クラブにはそれぞれ特性がある。
だが、「クラブを振る」「球を打つ」という14本の感覚には統一感があっていい。
動きの中でバランスを崩さない新しい感覚の気づき方・捉え方にトライしてみよう!
解説 大本研太郎
18歳からゴルフを始め、研修生、ミニツアーを経験後、ティーチングプロに。多数のアマチュア、ツアープロを指導している。2018年PGAティーチングプロアワード最優秀賞を受賞。
●CHAPTER 1
【グラビティメソッドとは】
体のバランスから考えればスウィングは1つ
人間の動作は、常に「バランス」の上に成り立つ。たとえば歩行でも「バランス」を取らないことには転倒してしまう。
「クラブを振る、というのは、クラブの動きに拮抗して、いかにバランスを維持するかが最も大切なんです。クラブの遠心力、慣性のエネルギーに引っぱられてバランスを崩してしまうから、動きが乱れるんです」
それは、すべてのクラブに共通する事象であり、捉えるべき感覚だという。
「だから、まずパターから始めるといいんです。パターの小さな振り幅でもバランス感覚は理解できます」
バランスを維持する、ということは体を極力動かさない、ということではない。
「クラブを動かしたい方向とカウンターになるよう、体の重心を動かしていく。クラブの動きが大きくなるほど、体の重心も大きく動かす意識で、結果的にその場からほとんど動いていないように見える。これを無意識でできるようになることが、上達のカギです」
大本プロの「グラビティメソッド」では、バランスの取り方だけ整えれば、スウィングのクセや個性は直さなくてOK。それでもスウィングの再現性が高まり、スコアアップへとつながっていくのだ。
●CHAPTER 2
【バランスのいいアドレス①】
スウィングの統一をアドレスから始めよう
バランスを維持するスウィングのスタート地点は、バランスのいいアドレス。さらに言えば、バランスよく立てることが大前提となる。
「今や年齢を問わず、日常的にスマホや携帯電話を眺めるの習慣になっている人が大半です。そのために‟ストレートネック”になり、頭が前に倒れるんです。頭は約5㎏の重さがありますが、猫背の姿勢で前に傾くと、頭は約20㎏相当の負荷が首や肩にかかります。この時点で、バランスのいい立ち方は無理です」
バランスのいいアドレスは首と体が一直線
「体の上に首、首の上に頭、というイメージを持ち続けてください」
ゴルフのアドレスは前傾姿勢だが、この頭・首・体の直線的な感覚は必要。
「無意識でできるようになるまで、続けてほしいですね。健康面からも大切です」
バランスのいい立ち方とは、左右に傾かず、両足に均等に体重がかかっていること。前後にも偏らず、土踏まずに体重をかけることなのだ。
●CHAPTER 3
【バランスのいいアドレス②】
バランスよく立たなければバランスよく振ることはできない
左右に体重を均等にかける、といってもアドレスでは右手が左手の下に来るぶん、自然と右肩が下がり、体も右に傾きやすい。右加重になりそうだ。
「厳密には均等でなくてもいいんです。意識の上では常に左右五分五分、というのが一番やさしいんです」
どのようなライでも体の重心(グラビティ)は中心(センター)がニュートラルポジションと意識すると、迷いや乱れは生じにくくなる。
「スウィングできる前傾姿勢においても、体重は土踏まずでニュートラルです。前方にかかりすぎないよう‟お尻を後ろに抜く”ようにするといいでしょう」
体の各部の余計なテンションがかからず、重心がセンターにあるアドレスが取れると、動き出したクラブに対して適切な反応ができるようになる。
●CHAPTER 4
【バランスよく振る】
引きずられたらスウィング崩壊。腕の動きと闘おう!
