クラブやボールの進化で弾道はどう変わったのか?
ボールもクラブも進化したが、スピンをコントロールして弾道を操るのはどの時代の名手にも共通している。
引き込んで逃すフェード、スライスと、押し出して巻き込むドロー、フック。この2弾道をさらに高低で分けて考えるのが、コース攻略の基本。用具は大きく変わっても球筋はいつでもこの4つだ。
安定して打ち分ける技術は、用具の進化とともに少しづつ変化を遂げ、弾道との【つき合い方】にも変化が生まれてきている。
「暴れるスピンをどう抑え込むか」が大きな課題だった時代から、「超低スピン」の時代を経て、スピンと戦うのではなく、【スピンを愉しむ】時代がやってきた!
一流プロたちが駆使してきたスピンコントロール術の数々。
そして【我々が目指すべき弾道】を最先端から見つづけてきたレッスンの達人、佐久間馨と考えてみた。
ボールもクラブも進化したが、スピンをコントロールして弾道を操るのはどの時代の名手にも共通している。
引き込んで逃すフェード、スライスと、押し出して巻き込むドロー、フック。この2弾道をさらに高低で分けて考えるのが、コース攻略の基本。用具は大きく変わっても球筋はいつでもこの4つだ。
安定して打ち分ける技術は、用具の進化とともに少しづつ変化を遂げ、弾道との【つき合い方】にも変化が生まれてきている。
パーシモンはその動きが明確。そのためギア効果により打球にスピンがしっかりかかった。
慣性モーメントが小さいバーシモンだからこそ出来た「打点で弾道を打ち分ける」技術が生まれたのだ。高重心アイアンは、打点が芯から下に離れすぎると、パワーが伝わらずスピンもかからなくなってしまうため、ダウンブローに打ってスピンをかけなければ飛ばなかった。
70~80年代の名手は、かかりすぎるスピンを上手く扱うための技術と工夫を磨いていたのだ。
【ジャック・ニクラス】
60~70年代に強烈な印象を残したジャック・ニクラス。彼はフェードヒッターを自認していたが、そのほとんどがストレートで高弾道。特にロングアイアンの打球の高さと止まり具合は、他の追随を許さなかった。ニクラスは〝点で狙える〟高さで止まる弾道を追求。後に続いた名手は、こぞってニクラスのアップライトスウィングと高弾道を真似た。
【アーノルド・パーマー】
プロ入り直後、ドライバーのボール位置はスタンスの中央だったが、少し左に置くようにしたら弾道が高めになり、飛距離が伸びたというエピソードを持つ。地を這うような低い打ち出しで、ググッとせり上がりながら飛んでいく強弾道はまさに圧巻だった。ウッドでもジェット機が離陸するような弾道を打っていたが、スピン量が多すぎたこともあり、コントロール性は高いが飛距離は見た目ほど伸びなかった。
スピン量が多すぎて吹き上がるのが“糸巻きバラタ”。
低スピンで伸びるのが“ツーピース”。適正なスピン量でさらに飛ぶのが最新の“多重構造ウレタン”。
[糸巻きバラタ]スピンはよくかかるが飛ばすのが難しいボールだった。
[ツーピース]反発性能はアップしたがアイアンのスピンがもの足りなかった。
[多重構造ウレタンカバー]安定した飛距離と適度なスピンを両立。
「弾道の要因となるスピンを考える上では、クラブよりボールの変化のほうが影響は大きいと思います」(佐久間)
用具が曲がりにくくなったといっても、人間が扱う限り曲がる要素は入り込んでくる。だから、一方通行にする意識的な曲げ技はやはり必要だという。
「曲げ幅は少なくていいんですが“確実に”一方に曲がる打ち方をすること」(佐久間)
ヘッド軌道も極端に変える必要はなく、ヘッドの通り道を意識すれば、ダウンとフォローでのコッキング動作で可能になる。
スコア作りの弾道は、飛距離アップや見栄えの良さではなく、目標に的確に運べることが主眼だ。
「シャフトのしなり、しなり戻りを生かして高さを変えるようにするといい。現代のしなやかなカーボンなら、アマチュアでも身につけられる技術」(佐久間)
慣性モーメントが大きくなった最新のヘッドは、挙動がおとなしいため思い切って動きを変える意識でちょうどいい。
ボールを曲げるというのは、逆球のミス対策だけということではない。腕前のレベルを問わず、ゴルフを深く愉しむには、曲げる技術は不可欠の要素だ。自然を相手にするゴルフでは、曲げる弾道が攻略の幅を広げてくれるもの。
「ヘッド軌道とフェース向きの関係だけが弾道を変えるということを理解できていれば、後はトライするだけです」(佐久間)
狙った所へ“曲げて”運ぶことは、ゴルフを愉しむ基本なのである。