注目は飛距離が伸びて、カラダにやさしいジャスティン・トーマスの“地面反力”
USツアーで活躍する名手のスウィング技術は、最新のバイオメカニクスをベースに研究され、新たな局面を迎えている。メカニカルな正確性からナチュラルな躍動感重視へ。アメリカ打法はなぜ変わろうとしているのか?
米国最新のスウィングに迫ってみた。
●Chapter.1
“メカニカル”から流れるような自然な動きへ
科学的に見てやさしいのは自然なスウィング
20世紀を振り返ると、クラブとボール、コースメンテナンスの進化に対応するために、スウィング技術は“メカニカル”な方向に進化したように見える。
シャフトがヒッコリーからスチールへと剛性を高める中で確立されたベン・ホーガンらのスウィング論から、70年代は「スクェア・トゥ・スクェア」理論に至った。
これが日本国内で一大ブームとなった「アメリカ打法」である。
90年代には、より反復性、正確性を求め、スウィングプレーン重視の「ボディターン」理論へ移行。当時登場したメタルウッドと相まって、こちらも新しいアメリカ打法の主流となっていった。
そして21世紀に入り、バイオメカニクス(人体構造力学)の観点からスウィング研究を進めるグループが登場する。あらゆるスポーツ同様に“地面反力”を生かし、流れるようなナチュラルな動きを大切にすることを提唱した。
この考え方は現在、プロコーチの間に浸透し、スウィング論のベースとなっている。
●Chapter.2
科学の力がレッスンを変える
バイオメカニクスの目で見てわかった!ミケルソンのスウィングは今でも最先端
「地面反力」とは、地面に力を加えることで跳ね返ってくるエネルギーのこと。ゴルフスウィングの場合、地面を踏み込む力を生かせるかどうかがポイントになる。
バイオメカニクス的には、キネティックチェーン(運動連鎖)が生じるように、肩と腰には多少の捻転差ができれば十分。つまり、腰は大きくターンしてもいいし、肩の入りは浅くても構わないわけだ。
地面反力を生かして、筋力の何倍ものエネルギーを使ったほうが、効率よく体の回転スピードを上げ、ヘッドスピードを上げることができる。フィル・ミケルソンのように、大きな故障もなく、ロングドライブを打ち続けることができるのだ。
※バイオメカニクスとは……生物の構造や運動を力学的に研究し、応用しようとする学問。生体力学
●Chapter.3
米国最先端の教え、地面反力とは何か?
地面からもらった力を回転に変える。それが地面反力だ!
地面を踏み込むと1・5~2倍の力が生まれる地面反力。
ただ踏み込んだだけでは飛距離アップにはつながらない。地面反力を体の回転スピードに変換する必要がある。地面反力が生み出した回転スピードをヘッドスピードに変換する最大のポイントは、脱力のタイミングだ。
キネティックチェーン(運動連鎖)を効率よく発動させるには、まず手首や腕を力ませないことが大切。右足を踏み込んだ反動で振り上げ、左足をグンと踏み込んでダウンをスタートしたら、脱力。これができるようになると、確実に飛距離は伸びる。
●Chapter.4
小さな動きで地面反力を生かす
スタック&チルトも科学の力で生まれたスウィング理論だった
足が使えない人はまず「スタック&チルト」を試してみてほしい。「スタック&チルト」にも地面反力を生かす考え方が反映されているからだ。左1軸打法とも呼ばれるが、肩のタテ回転を促すために、バックスウィングで右腰を後方に引き上げ、ダウンでは左足を踏み込んで、右腰を左に大きく回し込んでいくのが特徴だ。
今まで左右の体重移動や腰のヨコ回転を意識してスウィングしていた人には、歯車をタテ回転させるイメージや感覚をつかむのに有効だ。特に、右ひざを伸ばすバックスウィングは、地面反力を生かす踏み込みにはぜひ取り入れてほしい。右足かかとの踏み込みで地面反力を受けながら右腰を切り上げると、上体を力ませずにクラブを引き上げることができる。つまり左右のかかとの踏み込みと地面反力を受けて回転スピードを上げる基本動作が身につきやすくなるのだ。
★米国発の新打法「スタック&チルト」
日本では2012年に書籍化され(ゴルフダイジェスト社刊)ベストセラーとなった。
●Chapter.5
自然な動きを追求したレッドベターのAスウィング
V字を描くクラブの動きが左足の踏み込みを助けてくれる
地面反力を生かし、ヘッドスピードのアップにつなげるには筋肉を順番に連動して動かすこと(キネティックチェーン)が最重要ポイント。だが、それを妨げる要因として、上体、特にグリップや腕の力みがある。名伯楽デビッド・レッドベターが、練習量の少ないアマチュア向けとして提唱する「Aスウィング」のバックスウィングには、その力みを防ぐヒントがある。
クラブを「立てた」重量感を軽減できる体勢から振り出すのはラクなうえ、地面反力を受ける踏み込み動作で歯車のタテ回転を生じさせ、その遠心力に腕の力を抜いたまま乗せるには有効といえるのではないだろうか。まずは試しに、シャフトを立てて上げてみよう。
★世界的カリスマ・コーチ、レッドベターの最新スウィング理論 「Aスウィング」
2016年に日本語版書籍「デビッド・レッドベター Aスウィング」(ゴルフダイジェスト社刊)が発売された。
●Chapter.6
これが、地面の力を回転に変える米国最新、体の使い方だ!
米国の新スウィングをあなたにも!
その❶ 地面の力を回転に変えるドリル
“ジャンプのドリル”で地面反力を体感しよう!
●Chapter.7
流れるようなスウィングなら
アマチュアだって飛んで、曲がらない。
米国の新スウィングをあなたにも!
その❷ ロープを体に巻きつけるように振るドリル
手、腕の力に頼らないほど飛ぶようになる!
★クォン教授と吉田プロの「反力打法」は週刊ゴルフダイジェストに好評連載中です。
『レッスンの匠 これがアメリカ最新スウィングだ!』は、チョイス2017年秋号に掲載されています。