バランスよくスウィングすることは、そのスウィングに合わせて‟体のバランスを崩す”ことだ。
「クラブの動きに拮抗する、カウンターの動きを入れていくこと。たとえばクラブを左に動かすなら、体は右に動かないといけません」
バックスウィングではクラブや腕の重量が右に動く。それでも重心をセンターに残そうとすれば、他の部位、たとえば背中や頭は左に動かす必要がある。
「歩く場合は、体の重心は前に進むので‟体重移動”は起こりますが、重心を中心に回転するゴルフスウィングでは‟体重移動”は不要です」
重心を移動させない、というイメージこそ「グラビティメソッド」のスタート地点。
「重心を動かさず、クラブを振るには、どうカウンターの動きを入れればいいのか。その基本感覚をつかむには、最もシンプルなパッティングがベストなんです」
フルスウィングになると、左右だけでなく前後、上下にもクラブや腕の重量、慣性エネルギーが重心を引っぱろうとする。
「だから、クラブの動きに‟ついていこう、追っかけよう”ではダメなんです。逆方向を意識するカウンター感覚を身につけてこそ、スウィングは安定するんです」
●CHAPTER 5
【コースでの注意点】
バランスを崩そうとする傾斜に惑わされるな!
練習場ではそこそこ当たるのに、コースへ出るとボロボロ。
「バランス感覚が弱い人ほど、その傾向になります」あらゆるライに対応するには、まず‟当たるアドレス”の基準が必要だ。
「それをスタンス幅やボール位置などで考えていてもダメ。バランスを崩さずに振れる、立ち方の‟感覚”を優先すべきなんです。大切なのは重心を両足のセンターポジションに置いてスウィングする、ということです」
コースの斜面でも、ボール位置まで、数歩手前から歩いてアドレスに入れば、自然とバランスの取れた立ち方になるという。
「スウィングも、ライに応じて重心がブレない、バランスの崩れない範囲が本当のフルスウィングです。それ以上は、乱れて当然の‟振りすぎ”スウィングです」
●CHAPTER 6
【腕をねじる打ち方】
手打ちはダメだが腕打ちはOK!
「ゴルフスウィングは、ゴルフ用に‟バランスを崩して”振るんです。クラブの動きにカウンターを入れてバランスを取る、ということは、カウンターの動きで体側のバランスを崩せば、クラブがそれに対応した位置へ動くということ。バランスのいいアドレスができれば、体幹の大きな筋肉の動きでそれを行える、安定したスウィングができます」
だがそれは、いわゆる‟ボディターン”ではないという。「‟前腕をねじる”意識が大切なんです。腕は左右に振ると、体が反応して大きくブレやすくなりますが、腕を胸の前に置いて左右にねじるだけなら、体は動きません」
腕打ちなら体のバランスが崩れない
「バランスのいいアドレスをマスターしたら、‟腕打ち”を覚えると、バランスのいいカウンター動作が早く身につきます。センスがあって、すぐに上達する人は無意識にできているパターンが多いです」
‟腕打ち”ができているかのチェックは簡単。フォローで手が顔の前に来たとき、自分から見て左手は内側、右手は甲側が見えればOK。
●CHAPTER 7
【上達する考え方】
上手くいくイメージをいくつ持っていますか?
「グラビティメソッド」は、体内感覚に意識を向けることでスウィングを改善していくが、それは‟修正”ではない。
「‟修正”というのは、今のやり方を止めて、新しい方法に置き換えること。
それを進めて頑張った結果、やはりダメだった、では元のものもなくなり、取り返しがつかない。 だから私は、生徒のスウィングは‟修正”しません。新しいやり方を‟加えていく”ようにしています。これなら結果が出なければ止められるし、また再開もできます」
今あるゴルフをゼロにするのではなく、個性や癖を生かしながら上達を目指すのが理想的なのだ。
目標、クラブ、感触、音、スウィング、ボール、バランス。この7つのいずれかのイメージを意識することで右脳が活性化し体がスムーズに動きやすくなる。
ぜひ上手くいくイメージを持って練習してみてほしい。
『レッスンの匠』の「新感覚スウィング理論【グラビティメソッド】」は、チョイス2019年新春号に詳しく掲載されています。