「ボディターン」も「下半身リード」もこのレッスンが原点
現代のトッププレーヤーの活躍の裏には必ず名コーチの存在がある。
そんなツアーコーチの先駆者的な存在と言えば、N・ファルドやE・エルスをトッププロに
育て上げたデビッド・レッドベターだ。
実はレッドベターがツアーでコーチング活動を始める前に、偉大な功績を残した人物がいる。
ジミー・バラードである。
バラードがコーチとして活躍した1980年代、S・バレステロスやK・ストレンジ、S・ライルら教え子たちがメジャー11勝もの勝利を挙げている。
30年以上も前に近代スウィングの基礎を築いたバラードのレッスンとはいかなるものなのか。
●CHAPTER 1
【飛びと再現性の両立を求めればこの打ち方になる】
ジミー・バラードの考えの根底にあるのは「再現性を上げること」これは1980年代もクラブが進化した今でも同じことだという。
「手でクラブを操作している人は再現性が低くなります。クラブは手ではなく胴体や脚といった大きな筋肉で動かさなくては再現性が高くなりません。だから私は、体と腕がコネクトした(連動した、つながった)“コネクション・スウィング”というものを提唱したのです」
再現性を追求することで誕生し、現代のプロたちにも脈々と受け継がれている“コネクション・スウィング”とはいったい何なのか?
●CHAPTER 2
【もっとも重要なのは腕のコネクション…左わきの角度は
いつも同じで体と腕を連動させよう】
バラードが上半身と左腕の関係を重要視するのは、スウィング中に最も連動性が崩れやすい部分だからだ。腕や手が独立した動きをすることで、正しいポジションにクラブが戻りにくくなり、再現性も低くなってしまう。
「私は各部位の動かし方よりも、全体が連鎖的に動く状態にしておくことが、何より大事だと考えています」
大事なのは連動して動く状態を作っておくことで、一緒に動かすことではない。むしろひじから下を固定せずに動かすことだという。
「今やトッププロとなったジャスティン・ローズは、ひじから上の腕と体の関係性は変わりませんが、ひじから先の部分は脱力をしているため、大きく動いているように見えます。この動かされる形が理想形と言えるでしょう」
●CHAPTER 3
【クラブを立てるようにテークバックする】
クラブを動かすには脚やお尻、胴体といった大きな筋肉を使う必要があるという。ポイントとなるのがテークバックの際のクラブの位置だ。
「これまで多くのレッスンで語られてきているように『両手で重い物を投げたり受け止める時には大きな筋肉を使う。スウィングもそれと同じ』という理屈はいつの時代も変わりません。体全体を使ってクラブを上げろと言うのは簡単ですが、アマチュアにはなかなかイメージがしにくいものです。ですのでテークバックではシャフトを立てることを意識してください。シャフトを立ててテークバックできれば、手元が胸の正面から外れることはなく、コネクトした状態が続きます。下半身、胴体の動きに連動してクラブを動かすことができるでしょう」
テークバックは「引く」よりも「上げる」意識を持つと良いだろう。そうすれば、腕と胸でできた三角形を保ったままテークバックすることができる。そして腕と体のコネクションを保つためには、プロのように、無駄な力を抜くことが大切だ。
●CHAPTER 4
【力を生み出す体の動き…バックスウィングはターン(回転) ではなくコイル(巻き上げ)】
ここまで紹介した体と腕の連動は、下半身で生み出した力をクラブヘッドに伝えるためのポイントだ。ここからはどのように力を生み出していけば良いかを紹介していこう。
「切り返しで力を生み出すのは、ずばり右のお尻です。右のお尻の力を生かすために、バックスウィングでは右サイドの動きでパワーをためておく必要があります」
そのためには回転でも体重移動でもなく、体をコイルする(巻き上げる)動きが重要だという。
「まずは右脚の外側で体重を受け止めるイメージを持ってください。トップを大きくしようとして、それより右に体重をかけにいってしまうと横移動になってしまいます。そして上半身は左肩を右脚の上に持ってくるようにすると、下半身と連動してコイルする(巻き上げる)動きを作ることができます」
ボールの後方(右)に巻き上げつつ、右脚でそれを受け止めることが重要なのだ。
●CHAPTER 5
【体が連動して動くコネクション・アドレス…大きな筋肉が
使えるポジションを作ろう】
スウィング中、体全体が連動して動くためには、どこか一部に負荷がかかったり、無駄な力が入っている状態は避けなくてはならない。そのためのアドレスのポイントがあるという。
「アドレスはバランス良く立てていて、スムーズに動き出せる形であればそれだけでOKです。特にチェックポイントを増やしたり複雑なことをする必要はありません」
アドレスは自然に立つことが一番大事だと言うバラード。唯一つま先の向きだけは、左右違った構えにするのが良いのだそうだ。
「つま先の向きだけは、左右違った構えにするのが良い。右足をスクェアにすることでトップで右サイドに体重が流れてしまうことを防ぐことができます」
これさえ守っていれば、始動も始動後の連動もスムーズに行うことができるという。
スウィング中に常に体がコネクトできているかどうかは、アドレスにかかっている。体重の配分は適正か、バランスの取れた構えになっているか、この機会に再度確認をしてみてはどうだろうか?
●CHAPTER 6
【ボールを飛ばすのは右サイドの爆発だ!】
コイルの動きでためたエネルギーは、それを開放することで爆発力が生まれてヘッドを走らせるパワーになる。
「コイルで巻き上げたものは、リコイル(コイルをほどく動き)で開放します。体重を移動したり腰を回転させる意識はいりません。パワーの源は右のお尻ですが、目標方向に押し込むのではなく下方向に踏み込むように使います」
踏み込んだ右脚を、ダウンスウィングでボール方向にキックする。この動きはパワーを生み出すだけでなく、クラブヘッドを目標ラインに乗せ、直線的なインパクトゾーンを作るためにも必要となる。
バラードはこれまで300人以上のプロのスウィングをチェックし、数えきれないほどアマチュアにレッスンを行ってきた。その経験の中で行きついたのが腕と体を連動させるコネクション・スウィングだという。
クラブやボールが進化した現代にも当てはまるスウィング理論。
アマチュアでも試してみる価値は十分にあるだろう。
『レッスンの匠 驚異のコネクションスウイング』は、チョイス2018年秋号に詳しく掲載されています。