No.277 『アプローチ上達の近道』
1/13更新
塾生たちの小技に驚嘆しました
熊本のゴルフ場で坂田塾生がラウンドする姿を見かけました。小さい体で飛ばすドライバーの飛距離もさることながら、アプローチの技術には大変驚かされました。塾長は塾生にアプローチの技術をどのように教えたのですか? 私たちでもできる練習方法がありましたら、教えてください。
(熊本県・45歳)
基本は放りこむという欲だけです
私が塾生に教えて来たのは基本の中の基本だけ。6アイアンの打ち方だけであります。
指導というものは基本をどの様に認識させるかであろう。私は2年、3年の時間をかけて6アイアンだけを教えて来た。ゴルフへの考え方も6アイアンを教える中で教えては来ました。
基本から発生する応用はある。その応用は基本がどれだけ身についているかで上手く行くか、行かぬかは決まるものだ。基本の身についていない者の応用は戦いの場で使えない。
ゴルフは確率である。基本が身についていれば高い確率の応用技は己が身にくっつく。私は6アイアンだけを教えて来た。塾生のアプローチは、シャフトの短さとロフトの大きさを生かしただけの単純な打ち方である。難しい打ち方は何もやっていない。上げて下ろすだけ、常にピンを狙って行くだけ、寄せるのではなく放り込むというだけの単純な欲と行為。
アプローチの基本はそこだと思う。パッティングも然り。難しいピン位置だから如何に寄せて行くかは応用の心構えと技であり、基本は入れに行くだけの心構えと技だけ。基本を難しくしてはいけない。応用は技も心構えも難しくなって行く。
指導とは難しさを持ってはいけいなと思う。特に基本を教える時に難しい事をさせてはいけないと思います。
基本を身につけ始めた塾生は6アイアンとパターだけのラウンドに入る。塾生は「短い距離の打てるサンドウェッジを使いたいと欲す、第一期の時期」に入る。先輩の止まる球を見て先輩の技とサンドウェッジのクラブに憧れを持つ様になって行く。
上達させるには技への欲を持たせるのが一番。勝利への欲は基本の出来たズーッと後の事。ここの順番を間違えるとゴルフは難しくなって行くものです。
勝利への欲を先行させてはいけない。勝利への欲を先行させたばっかりに消えて行った将来有望と呼ばれていたプロの数、何と多い事か。欲は乱視の眼線を生む。
一期生にだけは私自身が熊本GC湯の谷Cでサンドウェッジの止まる球、戻る球、それぞれ高く低く打って盗みの時間は与えました。6アイアンで基本スウィング型を教えていなければ盗む事のできない領域である。基本を身につけて技の盗みも出来る。基本のないゴルフに技盗みは出来ない。
基本は極めて大切。6アイアンで覚えるのがベストなり。一期生は私の技を盗んだ。その技は二期生、三期生へと受け継がれて行っています。
この指導方法は熊本、福岡、周防灘、東海、神戸、船橋の7つの塾全部に共通したものである。7つの塾、何ひとつ変わった指導はしていません。基本を与えるだけ。それだけで子供たちは上手くなって行くのです。
塾生は試合で一緒に回った人の技を盗んで来た。ジュニアの大会、大人の中に混じった試合で盗んでいた。熊本に帰って来た時、感心する言葉ばかりを口に出していたと言う。
塾生の指導者は世間である。私とコーチは基本を教えただけであり、そこから先は世間が教えてくれている。パッティングの上手い人、アプローチの上手い人がいれば教わりに行って来い、と指導してきた。
基本を教えるまでは世間に触らせなかった。間違った基本は多い。多すぎる。正しい基本は何としても必要。基本を身につけた後は世間を師とさせた。世の中には私以上にゴルフの上手い人が幾人もおられる。その方たちを師とすれば良かった。
教わる事は戦いである。必死の気持ちがなければ通い合わないものが多い。そして塾生は戦いの時期に入って行った。感心の言葉を出さない者は進歩しないものです。傲慢さは進歩を阻害するものだと思う。
今、プロの試合に出場する女子塾生は樋口久子、岡本綾子の両名に面倒見て貰っている。技、心構え等、日本女子プロ界でこの人が世界を最もよく知る者だと思う。心の位置が高い。男子塾生は尾崎将司、中嶋常幸、倉本昌弘に頼むつもりでいる。練習ラウンドを一緒にして貰うのだが多分、彼らは受けてくれるであろう。
貴兄は基本に戻れ。6アイアンのショートスウィングで球を打て。それが基本だ。鹿沼時代、研修生だった私は杉板の一点目掛けて3メートルの距離から球を打った。貴兄も杉板の一点目掛けて球を打ってみればよい。6アイアンのショートスウィングが出来ていれば一日100球、3カ月で杉板の一点をヘコませる事は出来よう。
貴兄は子供を見て感心したと言う。純な気持ちの強い方だと思います。貴兄は上達する。貴兄が上達しないで誰が上達するものか。
基本は愚鈍の心で作る。貴兄には基本に戻って貰いたい。愚鈍になれ。
この「野性塾スペシャル版」は週刊GDの過去の連載からピックアップして転載したものであり、周囲の状況が現在と異なっていることが多々あります。
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