「運動連鎖」も「地面反力」も
100年前からすでに取り入れていた!
2022年に生誕120年を迎える球聖、ボビー・ジョーンズ。
ゴルフと向き合う高潔さや、真摯な姿はたびたび語られてきたが、
そのスウィング理論を十分に理解しているだろうか?
現代のバイオメカ理論から見ても古さを感じない。
ボビー・ジョーンズのスウィング理論を検証してみた。
【Part1】球聖が考えたスウィングの大前提
ジョーンズは、スウィングの理想の姿を‟素振り”に見出していた。ただリズミカルに、リキみもなくスムーズにクラブを振り抜く動き。スウィング軸がブレることもなく、ヘッド軌道が最も安定し、打点も整う。そして、その理想のスウィングで好打を放つ最大のポイントが、アドレスなのだ。
スウィングは円運動であり、インパクトはその通過点。ショットを決定するインパクトは、素振りと同様にリラックスしたアドレスの姿勢とボール位置で決まる、というのがジョーンズの持論だ。
【Part2】球聖のボディターン
スウィングにおいて、体の捻転=ボディターンのイメージは欠かせない。スチールシャフトで促された近代スウィング理論では、ことさら腰と肩の回転量の差を強調し、それがパワーを生む、といった考え方が主流となったが、ジョーンズは違った。
わたしはかねがねその考え方には反対で、長すぎるスウィングよりは短すぎるスウィングのほうがはるかに多くのショットを台なしにするし、しかもそのことはドライバーからパターまですべてのクラブに当てはまると信じている」(著書『ゴルフのすべて』より)
後に続いたジャック・ニクラス、フィル・ミケルソンらが、この正統性を裏付けている。
【Part3】球聖のリズム
最近ではゴルフでもバイオメカニクスが脚光を浴び運動連鎖の重要性が説かれることが多くなってきた。その観点でジョーンズのスウィングを見直すと運動連鎖の達人だったことがわかる。ジョーンズは腰の動きからのスタートをイメージしていた。
ヒールダウンからではなく、腰の巻き戻し――つまりボールに向かっての回転は、クラブがバックスウィングの終点に到達する前からすでに始まっている。続いて、ヒールダウンはダウンスウィングのごく早い時期に、上にあるうちに地面に戻っている。その後、インパクトで腰はアドレスの位置を通りすぎてターンし、この時点で下半身はほぼボールのほうを向いている。つまり、正しいスウィングにおける腰の巻き戻しは想像以上にスピーディに行われるのだ。
【Part4】球聖が残したもの
かつて、1970年代に注目された「スクエアメソッド」は、メカニカルに合理的で、ジョーンズの理論を凌駕したように見えていた時期もあった。だが、体に負荷が大きく故障しやすいメソッドとして淘汰された。肩と腰の捻転差を強調するよりも、運動連鎖を生かすほうが体にやさしく、効率よく出力できることもわかってきた。
故障しにくく、長く続けられることもスウィング理論の重要な一面のはず。その点からも、ジョーンズのスウィング理論は見直す価値があるのだ。
『レッスンの匠 今なお新しい 球聖ボビー・ジョーンズのスウィング理論』は、チョイスNo.237号(2021年秋号)に詳しく掲載されています。