巷のスウィング理論の大半は、ゴルファーの体の動かし方を中心としたものであるが、実際にボールの行方を決定づけるのは、クラブヘッドとボールとの衝突。インパクトでの物理的な現象が全てなのだ。ボールフライトを決定づけるインパクトの力学を知り、物理的な現象を解明しながら、現代のクラブを使いこなすヒントを、工学院大学の工学博士・田中克晶氏と、理論派プロゴルファーの新井真一氏とともに考えてみた。
【ミスショットを科学する】①『トップ』
なぜ球が上がらないのか、あなたは説明できますが? ミスショットの際は、ボールはインパクト時に、どのような現象を起こすのだろうか。トップのミスは、クラブヘッドがボールの赤道部分よりも上にヒットしたときに起こる現象。つまりアイアンであれば、少なくともボールの赤道よりも歯の部分が下に入れば、バックスピンがかかり揚力が生まれてボールが高く上がる。
【ミスショットを科学する】②『ダフリ』
ダフリのミスは、多くのアマチュアにもイメージしやすいはず。ダフリの原因は様々だが、共通するのは、クラブヘッドの重心への意識がないこと。スウィングした時のヘッドの重心を意識すると、クラブの長さやしなりなどを感じ、タイミングを合わせられるようになる。
【ミスショットを科学する】③『テンプラ』
テンプラは、ボールの赤道の下にクラブヘッドが入り、フェースよりのヘッド上部にボールが当たる現象。高いティアップをして打つ事も、テンプラになる要因になる。
【ミスショットを科学する】
④『スライス・フック・シャンク』
曲がりの原因は球の回転軸の傾き。フェース面がブレてインパクトすると、球の回転軸が傾くため、弾道が変わってくるのだ。シャンクは他のショットとは毛色が異なり、ホーゼルの付け根で打球してしまうことで、ボールに右前方への力のベクトルが生まれることになる。
■コンピュータでは分析できない、
「ゴルファーの勘」
クラブヘッドとボールの衝突実験をしていてわかるのですが、ちょっとした打点のズレでボールに与える力の成分は変わる。プロがあの木から左に曲げるとかいうのも、野球とは違って自分の指先とかでコントロールしているわけではない。人間の感覚のすごさは物理や化学では分析しきれないもの。すべては経験による勘の積み重ねなのだ。