No.269 『アプローチ上達法』 11/11更新
効率のいい練習法は?
塾長はじめまして。私がよく行くゴルフ場にはアプローチ練習場があります。練習場と違ってライを変えて練習できるので、コースに出掛ける時には欠かさず練習しています。長時間は練習できないので効率のいい練習法を考えています。塾長は研修生時代、アプローチ練習場でどんな練習をされましたか。
(東京都・37歳)
根気を作ることが第一です
ひとつの打ち方ばかりをしていました。アプローチ時、飛び行くボールの高さだけを意識し、結果には拘らなかった。
寄った、寄らない、入った、入らないに拘ると実戦で使える技術は身に付き難いと思います。例えるに金のメッキ技術よりは銅の塊りの様な技術、銅の塊りよりは銀の塊り、銀の塊りよりは金の塊りであるべきでしょう。
実戦で戦える技というのはメッキじゃいけない。メッキ技術とはマグレ技術であります。プロの領域、マグレ技で戦えるものじゃない。プロテスト然り、金メッキ技術よりは銅の塊りの技術の方が確実性を持つものだ。
10センチに寄る事もあれば5メートルと離れる寄せよりも、確実に2メートルに寄って行くアプローチ技術の方がスコア作りには適す。
私はボールの高さを意識した。サンドウェッジで練習する時、50球の球を同じ高さに打とうとしました。バンカーショットも芝からのアプローチも球の高さの均一性だけを求めた。
横幅30センチ、縦幅1メートルの杉板をコース管理の方に作って貰った。杉板の厚さは3センチ程だったと記憶する。
坂田が妙な遊びを始めたぜ、と先輩研修生、ゴルフ場職員、会員の方は噂した。私が鹿沼CCに入社して2カ月過ぎた頃の話です。
夕刻、私は杉板とサンドウェッジ1本、それに50球の練習ボールを入れたビニール製ボストンバッグを持って人気 (ひとけ) の消えたコースに入った。杉板を木に立てかけ、裸地から杉板目掛けて球を打った。
球と杉板の距離は3メートル。芝の上からは打てなかった。芝の上から打てば始末書と1週間の練習禁止が待っていた。球を打つは常に裸地ばかり。プロテストに通れば練習時、芝の上、ラフの上から球を打てると思った。
芝の上からアプローチ練習している夢を幾度も見たものです。研修生にとって芝の上から球を打つ事は遥かなる願望ではあった。
杉板の一点を狙っていった。バンカーショットの練習でもバンカー近くの木か、バンカーの土手に杉板を立てかけて一点を狙って練習しました。
左右上下30センチ以内のズレは当り幅と妥協していた。確かなる一点を求めたんじゃ一点狙いの練習なんて続きはしない。50球全部、確かなる一点に当たる訳もない。研修生にとって3メートルの距離の30センチは体技心の作り行くギリギリの妥協幅だったと思う。
プロレベルだと50球全部20センチの幅には収まる。研修生とプロの間には体技心の作り行く10センチの幅はあります。
初めて49球まで、当て続けた事がある。今も鮮明に記憶に残る事なれど最後の1球をダフった。球は杉板に届かなかった。
私は終世の恩人と思う方を10人持つ。ビッグコミックオリジナルに連載している「風の大地」という漫画がある。その中に登場する鹿沼CCグリーンキーパーの小平さんと元研修生でコックの長だった宇賀神さん。二人共、実在の方であり、私の恩人であるが、50球目を失敗して10分程過ぎた時、宇賀神さんが私の練習の場に来た。
「いつ迄やってるんだ。腹は減らんのか?」
宇賀神さんはオートバイに乗って来た。握り飯5コ持って来てくれた。
月灯り星灯りの下、私は打ち始めた。宇賀神さんは言った。
「何時だと思ってんだ!? 9時すぎてんだぞ。握り飯食ってからやったらどうだ」
「大丈夫です。この回で終わらせます。50球当てて片をつけます」
宇賀神さんはエンジンを入れずに、オートバイのヘッドライトの灯りをつけた。エンジン音を聞くと集中出来ないだろうという配慮だった。
終わらなかった。バッテリーが切れ、オートバイの灯りが消えた。その時は灯りの消えた事に気付かなかった。後日、宇賀神さんに言われ、そうだったのですか、と思っただけの事。その夜、寮に戻ったのは12時過ぎ。すぐに眠った。夢の中でアプローチしていた。夢の中で上達して行く事をこの時、初めて知った。翌日の朝、50球、当てた。
私は高さを求めた。プロテストに通り、鹿沼から周防灘へ移った時、その杉板、鹿沼CC南コース1番ティ横のスタート小屋備えつけ椅子の下に置いて来た。昭和52年12月30日。今より23年前の事です。
へこみ穴がついていた。どれだけの球を杉板目掛けて打ったのかは記憶にない。そのへこみ穴は黒ずんでいた。杉板が今も南1番ティ横、スタート小屋の椅子の下にあるかどうかは知らない。
私は球の高さだけを追った。3メートルの距離だと左右の曲がりよりは上下の曲がりの調整の方が難しい。左右が20センチズレる事はほとんどなかった。
一つを克服し、一つの技を身につけ、次を求め行くが最善のアプローチ練習方法だと思う。私の練習は庭先でも部屋の中でも出来る。
根気を作る事が第一でしょう。根気がなけりゃ上達の扉は押し開けぬものと思います。
この「野性塾スペシャル版」は週刊GDの過去の連載からピックアップして転載したものであり、周囲の状況が現在と異なっていることが多々あります。
|