーン中央からだと10メートルの距離。とすれば、グリーン中央にボールがあれば10メートル以上のパッティングは必要ないという事になる。30メートルのグリーンでも実際に球を転がす距離は10メートル迄。
ピン位置がグリーン中央近くに寄れば、パッティング距離も縮まり行く。確率から申せば、グリーン中央が最もバーディの取れる位置と申せよう。極論なれど、プロは10メートル以上のパッティング練習を必要としない。グリーン幅が40メートルあっても15メートル以上のパッティング練習は要らないのです。
日本のトーナメントコースの平均グリーン幅は28メートルである。ヨーロッパは24メートルであり、アメリカも24メートルとの数値が出ている。再びの極論なれど、グリーン中央に打って行く技量あれば9メートル以上のパッティングは必要ない。欧米のトーメナントコースであれば7メートルだ。
5メートル以上曲がらない自信あればグリーン端のピンも狙って行ける。グリーン外しても100パーセントの確率で寄せ切る自信あれば、どのようななピン位置でも狙って行ける。プロの領域、その自信持つ者はひとりもいない。
ウッズが5メートル以上曲がらない自信持つのは5アイアンから先。だからウッズは5アイアンから先のクラブでピンを狙い、4アイアンからはグリーン中央を狙って行く。それが世界の頂点の自信である。
ニクラスもバレステロスも5アイアンから先のクラブでピンを狙っていた。ピンデッドに狙うのが攻める事である、と過去の論は教えた。それが常識となった。
大間違いである。クラブと距離で攻めの概念は変わり得るものだ。ゴルフにおける攻めの基本位置はグリーン中央である。
日本プロ界、尾崎将司のみがピンを5アイアンから先のクラブで狙える男と思う。以前、尾崎将司に問うた事がある。尾崎は6アイアンから先と答えた。謙虚な男と思った。私は5アイアンから先の答えを期待していた。
世界と日本の差を最も知るは尾崎将司であろう。その差を知るが故に最も苦しんでいるのも尾崎将司だと思う。尾崎の世界での苦闘は日本プロゴルフ界の苦闘でもある。尾崎の苦しみを踏み越えて行ける者の誕生を私は待つ。その時、尾崎将司がいかに苦しんで来たかが分かると思う。
今、私は8アイアンから先のクラブでピンデッドの狙いをする。ツアーだけに生きていたころ、私はスプーンでもピンを狙っていた。大馬鹿者であった。
トーナメントの中でトップレベルのゴルフに接していたら考え方も変わっていたろうにいつも予選通るか落ちるかのレベルであったから接する機会は少なく、気付く事が出来なかった。
貴兄は15年前の私である。私はフェアウェイから打つドライバーでもピンを狙っていた。ハンディ18の方がグリーン中央狙いに徹すれば12のゴルフは出来る。12の方がグリーン中央狙いに徹すれば8のゴルフが出来る。
ハンディ12の方がピン狙って行ける距離は120ヤード迄ではあるまいか。飛距離、方向共、5メートル以上曲がらないアイアンの正確さはハンディ12の方で120ヤード迄と思う。
私は8アイアンから先のクラブでピンデッドに打つ。貴兄も8アイアンから先をピンに向けよ。7アイアンからはグリーン中央狙いに徹した方がよい。それで貴兄はハンディ1にはなれる。この1年でなれる。
私と同じ愚を犯すな。引く事は大切だ。引けば周りが見えて来る。8アイアン迄、貴兄の気持ちを引け。
6月7日、午後6時。鎌倉プリンスホテルで講演会場壇上に立つ。日本生命主催の講演会。貴兄に散策の心あれば、と思う。詳しく説明する事は出来る。再会だ、津久井の人よ。
この「野性塾スペシャル版」は週刊GDの過去の連載からピックアップして転載したものであり、周囲の状況が現在と異なっていることが多々あります。
|