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ゴルフ野性塾SP

No.331 『呼吸とリズムで素振りする』 2/3 更新


素振りの効用はどこにある?

私も素振りを繰り返している一人です。200回、多い日は300回、症状も同じで右へ飛ばすプッシュスライスから一気にフック系に変わりました。スウィングを作るには「ショートスウィングが一番」との答えでしたが、素振りの効果とショートスウィングの関係を教えてください。

(愛知県・38歳)


ゆったり振って良癖を伸ばします

photo 充分なる効果は出ている。何故ならば、右へ飛び出してそこからスライスして行く球が一気にフック系へと変わり出したのだから・・・。

貴兄が何日間、毎日200回の素振りをしたのかは分からないが、素振りは筋肉の記憶を変えるためのものである。過去の論、素振りを筋力アップの手段と見て来た。現在の論、素振りで筋力アップの得られるパーセントは素振り全体の持つ効果力の10パーセントに過ぎぬ。90パーセントはスウィングを筋肉に記憶させるがための効果である。

素振り時、目一杯の力、目一杯のスピードで振り回すのは素振りの持つ効果力を振り落としているようなものだ。素振りはゆっくりとした振りのリズムを導き手として振った方がよい。筋力アップの手段はほかに幾らでもある。素振りで筋力アップさせるのは勿体ないと思う。

呼吸とリズムで素振りして行けば、筋肉はそこからスウィングの動きを覚える。素振りは呼吸で振って行くものです。勢いで振るものじゃありません。素振りと聞けば眼を血走らせて振られる御仁がおられる。違う、それは理の素振りじゃない。悪癖を生むがための素振りである。

素振りする時、まず最初に下半身の動きを固め、アゴを引き、僧帽筋、腰背筋に意識を向けて始めればよい。そして、僧帽筋、腰背筋で素振り出来ていると感じた時、呼吸の素振りが始まる。小さな素振りでは駄目です。大きく振って欲しい。大きくゆっくりと振るには左腕を伸ばした型が要ります。

だが、フルスウィングの型では左腕を伸ばしにくいでしょう。40歳までであれば伸ばせる左腕も40歳過ぎると伸びにくくはなるものです。年齢はスウィング中の左腕に現れる。老いる程に左腕の曲がりは大きくなって行く。

photo だがショートスウィングのトップ位置。左腕地面に平行の位置だと左腕は伸ばせるはず。60歳の方でも自分の意志で伸ばせると思います。素振りは左腕地面に平行のトップ位置、右腕地面に平行のフィニッシュ位置で行えばよい。その型だとスウィングは大きさを保てるものだ。

これまで、300人余のジュニア塾生、300人弱の進化論塾生を指導して来た。結論申せば、100人に対して100のスウィングの癖はあります。良癖、悪癖、いずれもあった。癖を持たない者は一人もいなかった。そして、良癖を伸ばせば悪癖は鎮まり、悪癖退治に行くと良癖は姿を消す傾向を見せた。

悪癖とは無欲の動きであり、良癖とは無駄のない動きを言うが、悪癖と良癖はコインの裏と表の関係に似る。コインは表ばかりの型じゃ使えるコインにはならない。裏の型ありての使用できるコインと思う。悪癖の自在を認め、良癖を伸ばして行くのが一番。悪癖を消しに行くと、良癖が消えて行った。スウィングの癖を消す事は出来ない。老いる程に良癖と悪癖の共有は必要。素朴さ、単純さを求めて行けばよい。

左腕地面に平行のトップ位置、右腕地面に平行のフィニッシュ位置の間の素振りは良癖を伸ばす、伸ばしの位置であった。スウィングの美しさの作れる位置でもあった。そこから先は良癖と悪癖の混じり合う位置であり、修正は難しい。プレッシャーが訪れると悪癖がポッと顔を出す。プレッシャーは悪癖の威張る温度じゃある。良癖で鎮めとかなきゃいけません。

練習とは鍛練である。同じ動きの繰り返し。愚と鈍と根気の練習。鍛練だ。鍛練は美を作る。

筋肉にスウィングの動きを記憶させるのが素振りの効用であって、筋力アップのための素振りとは考えない方が良いでしょう。ビュンビュンの素振りは必要のないものと私は考えています。

貴兄は十分なる成果を得ている。効果十分に在りです。筋肉の記憶力を生むにはいい手段だったと思う。ただ、スウィング型に眼が向かなかった。それでフックの動きを体が覚えてしまった。貴兄は何も考えずに素振りをし、偶然フック球を生んだのか。面白いと思う。

photo プレッシャーはスウィングを縮めます。小さい振り、性急の振りとなって球は曲がる。大きく素振りする事が良癖を伸ばす一番の手段でしょう。大きさはプレッシャーに対抗出来るし、プレッシャーを利用も出来る。

トーナメントの日々を送っていた頃、私はプレッシャー酔いのゴルフばかりしていました。何故、何故を繰り返すゴルファーだった。過ぎて振り返れば分かった。私は縮みのスウィングをしていた。素振りの数が足りなかったのかも知れない。

スウィングとは筋肉の記憶力との認識に欠けていた。私は球を叩いた。それが練習であり、その球数の先にスコアという結果があると思っていた。上達の道が2本ある、3本あるという事に気付いていなかった。私は球数という、感性を鍛えるだけの1本道を歩くゴルファーでした。

私はプレッシャーの足音しか知らなかった男です。恐さを怖れるゴルファーだった。自滅のゴルファーだった。その後、私は理論を持ち、ジュニア塾生と進化論塾生にはプレッシャーの利用法を教えて来た。そのためにも大きなスウィングは要り、徹底的なる基本型の習得を必要として来た。

貴兄はショートスウィングの素振りを始める。ショートスウィングの大きさを作ります。今、すぐ始める。




この「野性塾スペシャル版」は週刊GDの過去の連載からピックアップして転載したものであり、周囲の状況が現在と異なっていることが多々あります。

つづく
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No.459 距離感をあわせるには・・・ (10/6)
No.458 バックスウィングは・・・ (9/29)
No.457 選手のマナーについて・・・ (9/22)
No.456 助言で崩れたら、新たな・・・ (9/15)
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坂田信弘

京大中退からゴルフを目指した異色プロゴルファー。主として週刊ゴルフダイジェストを根拠として漫画の原作、競技観戦記、レッスン書、レッスンビデオなど八面六臂の活躍をしているが、現在は次代のゴルファー育成のため開始したジュニア塾の塾長として脚光を浴びている。スウィング型を作るための「ショートスウィング」を提唱。
 
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